萎縮性胃炎は心配ない?

萎縮性胃炎は心配ない?

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2025年2月06日

胃の粘膜が薄くなり、胃酸の分泌が減る「萎縮性胃炎」。自覚症状がないことも多いですが、放置すると胃がんのリスクが高まります。
この記事では、萎縮性胃炎がどんな病気なのか、原因や治療法について、わかりやすく解説していきます。

萎縮性胃炎は心配ない?

萎縮性胃炎ってどんな病気?

萎縮性胃炎とは、胃の粘膜が慢性的に炎症を起こし、胃酸を分泌する組織が減少し、胃の粘膜が薄くなってしまう病気です。まるで、胃の粘膜が使い込まれたスポンジのように、弾力性を失い、薄くなってしまうイメージです。

萎縮性胃炎になると、どのような症状が起こるか

消化機能の低下

胃酸が減ることで、食べ物を十分に消化できなくなり、消化不良や胃もたれが起こりやすくなります。

貧血

ビタミンB12の吸収が悪くなり、貧血になることがあります。

胃がんのリスク増加

萎縮性胃炎が長引くと、胃がんのリスクが高まることが知られています。

萎縮性胃炎の原因は様々で、ピロリ菌感染や自己免疫疾患などが挙げられます。また、これらの疾患が背景にあると、加齢とともに進行し、胃の粘膜は徐々に萎縮していく傾向にあります。
萎縮性胃炎は、自覚症状がないことも多く、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。しかし、放置しておくと、胃がんに繋がる可能性もあるため、早期発見・早期治療が大切です。

萎縮性胃炎の原因は?

萎縮性胃炎の原因は、一つとは限りません。主な原因として考えられるのは以下の通りです。

ピロリ菌感染

胃にピロリ菌が感染することで、慢性的な炎症が起こり、徐々に胃の粘膜が萎縮していくケースが最も多いです。

自己免疫性疾患

自己免疫疾患の一種である自己免疫性胃炎が原因となる場合もあります。これは、自分の体が自分の胃の粘膜を攻撃してしまう病気です。

加齢

加齢のみでは胃の萎縮は起きませんが、ピロリ菌感染や自己免疫性疾患が背景にあると、加齢に伴い、胃の機能は低下し、萎縮性胃炎が進行します。

薬の副作用

長期間にわたって酸分泌抑制薬など特定の薬を服用することで、胃の粘膜が傷つき、萎縮性胃炎になることがあります。

これらの要因が単独で、または複合的に作用することで、萎縮性胃炎が発症すると考えられています。

萎縮性胃炎の初期症症状は?

萎縮性胃炎は、初期の段階では自覚症状がないことが多く、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。しかし、症状が出た場合は、以下のような症状が現れることがあります。

上腹部痛

みぞおちあたりが痛む、あるいは不快感を感じる

食欲不振

食欲が減退し、食べ物が喉を通りにくい

吐き気

食後などに吐き気を感じる

嘔吐

 吐くことがある

胸やけ

胸が焼けるような感じ

げっぷ

頻繁にげっぷが出る

便秘や下痢

便秘や下痢を繰り返す

貧血

ビタミンB12の吸収が悪くなり、貧血になる

これらの症状は、他の病気でもみられるため、萎縮性胃炎と断定するためには、医師による診察と検査が必要です。

萎縮性胃炎の検査方法は?

萎縮性胃炎を診断する上で最も確実な方法は、胃カメラ検査(胃内視鏡検査)です。胃カメラ検査では、細い管状の内視鏡を口から挿入し、胃の中を直接観察することで、胃の粘膜の炎症や萎縮の程度を詳しく調べることができます。

胃カメラ検査で確認できること

胃粘膜の萎縮

胃の粘膜が薄くなっているか、あるいは萎縮しているかを確認できます。

炎症の程度

胃の粘膜に炎症があるかどうか、その程度を確認できます。

ピロリ菌感染

胃がんの原因となることが多いピロリ菌の感染の有無を確認できます。

早期がんの発見

胃がんの早期発見にもつながります。

その他に行われる検査

血液検査

貧血や炎症の有無、ピロリ菌に対する抗体の有無を調べます。

尿素呼気試験

ピロリ菌感染の有無を調べます。

これらの検査結果を総合的に判断することで、萎縮性胃炎の診断が確定されます。

萎縮性胃炎の治療法は?

萎縮性胃炎の治療法は、その原因や症状によって異なります。主な治療法としては、以下のものが挙げられます。

ピロリ菌除菌療法

萎縮性胃炎の原因がピロリ菌感染である場合は、ピロリ菌を除菌することで、胃炎の進行を抑え、胃がんのリスクを減らすことができます。

薬物療法

胃酸の分泌を抑える薬、胃粘膜を保護する薬、胃の運動機能を改善する薬など、症状に合わせて薬を処方します。

食事療法

消化の良いものを食べ、刺激物を避け、規則正しい食事を心がけます。

定期的な検査

胃カメラ検査を定期的に行い、病状の変化を経過観察します。

萎縮性胃炎と胃がんの関係は?

萎縮性胃炎は、胃がんと深く関連しています。胃の粘膜が慢性的に炎症を起こし、萎縮すると、胃がんのリスクが高まります。これは、萎縮した胃の粘膜が、がん細胞に変化しやすくなるためです。特に、萎縮性胃炎が長引いたり、腸上皮化生と呼ばれる状態になると、胃がんのリスクはさらに高まります。そのため、萎縮性胃炎と診断された場合は、定期的な胃カメラ検査を行い、胃がんの早期発見に努めることが大切です。

萎縮性胃炎の予防法は?

萎縮性胃炎は、完全に予防することは難しいですが、以下の点に注意することで、発症リスクを下げることができます。

ピロリ菌感染の予防

ピロリ菌は、主に人から人への感染によって胃に定着します。不衛生な水や食品を介して感染することもあります。手をよく洗い、生ものをよく加熱するなど、衛生的な生活習慣を心がけることが大切です。

バランスの取れた食事

ビタミンやミネラルが豊富なバランスの取れた食事を心がけ、胃に負担をかけないよう、規則正しい食生活を送ることが大切です。

ストレスの軽減

ストレスは、胃の働きを低下させ、萎縮性胃炎を悪化させる可能性があります。ストレスを溜め込まず、適度な運動やリラックスできる時間を作りましょう。

定期的な健康診断

胃がんは早期発見が大切です。定期的な胃カメラ検査を受けることで、萎縮性胃炎の悪化や胃がんの早期発見につながります。

萎縮性胃炎でも心配ない?

萎縮性胃炎と診断されて不安に思われる方も多いかもしれません。萎縮性胃炎は、適切な治療と生活習慣の改善によって、症状を改善し、合併症を予防することができます。
萎縮性胃炎と診断された場合、まずは医師の指示に従い、治療を受けることが大切です。ピロリ菌感染が原因の場合は、除菌治療を行います。また、症状に合わせて、薬物療法や食事療法なども行われます。
定期的な胃カメラ検査を受けることで、病状の変化を早期に発見し、適切な治療を行うことができます。さらに、バランスの取れた食事を心がけ、ストレスを溜め込まず、規則正しい生活を送ることも大切です。

まとめ

萎縮性胃炎とは、胃の粘膜が薄くなり、胃酸の分泌量が減少する病気です。主な原因はピロリ菌感染ですが、自己免疫疾患や薬剤性も考えられます。自覚症状がないことも多く、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。
萎縮性胃炎が進行すると、胃がんのリスクが高まるため、定期的な胃カメラ検査が重要です。治療法としては、ピロリ菌感染が原因の場合は除菌治療、症状に合わせて薬物療法や食事療法などが行われます。
萎縮性胃炎と診断された場合は、医師の指示に従い、治療を続けることが大切です。バランスの取れた食事を心がけ、ストレスを溜め込まず、規則正しい生活を送ることも重要です。

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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