2025年5月01日
熱い食べ物や飲み物を飲んだあとに喉や胸に痛みを感じたことはありませんか?それは「食道やけど」のサインかもしれません。軽度なものは自然に治ることもありますが、重症化すると食道に潰瘍や狭窄が残ることもあります。
本記事では、食道やけどの原因や症状、応急処置、病院を受診すべきタイミング、子どもの対応まで、消化器内視鏡専門医がわかりやすく解説します。

食道やけどとは?
食道やけどとは、食道の粘膜が熱や化学物質などによって損傷を受ける状態を指します。
食道は口から胃へとつながる消化管の一部であり、本来は食べ物や飲み物を安全に運ぶために滑らかで柔らかな構造をしています。しかし、熱すぎる飲食物や、誤って飲み込んだ洗剤・薬剤などにより、食道の粘膜が炎症を起こし、やけどのような状態になることがあります。
軽度のやけどであれば数日で回復することもありますが、損傷が深い場合は痛みが強く、潰瘍や狭窄(きょうさく)といった後遺症を引き起こすこともあるため注意が必要です。特に子どもやご高齢の方は、重症化しやすいため、早めの対応が重要です。
食道やけどの主な症状とチェックポイント
食道やけどが起こると、まず現れるのが「胸の痛み」や「喉の違和感」です。特に飲食時にしみるような痛みや、つかえる感じが特徴的です。
熱い飲み物や薬剤を飲んだ後に、強い痛みや違和感が続く場合は注意が必要です。また、重度になると食道に炎症が広がり、嘔吐や血の混じった痰(たん)、発熱などの症状が現れることもあります。さらに、食事が飲み込みづらくなったり、飲み込むたびに痛みを感じるようになったりする場合は、早急な医療機関の受診が推奨されます。
以下のような症状が見られる場合は、食道やけどを疑いましょう。
- 飲食時の胸や喉の痛み
- 食べ物がつかえる感じ
- 嚥下(えんげ)時の違和感や痛み
- 吐き気・嘔吐・発熱
- 血の混じった痰や吐血
こうした症状がある場合は自己判断せず、消化器の専門医にご相談ください。
熱湯・熱い飲食物による食道やけど
最も一般的な食道やけどの原因のひとつが、熱すぎる飲み物や食べ物の摂取です。
例えば、沸騰したての熱湯や、加熱直後のスープ・お茶・鍋料理などを急いで飲み込んでしまった際に、食道の粘膜が高温にさらされてダメージを受けます。
食道の内側は非常に繊細で、70℃以上の液体が通過するだけでも炎症やびらんを起こす可能性があります。やけどの程度は温度と接触時間により異なり、軽い違和感で済むこともあれば、強い痛みや潰瘍を伴うこともあります。
特に子どもやご高齢の方は温度感覚が鈍く、無意識のうちに高温の飲食物を摂取しやすいため、注意が必要です。また、食道にやけどを起こすと、嚥下時の痛みや飲み込みづらさが続くことがあるため、放置せず専門医への相談をおすすめします。
こんなときは要注意!重症化のサインとは?
食道やけどは軽症であれば自然に回復することもありますが、重症化すると重大な合併症を引き起こす恐れがあります。
次のような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
- 激しい胸の痛み
- 飲み込めないほどの痛み
- 唾液や食べ物が飲み込めない
- 飲み込んでも強い痛みを感じる
応急処置の方法と自宅での注意点
食道やけどを疑う症状が現れた際、まず大切なのは「焦らずに正しい対応をとること」です。
熱い飲食物による軽度のやけどであれば、水やぬるま湯を少しずつゆっくり飲んで、食道を冷やすことが応急処置として有効です。ただし、氷水など極端に冷たいものを一気に飲むと逆に刺激になることがあるため注意が必要です。
自宅で安静に過ごす場合は、刺激の少ない柔らかい食事を心がけ、香辛料や酸味の強いもの、アルコールは控えましょう。
また、痛みが続く・悪化する場合は迷わず病院を受診してください。
何科を受診すべきか
食道やけどが疑われる場合に受診すべき診療科は「消化器内科」です。
特に、飲食時の胸の痛みや違和感、嘔吐、吐血などの症状がある場合は、食道の粘膜に損傷がある可能性が高く、専門的な診察と検査が必要です。
当院では、内視鏡を用いた正確な診断と、食道粘膜の状態に応じた適切な治療を行っています。一般的には、胃酸を抑える薬と粘膜保護剤の内用で2〜4週間程度で治癒するケースが多いです。重症のケースでは、食道狭窄のリスクや感染症への対応も必要になるため、早期の専門医受診が重要です。
また、小児の場合にはまず小児科に相談し、必要に応じて専門医への紹介を受けると良いでしょう
子どもの食道やけど
小児特有のリスク
子どもの食道やけどは、大人以上に注意が必要です。なぜなら、子どもは体が小さく、粘膜も未発達であるため、少量の刺激物でも重篤なダメージを受けやすいからです。また、痛みや違和感をうまく言葉で表現できないため、保護者が気づくのが遅れてしまうことも少なくありません。
子どもが突然泣き出す、よだれが止まらない、喉や胸を押さえて苦しそうにしている、食事を拒否するなどの様子が見られたら、食道やけどの可能性を疑いましょう。
救急受診の判断ポイント
子どもが食道やけどを起こした場合、症状の重さを見極めて速やかに病院を受診することが重要です。
なお、一般に小児の食道熱傷はクリニックでは対応困難な場合が多いため、小児科と消化器内科の揃った総合病院への受診をお勧めします。
次のような症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 飲食や唾液を飲み込むことができず、よだれが増えている
- 胸や喉の痛みを訴える、または胸を押さえて苦しがっている
- 嘔吐を繰り返す、または血の混じった吐しゃ物がある
- 呼吸が苦しそう、息がゼーゼーしている
- 顔色が悪く、ぐったりしている、意識がもうろうとしている
原因となった飲食物や量・時間をできるだけ正確に伝えることで、適切な治療が早く行えます。
よくある質問(Q&A)
Q. 食道やけどは自然に治りますか?
A. 軽度であれば数日〜1週間程度で自然に回復することがありますが、強い痛みや症状が続く場合は必ず医療機関を受診してください。放置すると潰瘍や狭窄などを引き起こす可能性があります。
Q. 食道やけどを予防するにはどうしたらいいですか?
A. 熱い飲食物は冷ましてから摂る、化学薬品は子どもの手の届かない場所に保管する、薬剤は正しい方法で服用することが予防につながります。
Q. 病院ではどのような検査をしますか?
A. 状況に応じて内視鏡検査が行われ、食道の粘膜の炎症や損傷の程度を直接確認します。必要に応じて血液検査やレントゲンなどを追加することもあります。
Q. 子どもが誤って洗剤を飲んでしまいました。すぐに水を飲ませても大丈夫?
A. 化学物質の場合は、すぐに口をすすがせましょう。誤飲したものを薄める目的で、コップ1〜2杯程度の牛乳や水を飲んで、すぐに医療機関に連絡し、指示を仰ぐことが大切です。なお、自己判断で吐かせたりすることは危険なので絶対にやめましょう。
まとめ
食道やけどは、日常生活のちょっとした不注意から誰にでも起こり得る症状です。重症化すると命にかかわるリスクもあるため、予防がとても大切です。
特にお子さまやご高齢の方がいるご家庭では、食事の温度管理や誤飲対策の徹底が重要です。
当院では、(小児を除く)食道のトラブルに関する診療を行っております。少しでも不安を感じた場合は、お気軽にご相談ください。