胃もたれと胸やけの違いについて解説

胃もたれと胸やけの違いについて解説

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2025年9月20日

胃の不快感としてよく耳にする「胃もたれ」と「胸やけ」。似たように思われがちですが、実は原因や症状の現れ方に違いがあります。胃もたれは食後に胃が重く消化が進まないような感覚で、胸やけは胃酸が逆流して胸のあたりが焼けるように感じる症状です。それぞれの特徴を知ることで、自分の体調の変化に気づきやすくなり、必要な対処や受診につなげることができます。
本記事では、胃もたれと胸やけの違いや見分け方、放置するとどうなるのか、受診の目安について詳しく解説します。

胃もたれと胸やけの違いについて解説

胃もたれと胸やけの違い

胃もたれと胸やけは似た症状と誤解されやすいですが、実際には原因や症状、対処方法に違いがあります。

胃もたれ

  • 主に食後に起こりやすい

  • 胃が重い、消化されない感じ、膨満感が特徴

  • 消化不良や胃の働きの低下が関与

胸やけ

  • 食後や就寝時に起こりやすい

  • 胸の奥が焼けるようなヒリヒリ感、酸っぱい液が上がる感じ

  • 胃酸が食道に逆流することが原因

胃もたれの原因

胃もたれは、食べたものがスムーズに消化されず、胃の中に長時間とどまることで起こります。主な原因は以下の通りです。

食べ過ぎ、飲み過ぎ

たくさん食べたり飲んだりすると胃が消化しきれず重く感じます。
脂っこいものや揚げ物、お肉、天ぷらなどは消化に時間がかかり、胃に負担になります。お酒の飲みすぎも胃粘膜を刺激し胃もたれの原因になります。食事量の調節と、就寝前の食事を控えることが大切です。

自律神経の乱れ

ストレスや疲労、不規則な生活は自律神経に影響し、胃の動きが鈍くなります。
消化が遅れることで食べ物が胃にたまり胃もたれになります。

運動不足や加齢

運動不足は胃の動きを弱め、胃に食べ物がたまりやすくなる原因になります。また加齢により胃の機能そのものも衰え、胃もたれが起きやすくなります。適度な運動が胃の働きを助けます。

背景疾患

胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの病気が背景にある場合もあります。
一時的な胃もたれは食事内容や休養で改善することが多いですが、繰り返し起こる場合は消化器系の病気が隠れている可能性もあります。特に長引く症状がある場合は、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。

胸やけの原因

胸やけは、胃酸が食道に逆流して食道粘膜を刺激することで生じます。胸の奥がヒリヒリしたり、焼けるような感覚を伴うのが特徴です。主な原因には以下のようなものがあります。

食生活の影響

脂っこい食事、刺激物(香辛料・コーヒー・炭酸飲料など)、アルコールの摂取は胃酸分泌を増やし、逆流を起こしやすくします。

胃の圧迫

肥満や妊娠・便秘によりお腹に圧力がかかり、胃が押されて胃酸が逆流しやすくなります。
お腹を締め付ける服を避けましょう。

喫煙

たばこは下部食道括約筋を緩めて胃酸の逆流を助長します。

ストレス

ストレスは胃の働きを弱めて胃酸の分泌バランスを乱し、胸やけを誘発することがあります。

背景疾患

胸焼けの背景にある疾患として最も一般的なのが逆流性食道炎で、胃酸が繰り返し逆流して炎症を起こします。
食道裂孔ヘルニアと呼ばれるい食道接合部の弛緩が原因となっている場合もあります。繰り返し起こすことでバレット食道化すると、食道癌のリスクとなります。
また、胸焼け症状の背景にすでに食道がんが存在する場合もあり、特に長引く症状がある場合は、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。

胃もたれと胸やけの症状の違い

胃もたれ胸やけ
・胃が重く苦しい
・胃の中に食べ物が残っている感じがする
・食後すぐに満腹感や膨張感が続く
・胃の中がムカムカ、もやもやする
・みぞおちや胸が焼けるような痛み
・口に酸っぱい液が上がる
・横になると症状が強くなりやすい
・頻繁にげっぷが出る
・喉の違和感や慢性的な咳も伴うことがある

放置すると危険?考えられる病気とリスク

胃もたれや胸やけは軽い症状でも、長期間続いたり悪化した際は重大な病気のサインとなることがあります。気になる症状があれば放置せず、早めに専門医を受診して検査と治療を受けることが大切です。

胃もたれが続く場合に考えられる病気

  • 慢性胃炎

  • 胃潰瘍

  • 胃がん

  • 胃の運動機能障害(機能性ディスペプシアなど)

胸やけが続く場合に考えられる病気

  • 逆流性食道炎

  • 食道潰瘍

  • バレット食道(食道がんのリスク因子)

  • 食道がん

これらの病気は、早期に発見できれば比較的軽い治療で済むこともありますが、進行すると手術や長期治療が必要になるケースもあります。
単なる不快感と考えて放置せず、症状が繰り返し起こる場合は消化器内科での検査を受けることが大切です。

受診するべきタイミング

胃もたれや胸やけは、一時的な体調や食生活によることもありますが、以下のような場合には早めの受診をおすすめします。

  • 症状が週に2回以上続く

  • 数週間経っても改善せず慢性化している

  • 吐き気・嘔吐、体重減少、血を吐く、便に血が混じるなどの症状を伴う

  • 市販薬を使っても改善しない

  • 高齢の方や、胃がん・食道がんの家族歴がある方

受診の目安としては「症状が繰り返す・長引く・重くなる」のいずれかに当てはまるときです。胃カメラ検査を行えば、胃や食道の状態を直接確認でき、胃炎・潰瘍・逆流性食道炎・がんなどの病気を早期に発見できます。自己判断で放置せず、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。

まとめ

胃もたれと胸やけは似たような不快感をもたらしますが、その原因や感じ方には明確な違いがあります。胃もたれは「胃の働きが弱まり、食べ物が停滞すること」で起こりやすく、胸やけは「胃酸が食道に逆流して刺激すること」で起こります。

一時的な症状であれば食事や生活習慣の見直しで改善することもありますが、繰り返し起こる場合や長く続く場合は病気が隠れている可能性もあります。放置せず、早めに消化器内科で検査を受けることが安心につながります。症状が続く場合は早めに受診しましょう。

よくある質問

胃もたれと胸やけを同時に感じることはありますか?

あります。消化不良と胃酸の逆流が同時に起きると、胃もたれと胸やけを併発することがあります。

 市販薬で改善できますか?

胃薬や制酸薬で一時的に改善することはありますが、繰り返す場合は医療機関での検査が必要です。

 胃もたれや胸やけを予防する食事の工夫はありますか?

脂っこい食事や刺激物、アルコールを控え、腹八分目を意識することが大切です。

胸やけは夜間から明け方に悪化しやすいのはなぜですか?

横になると胃酸が食道へ逆流しやすいためです。就寝前の食事を控えるや、夕食後2〜3時間はすぐに横にならないように気を付けることが予防になります。

受診時はどんな検査をしますか?

胃カメラが中心で、胃や食道の粘膜を直接観察して原因を調べます。

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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