2025年11月19日
胃カメラ検査で「胃にポリープがあります」と指摘された際、「がんなのか」「すぐに手術が必要なのか」といった心配をされる方も多いのではないでしょうか。
胃のポリープのほとんどは良性です。必ずしもすべてのポリープを切除する必要はありません。ポリープには種類があり、それぞれ性質が異なります。適切な診断を受けた上で、切除が必要か経過観察でよいかを判断することが大切です。
この記事では、胃のポリープの種類や切除が必要なケース、放置した場合のリスク、そして治療方法について詳しく解説します。

胃ポリープの3つの種類

胃ポリープにはいくつかの種類があり、それぞれ性質や治療方針が異なります。
ここでは、代表的な3つのタイプについて解説します。
1.胃底腺(いていせん)ポリープ
胃底腺ポリープは最も多く見られるタイプです。
がんになることは極めて稀で、基本的には経過観察で問題ありません。
胃底腺ポリープの特徴
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胃の上部(体部〜穹隆部)にできる
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大きさは数mm〜10mm以下の小さいものが多い
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複数個できることが多い
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ピロリ菌に感染していない健康な胃に多い
※PPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期内服で胃底腺ポリープ様のポリープが増えることがあります。厳密には胃底腺ポリープとは異なる病変で、薬剤の中止で消退する事があります。
※FAP(家族性大腸腺腫症)に伴う胃底腺ポリープは、専門的管理が必要です。
2.過形成性ポリープ
過形成性ポリープは、慢性炎症に伴うポリープで、多くは良性です。
10mm以上で約2%に発がんが報告されており、反復出血を繰り返す病変やの貧血の原因となる病変などは切除も検討されます。
ピロリ菌の除菌により約8割で縮小・消失が見られます。
過形成性ポリープの特徴
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ピロリ菌感染との関連が強い
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大きさは数ミリから数センチまで様々
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出血しやすい場合がある
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ピロリ菌を除菌すると小さくなることもある。
3.腫性(せんしゅせい)ポリープ(胃腺腫)
腺腫性ポリープは前がん病変に位置づけられ、最も注意が必要なタイプです。
見つかった場合は基本的に内視鏡での切除をお勧めしています。
腫性ポリープの特徴
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がんになる前の段階(前がん病変)
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高齢者や萎縮性胃炎のある方に多い
胃ポリープの切除が必要なケース
胃ポリープは、すべてを切除する必要はありませんが、以下のような場合は切除を検討する必要があります。
1.腺腫性ポリープ(胃腺腫)が見つかった場合
腺腫性ポリープは、がんになる前の段階と考えられています。
放置すると将来的にがんになる可能性があるため、見つかった時点で切除をお勧めしています(※病変の大きさや形態、生検結果に基づいた異型度、患者背景などにより経過観察となる場合もあります)。
2.大きな過形成性ポリープ
過形成性ポリープは多くが良性ですが、10mm以上で発がん報告があり、特に2センチ以上の大きなものは注意が必要です。
3.組織検査で異型・がんが疑われる場合
内視鏡検査で組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べることがあります。
この検査で異型細胞(いけいさいぼう)やがん細胞が見つかった場合は、切除が必要です。
4.症状がある場合
下記のような場合は、ポリープの種類に関わらず治療が必要になることがあります。
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繰り返す出血
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貧血
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胃の痛みや不快感
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胃の入り口(噴門部)や出口(幽門部)に存在するポリープによる有症状例
胃ポリープを放置した場合のリスク
切除が必要なポリープを放置すると、様々なリスクが生じる可能性があります。
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腺腫性ポリープを放置した場合の主なリスク
・胃がんへの進行
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大きな過形成性ポリープを放置した場合の主なリスク
・稀にがんになる可能性
・繰り返す出血による貧血
・胃の入り口や出口を塞ぐことによる症状
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定期検査を受けないリスク
すぐには治療の必要がないポリープでも、定期検査を受けないと変化を見逃してしまいます。
小さかったポリープが大きくなっていたり、新たなポリープができていたりする可能性があります。
症状が出てから受診すると、すでに進行していることもあるため、定期的な検査が大切です。
切除が必要な場合の治療方法
胃のポリープの切除は、基本的に内視鏡を使った治療で行います。
お腹を切る手術は必要なく、多くは短期入院で治療が可能です。
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
内視鏡を口から挿入し、ポリープの根元にスネア(輪状の器具)をかけ、電気を流してポリープを切除します。
茎のある隆起病変に適しています。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
少し大きめのポリープや、平らな形のポリープに対して行う方法です。
ポリープの下に生理食塩水や粘膜下注入材(ヒアルロン酸ナトリウム溶液)などを注射して盛り上げてからスネアをかけ、電気を流してポリープを切除します。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
より大きな病変や、確実な一括切除が望まれる病変に適応となります。
EMR同様にポリープの下に生理食塩水や粘膜下注入材(ヒアルロン酸ナトリウム溶液)などを注射して盛り上げてから内視鏡の先端から出す小型の電気メスで病変を切除します。
経過観察の場合の注意点
すぐに切除が不要なポリープでも、定期的な検査と生活習慣の管理が大切です。
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定期的な内視鏡検査を受ける
ポリープの大きさや数の変化をチェックするため、定期的な胃カメラ検査が必要です。
検査の頻度は、ポリープの種類や大きさによって異なります。
医師の指示に従って、定期的に検査を受けましょう。
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ピロリ菌の検査と除菌
過形成性ポリープがある場合は、ピロリ菌の検査をお勧めします。
ピロリ菌が陽性であれば、除菌治療を行うことでポリープが小さくなったり消えたりすることがあります。
除菌治療は胃がん予防にもつながるため、積極的に検討しましょう。
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生活習慣の見直し
胃の健康を保つため、日常生活にも気をつけましょう。
・規則正しい食事
・暴飲暴食を避ける
・禁煙する
・ストレスをためない
これらを心がけることで、胃の粘膜を健康に保つことができます。
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症状が出たらすぐに受診
経過観察中でも、以下の症状が出た場合はすぐに受診してください。
・黒い便が出る
・吐血する
・強い胃の痛み
・急な体重減少
まとめ
胃のポリープが見つかっても、すべてを切除する必要はありません。
胃底腺ポリープはがん化は極めて稀で、多くは経過観察で問題ありません。
過形成性ポリープはまずピロリ菌の検査・除菌を優先しましょう。
大きな病変や有症状例では切除をした方が良い場合もあります。
腺腫性ポリープは前がん病変のため、基本的に切除をお勧めしています。
切除が必要な場合でも、内視鏡治療(短期入院)で対応できます。経過観察の場合は定期的な内視鏡検査が大切です。
よくある質問
当院では、鎮静剤を使用して患者さんの苦痛を和らげながら検査を行っています。
鎮静剤により眠っているような状態で検査を受けられるため、苦痛の少ない内視鏡検査が可能です。
検査について不安がある方は、お気軽にご相談ください。
切除後の再発は基本的にありませんが、切除後も新たなポリープができる可能性があるため、定期的な検査が大切です。
特にピロリ菌感染がある場合は、除菌治療をお勧めします。
多くの場合、〜1週間程度で普通の生活に戻ることができます。
術後1週間以内は後出血のリスクがありますので、激しい運動や飲酒は控える必要があります。
医師の指示に従って、徐々に日常生活を再開しましょう。
確実な予防法はありませんが、以下のことが大切です。
ピロリ菌感染がある場合は、除菌治療を受けること、規則正しい食生活を心がけること、禁煙することなどが胃の健康維持につながります。
定期的な胃カメラ検査で早期発見することも重要です。



