2025年8月26日
「お腹が張って痛い…」そんな症状に悩まされた経験はありませんか?ガスが溜まっているような違和感、ズキズキとした腹部の痛み、時には吐き気や便秘を伴うこともあります。こうした症状には、生活習慣や食事の乱れによる一時的な原因から、重大な病気のサインまでさまざまな可能性が隠れています。
この記事では、原因と対処法、受診の目安まで、医師の視点からわかりやすく解説します。

お腹が張って痛い…どんな症状?
お腹が張ると感じる状態は、医学的には「腹部膨満感」と呼ばれます。
これは腸の中にガスや内容物がたまったり、消化管の動きが乱れたりすることで生じる症状です。多くの場合、以下のような感覚を伴います。
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お腹がポッコリと膨らんで見える
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腹部に違和感や圧迫感がある
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腸がグルグルと鳴る
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痛みがある(鈍痛や差し込むような痛みなど)
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ゲップやおならが増える
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食欲が落ちる
こうした症状は、軽度な胃腸の不調から、腸閉塞や消化器の炎症といった重い病気の前兆であることもあります。痛みの程度や持続時間、他の症状(発熱、吐き気、便通異常など)によって、原因が異なるため、注意が必要です。
お腹が張って痛いときに考えられる主な原因
お腹の張りと痛みは、原因によって軽いものから重篤な疾患まで幅広く存在します。
原因は、生活習慣で改善するものもあれば、早期の治療が必要なものもあります。自己判断せず、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
一時的な原因
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食べすぎ・飲みすぎ
胃腸に負担がかかり、ガスが溜まりやすくなります。
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早食いや空気の飲み込み
無意識に空気を多く飲み込むことでお腹が張ることがあります。
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便秘
腸内に便やガスがたまることで腹部膨満感が生じます。
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姿勢の悪さ
骨盤が後傾し内臓が落ち込むことでぽっこりお腹の原因になります。
消化器の機能性疾患
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ストレスや自律神経の乱れによって、腸が過敏になり張りや痛みが起きます。
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胃の働きの異常で症状があるにもかかわらず、画像検査では異常が見つからない状態です。
その他
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胃腸炎
ウイルスや細菌による感染で腹痛や膨満感を伴うことがあります。
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腸閉塞
重篤なケースではガスや便が通らなくなり、強い張りと痛みが現れます。
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腹水貯留
がんや肝硬変などに伴い腹水が溜まるとお腹の張りとして症状を自覚する場合があります。
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婦人科疾患
女性では子宮や卵巣の病気が腹部に症状を及ぼすこともあります。
放置してはいけない病気の可能性
お腹の張りと痛みが続いたり、急激に悪化したりする場合、以下のような放置すべきでない病気が隠れている可能性があります。
特に「激しい痛み」「繰り返す痛み」「発熱・吐き気・血便を伴う」などの症状があれば、速やかに医療機関を受診してください。
注意が必要な病気の一例
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腸閉塞(イレウス)
腸が詰まり、内容物やガスが通らなくなる状態。激しい腹痛や吐き気、便やガスが出ない症状が特徴です。放置すると命に関わるため、すぐに受診が必要です。
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虫垂炎(盲腸)
右下腹部の痛みで始まり、徐々に悪化。吐き気や発熱を伴うことが多く、早期の手術が必要になることもあります。
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腸管虚血(腸に血液が行き渡らない)
血流障害により腸の一部が壊死してしまうことがあります。強い痛みがありながら、お腹が硬くならないのが特徴の一つです。
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婦人科系疾患
女性の場合は、下腹部の痛みや張りが婦人科疾患によることもあります。急激な痛みや出血を伴う場合は緊急性が高いです。
自宅でできる対処法
軽度のお腹の張りや痛みであれば、自宅でできるセルフケアで改善が期待できる場合があります。
症状が軽い場合は、これらの方法で改善することが多いですが、数日たっても良くならない場合や、症状が悪化するようであれば、医療機関を受診するようにしましょう。
食事の見直し
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消化のよいものを選ぶ
おかゆやスープなど、胃腸に優しい食事を心がけましょう。
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食物繊維を適量摂取
便秘が原因の場合、水溶性食物繊維(海藻類・果物など)を摂ると腸内環境の改善につながります。不溶性食物繊維の過剰な摂取は、かえってお腹の張りの原因となる場合があります。
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ガスが発生しやすい食品を控える
発酵食品、豆類、炭酸飲料、揚げ物、甘いお菓子などは一時的に避けましょう。
お腹を温める
白湯や生姜湯などでお腹を内側から温めたり、湯たんぽや腹巻などでお腹を外側から温めることで、腸の動きが促進され、痛みや張りの緩和に役立ちます。
軽い運動やストレッチ
ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、腸のぜん動運動を活発にし、ガスや便の排出を促します。
リラックスして過ごす
ストレスは腸の働きを低下させ、お腹が張る原因となります。深呼吸や入浴でリラックスしましょう。
お腹の張りは何科を受診すればいい?
お腹の張りや痛みで受診を考える際、「何科に行けばいいのか」と迷う方も多いでしょう。
基本的には、消化器内科が適切です。とくに、症状が繰り返す・悪化する・他の異常を伴う場合には、専門的な検査が必要になります。
以下のような症状があれば、早めに受診をおすすめします。
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数日以上、症状が改善しない
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繰り返し症状が起こる
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強い腹痛、発熱、吐き気、血便を伴う
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高齢者や基礎疾患のある方の体調変化
症状によっては婦人科や泌尿器科への紹介も検討されることがあります。当院では、必要に応じて専門の医療機関とも連携していますので、まずはお気軽にご相談ください。
お腹の張り・痛みを予防する生活習慣とは
お腹の張りや痛みは、日常生活のちょっとした心がけで予防できることがあります。
以下のような生活習慣を意識してみましょう。
規則正しい食生活を心がける
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ゆっくりよく噛んで食べる
空気の飲み込みを防ぎ、胃腸への負担を軽減します。
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過食・暴飲暴食を避ける
消化不良やガスの発生を防ぐために、腹八分目を意識しましょう。
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繊維バランスのよい食事
水溶性・不溶性の両方の食物繊維をバランスよく摂取すると、便通が整いやすくなります。
適度な運動を継続する
ウォーキングやストレッチなど、無理のない運動を日常に取り入れることで、腸の働きが活発になります。
ストレスを溜め込まない
ストレスは腸の動きを悪くし、過敏性腸症候群の悪化にもつながります。リラックスできる時間を意識的に設けましょう。
睡眠をしっかり取る
睡眠不足は自律神経の乱れを招き、胃腸にも悪影響を及ぼします。毎日6〜7時間以上の睡眠を目指しましょう。
まとめ
お腹が張る、痛いといった症状は、一時的な体調不良から重大な病気のサインまで、さまざまな原因が隠れています。特に、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
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食事・生活習慣の乱れが原因のことも多い
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繰り返す・長引く症状は病気の可能性もある
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発熱・嘔吐・血便などを伴う場合はすぐに受診を
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早期発見・治療のためには、自己判断せず専門医に相談を
日常生活でのちょっとした心がけが、再発予防や体調管理につながります。
当院では、消化器症状に関する診察・検査を丁寧に行っておりますので、「もしかして…」と思ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
激しい痛み、発熱、嘔吐、血便がある場合は、早急な受診が必要です。一方で、軽い張りが数日続く程度であれば、食事や生活習慣の見直しから始めてもよいでしょう。ただし、改善しない場合は消化器内科の受診をおすすめします。
はい。便秘が続くと腸内にガスや便がたまり、腹部が膨らむような不快感や痛みを伴うことがあります。適度な運動や食物繊維の摂取を心がけましょう。
一時的なガスや便秘による症状であれば、市販の整腸薬や便秘薬で緩和されることもあります。ただし、自己判断での長期使用は避け、改善しない場合は医師の診察を受けましょう。