2025年6月28日
「突然キリキリとした胃の痛みが…」そんな経験はありませんか?ストレスや食生活の乱れが原因と思いがちですが、重大な病気が隠れていることもあります。
この記事では、キリキリした胃痛の原因や考えられる病気、自宅での対処法、そして病院を受診すべき症状の見極め方までを医師がわかりやすく解説します。繰り返す胃痛に悩まされている方は、ぜひ最後までお読みください。

キリキリと痛む胃痛
「キリキリ」とした胃の痛みは、多くの方が経験する症状の一つです。この痛みは、刺すような鋭い痛みや、周期的に繰り返す違和感として現れることが多く、日常生活にも支障をきたします。特に空腹時や緊張状態、食後しばらくしてから感じることがあり、その背景にはさまざまな要因が隠れています。
胃の粘膜が刺激されたり、胃酸が過剰に分泌されたりすることで、痛みが起こることがあります。また、ストレスや疲労、暴飲暴食などの生活習慣も悪化要因となりえます。
軽度なものであれば自然に治ることもありますが、痛みが長引く場合や、他の症状(吐き気・下痢・出血など)を伴う場合には、何らかの病気が潜んでいる可能性もあります。まずは原因を知ることが重要です。
キリキリした胃痛の主な原因
キリキリした胃痛の背景には、さまざまな原因が関与していますが、その多くは、胃を守る力(防御因子)と胃を攻撃するもの(攻撃因子)のバランスが崩れていることが背景にあります。
胃の健康は、「攻撃因子」と「防御因子」のバランスによって保たれています。胃を傷つける主な攻撃因子には、食べ物を消化するための強い酸である胃酸(塩酸)や、たんぱく質を分解する消化酵素のペプシンが挙げられます。さらに、ピロリ菌の感染や、ストレスによる自律神経の乱れも胃の粘膜に悪影響を与える要因です。加えて、アルコールやタバコ、唐辛子などの刺激物の摂りすぎ、そして痛み止めなどに使われるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)も、胃にダメージを与える可能性があります。
一方で、胃にはこうした攻撃から自らを守るための防御機能も備わっています。たとえば、胃の内壁には粘液と重炭酸イオンが分泌され、これらがバリアとなって胃酸から粘膜を守ります。また、胃粘膜への血流や、傷ついた上皮細胞を修復する再生力、さらに「前立腺素」と呼ばれるホルモン様物質が粘膜を保護・修復する役割を担っています。
しかし、この攻撃と防御の力関係が崩れてしまうと、胃の粘膜に傷がつきやすくなり、その結果としてキリキリとした痛みや不快感が現れるのです。
キリキリした胃痛の主な原因は以下の通りです。
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食生活の乱れ
脂っこいもの、刺激物(辛いもの、アルコールなど)の摂取は胃を強く刺激し、胃酸分泌を増加させます。また、早食いや食べすぎも胃に負担をかけ、痛みの原因になります。
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ストレスや自律神経の乱れ
交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、胃の働きに影響します。過度なストレスは胃の動き(蠕動)を鈍らせ、血流を悪くし、胃酸分泌を促進します。これにより、胃粘膜の防御が弱まり、痛みが出やすくなります。
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ピロリ菌感染
ピロリ菌は、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。これが胃炎や胃潰瘍の原因となり、空腹時のキリキリした痛みを感じることがあります。
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痛み止め(NSAIDs)の長期使用
頭痛薬などの痛み止めのうち「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」に分類される薬剤は、胃の防御因子を抑え、胃が傷つきやすくなります。
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空腹
暴飲暴食が胃の痛みの原因となる一方で、空腹時にも同様に痛みが生じる場合があります。空腹時は胃の中に食べ物がないため、分泌された胃酸が粘膜を直接刺激しやすくなります。とくに胃の粘膜が弱っている状態では、胃酸の影響を受けやすく、キリキリとした痛みとして感じられます。
これらの原因が重なることで、胃粘膜が傷つき、痛みや不快感を引き起こすのです。慢性化すると症状が悪化するため、早めの対策が重要です。
考えられる主な病気
キリキリとした胃痛が続く場合、以下のような病気が隠れている可能性があります。いずれも適切な治療や生活習慣の見直しが必要です。症状が続く場合は、早めの受診が勧められます。
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急性胃炎・慢性胃炎
胃の粘膜が炎症を起こし、鋭い痛みや吐き気、胸やけを伴います。ストレスや薬の副作用、ピロリ菌感染が原因になることもあります。
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胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸によって粘膜が深く傷ついた状態。空腹時に痛みが強くなることが多く、出血することもあります。
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逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流して炎症を起こす病気。みぞおちの痛みや胸焼けが主症状ですが、胃の痛みとして感じられることもあります。
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機能性ディスペプシア
内視鏡では異常が見られないにもかかわらず、胃痛や膨満感、吐き気を繰り返す病気です。ストレスや自律神経の乱れが関連しています。
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胃がん
初期には症状がないことも多いですが、進行すると胃の不快感や痛み、食欲不振、体重減少などが現れることがあります。慢性的な胃の痛みが続く場合には、早めに医療機関での検査が重要です。
自宅でできる対処法と注意点
キリキリした胃痛が軽度であれば、まずは自宅での対処が可能です。
自宅でできる対処法
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胃にやさしい食事を心がける
脂っこいものや刺激物を避け、消化に良いおかゆやうどんなどを選びましょう。また、早食いや噛まずに飲み込むと胃に負担がかか流ため、よく噛んでゆっくり食べるよう心がけましょう。
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食べすぎ・空腹を避ける
空腹時間が長すぎても胃酸が出すぎて痛みの原因になります。ドカ食いは避けつつ、少量を小分けにして、適度な量の食事を摂ることが大切です。
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安静にする・ストレスをためない
ゆっくりと休息をとり、リラックスできる時間を確保しましょう。
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市販の胃薬を使う
一時的に症状を抑えるために、制酸薬や胃粘膜保護薬が有効です。ただし使用する場合は、用法・用量を守って短期間にとどめましょう。
注意点
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症状が続く場合は自己判断せず、病院を受診すること。
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繰り返し起こる場合や、他の症状(吐血・体重減少など)がある場合は早急な診察が必要です。
一時的に落ち着いても、根本的な原因が解決しなければ再発を繰り返すことがあります。
病院へ行くべき症状の目安
キリキリとした胃痛が続く、あるいは繰り返す場合は、早めの受診が大切です。以下のような症状がある方は特に注意が必要です。
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1週間以上痛みが続いている
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痛みがどんどん強くなっている
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吐き気や嘔吐、食欲不振を伴う
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黒い便(タール便)や吐血がある
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体重が急に減った
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食後すぐに胃痛が起こる、または夜間に痛みで目が覚める
これらの症状は、胃潰瘍や胃がんなどの重大な病気が関与している可能性もあるため、放置せずに医療機関での検査を受けましょう。
何科を受診すればいい?必要な検査について
キリキリした胃痛で病院を受診する場合は、消化器内科を選びましょう。
胃や腸などの消化管の病気を専門とする診療科であり、適切な診断と治療が受けられます。
主に行われる検査
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問診・触診
症状の出るタイミングや生活習慣、食事内容などを確認します。
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血液検査
炎症や感染、貧血などを調べます。急性胃炎や感染性胃腸炎などでは白血球数やCRP(炎症反応)の数値が上昇する場合があります。また胃潰瘍や胃がんなどで出血がある場合、貧血の兆候が見られます。
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胃カメラ(上部消化管内視鏡)
胃の粘膜を直接観察し、炎症・潰瘍・腫瘍などの有無を確認します。
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腹部超音波検査(腹部エコー)
胃以外の臓器(肝臓、胆のう、膵臓など)の異常や、痛みの原因が他にないかを調べます。特に右上腹部~みぞおちの痛みの鑑別に役立ちます。
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ピロリ菌検査
呼気・血液・便などを使い、ピロリ菌の感染の有無を調べます。
必要に応じてCT検査やMRI検査などが追加されることもあります。
まとめ
キリキリとした胃の痛みは、一時的なストレスや食事の影響から起こることもありますが、胃炎や潰瘍などの病気が隠れていることもあります。自己判断で市販薬に頼るだけでは根本的な解決にはつながらず、症状を悪化させることもあります。
特に、症状が長引く、強くなる、他の不調を伴う場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。消化器内科では、必要な検査を行い、原因を特定したうえで適切な治療が受けられます。
胃痛は日常生活の質を大きく下げる症状です。少しでも不安を感じたら、無理をせず専門医の診断を受けましょう。早期の対処が、症状の改善と再発予防につながります。
よくある質問
関係あります。ストレスは胃の働きや胃酸の分泌に影響を与え、キリキリとした痛みを引き起こすことがあります。過敏性胃腸症候群や機能性ディスペプシアといった病気の一因にもなります。
以下のような消化にやさしい食事が胃痛の緩和に役立ちます。香辛料やカフェイン、アルコール、揚げ物などは避けましょう。
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おかゆ、うどん、やわらかい白ごはん
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野菜スープ、煮込み料理(脂肪分の少ないもの)
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豆腐、白身魚、鶏ささみなど脂肪の少ないたんぱく質
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温かい飲み物(白湯や薄めのお茶)
空腹時の胃酸が胃の粘膜を刺激することで、キリキリとした痛みが起こることがあります。十二指腸潰瘍や慢性胃炎、機能性ディスペプシアなどが原因になっていることもあります。
消化中の胃酸や食べ物による刺激、胃の動きの乱れが原因です。過食や早食い、脂っこい食事も悪化させる要因になります。胃炎や胃潰瘍、胆のうや膵臓の病気が関係していることもあります。
1週間以上胃痛が続く場合や、吐き気・嘔吐・体重減少・黒い便・出血がある場合は、速やかに消化器内科を受診してください。