2025年6月29日
胃もたれや吐き気が続くと、食事が楽しめなかったり、仕事や日常生活に支障が出たりと、つらい日々が続きます。単なる食べ過ぎやストレスと思って放置していると、実は胃や消化器の病気が隠れていることも少なくありません。
この記事では、胃もたれと吐き気が同時に起こる原因や、考えられる病気、受診の目安、日常でできる対処法まで、消化器専門の医師が詳しく解説します。

胃もたれと吐き気が気になる方
「胃が重い」「ムカムカして吐き気がする」といった症状は、多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。これらの症状が一時的であれば、それほど問題にはなりませんが、何日も続いたり、繰り返し起こるようであれば注意が必要です。
胃もたれや吐き気は、胃や腸など消化器の不調だけでなく、生活習慣やストレスの影響、あるいは薬の副作用など、さまざまな要因で起こる可能性があります。また、「なんとなく調子が悪い」と感じていても、胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎などの病気が隠れていることもあるため、放置せずに原因を探ることが大切です。
胃もたれと吐き気が同時に起こる主な原因
胃もたれと吐き気が同時に現れる場合、いくつかの原因が考えられます。
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暴飲暴食や脂っこい食事
胃に負担がかかり、消化がうまく進まず胃の不快感や吐き気を引き起こします。
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ストレスや緊張
自律神経のバランスが乱れ、胃腸の働きが鈍くなることで症状が現れます。日常的な生活の中に原因が潜んでいることが多く、繰り返す場合は生活習慣の見直しや医療機関への相談が必要です。
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胃酸の逆流(逆流性食道炎)
胃酸が食道に逆流することで、胸やけや吐き気、胃もたれを感じます。
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感染性胃腸炎
ウイルスや細菌による感染が原因で、急な胃の不調や吐き気、下痢を伴うことがあります。
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薬の副作用
鎮痛薬や抗生物質など一部の薬剤が胃粘膜を刺激し、胃もたれや吐き気を起こすことがあります。
考えられる主な病気
胃もたれや吐き気が継続する場合、以下のような消化器系の病気が隠れていることがあります。
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急性胃炎
胃粘膜が炎症を起こし、胃もたれ・吐き気・腹痛が急に出現します。
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慢性胃炎
ピロリ菌感染などが原因で、胃の働きが低下し胃もたれや不快感が慢性的に続きます。
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胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸によって粘膜が傷つき、食後の痛みや吐き気がみられます。
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逆流性食道炎
胃酸が食道へ逆流し、胸やけや吐き気、咳の症状を伴うこともあります。
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機能性ディスペプシア
器質的な異常がないにもかかわらず、胃もたれ・早期膨満感・吐き気が生じます。
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胆のう疾患(胆石症など)
食後に胃もたれや右上腹部の不快感、吐き気が現れやすくなります。
受診するタイミング
胃もたれや吐き気が一時的で軽度であれば、様子を見ても問題ないことが多いですが、以下のような場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。
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数日〜1週間以上、症状が続いている
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食事をとるのが困難なほどの吐き気や胃の不快感がある
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発熱、腹痛、下痢、体重減少などを伴う
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市販薬で改善しない、または悪化する
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胃の不快感に加えて、黒色便(タール便)や吐血などの出血兆候がある
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過去に胃潰瘍や胃がんの既往がある
特に、消化器の病気には早期の治療が重要なものも多く、放置すると症状が悪化する可能性もあります。症状が気になるときは、自己判断せず、消化器内科を受診しましょう。
自宅でできる対処法とセルフケア
胃もたれや吐き気がつらいとき、自宅でできる対処法や日常生活でのセルフケアが役立ちます。
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安静にする
胃に血流を集中させるため、横になる場合は上半身をやや起こすと吐き気が和らぐことがあります。
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消化のよい食事を少量ずつ摂る
うどん、おかゆ、湯豆腐などを選び、無理に食べず、胃の負担を軽くすることが大切です。
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水分補給をこまめに行う
吐き気が強くても脱水を防ぐため、少量ずつ水や白湯を飲むようにしましょう。
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市販の胃薬を活用する
軽度であれば市販の制酸薬や胃粘膜保護薬が効果的なこともあります。
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ストレスを避ける
緊張や不安が胃腸に影響することもあるため、リラックスする時間を設けましょう。
ただし、これらの対処で症状が改善しない場合は、自己判断をせず早めの受診が重要です。
控えたい食べ物・おすすめの食事
胃もたれや吐き気があるときは、胃への負担を減らす食事が重要です。
控えるべき食品と、おすすめの食事内容を以下にまとめました。
控えたい食べ物
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脂っこいもの(揚げ物、脂身の多い肉など)
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香辛料の強いもの(キムチ、カレーなど)
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アルコールや炭酸飲料
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カフェインを含む飲料(コーヒー、濃いお茶など)
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冷たすぎる、または熱すぎる食べ物
これらは胃酸の分泌を促したり、胃粘膜を刺激したりするため、症状を悪化させる可能性があります。
おすすめの食事
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おかゆ、うどん、そうめんなどの消化に良い主食
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野菜スープ、湯豆腐、白身魚の煮付けなどの低脂肪・低刺激の料理
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よく煮込んだ野菜(大根、にんじんなど)
また、一度にたくさん食べず、少量ずつゆっくり食べることも大切です。空腹でも満腹でも胃に負担がかかるため、適度な量を心がけましょう。
ストレスや生活習慣との関係と予防法
胃もたれや吐き気は、食事内容だけでなく、ストレスや生活習慣とも深く関係しています。自律神経の乱れや不規則な生活は、胃腸の働きを低下させ、症状の原因となることがあります。
ストレス・生活習慣との関係
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緊張や不安により、胃酸の分泌が過剰になり胃が荒れる
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睡眠不足が続くことで、胃腸の回復力が低下する
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朝食を抜いたり、夜遅くに食事をとるなどの不規則な食生活
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運動不足により胃腸の動きが鈍くなる
予防のポイント
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十分な睡眠をとる(6〜8時間を目安)
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1日3食をなるべく決まった時間に摂る
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軽い運動を日常に取り入れる(散歩やストレッチなど)
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ストレスをため込まない工夫をする(趣味やリラクゼーション)
これらを意識することで、胃の不調の予防だけでなく、体全体の健康維持にもつながります。日々の小さな習慣の積み重ねが症状の改善につながります。
まとめ
胃もたれと吐き気が同時に現れる症状には、日常的な原因から病気までさまざまな要素が関与しています。暴飲暴食やストレスなどの一時的な負担であればセルフケアで改善することもありますが、長引く場合は病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
受診のタイミングを見極め、適切な診断と治療を受けることが、症状の悪化を防ぐ第一歩となります。また、日頃から胃にやさしい食事や規則正しい生活、ストレスをためない工夫を心がけることも大切です。
少しでも不安を感じたら、早めに消化器内科を受診しましょう。
よくある質問
脂っこい食事や早食い、ストレス、胃酸の分泌異常、胃の運動機能の低下などが主な原因です。暴飲暴食や加齢、胃の病気(胃炎・胃潰瘍など)も関係します。
上半身を少し起こした「斜め45度くらいのリクライニング姿勢」が楽になることがあります。仰向けやうつ伏せはかえって不快になることがあります。
胃に溜まった食べ物や胃酸を吐き出すことで、胃の圧迫感や不快感が軽減されるためです。ただし、吐くことは体に負担がかかるため、繰り返す場合は診察を受けましょう。
以下の方法が効果的です。症状が続く場合は消化器内科を受診しましょう。
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脂っこい食事や刺激物を控える
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よく噛んでゆっくり食べる
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食後すぐに横にならない
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胃薬(市販の制酸薬や消化薬)を使用する
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ストレスをためない生活を心がける
静かな場所で横になり、できれば上半身を少し高くして休みましょう。水分を少しずつ摂るのも効果的です。強いにおいを避け、深呼吸をして落ち着くことも有効です。