便秘と下痢を繰り返す!原因やセルフケアを医師が解説

便秘と下痢を繰り返す

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2025年6月18日

「便秘と下痢を繰り返す」という症状に悩まされていませんか?お腹の調子が安定せず、生活の質が下がるだけでなく、背景には重大な病気が隠れている可能性もあります。一時的な不調と見過ごさず、原因を正しく理解し、適切な対応をとることが大切です。
この記事では、便秘と下痢を繰り返す原因や考えられる病気、受診の目安について、消化器内科医がわかりやすく解説します。

便秘と下痢を繰り返す!原因やセルフケアを医師が解説

便秘と下痢を繰り返すのはどんな症状?

「便秘と下痢を繰り返す」という症状は大きく分けると2つのパターンがあり、「数日間便が出ない、あるいは硬い便しか出ないといった便秘の状態のあとに、引き続いて軟便や水様便などの下痢が現れる」というパターンと、「便秘と下痢が不規則に起こる」というパターンです。

いずれの場合も、排便のリズムの乱れが長く続くと、腸内環境の悪化や生活の質の低下にもつながります。さらに、痛みを伴う腹部膨満感やガスの異常、残便感、便意の切迫感といった不快な症状が現れることもあります。

これらの症状は、単なる体調不良によるものだけでなく、大腸がんや炎症性腸疾患などの病気から、過敏性腸症候群まで幅広い疾患が関係しているため、長期間症状を繰り返すようであれば適切な検査や治療が必要です。

考えられる主な原因とは?機能性の異常について

便秘と下痢を繰り返す原因は、「腸の動きや働きに問題がある(機能性)」場合と、「腸そのものに病気がある(器質的)」場合があります。

機能性の異常の場合、内視鏡や画像検査では明らかな病変(ポリープや腫瘍など)が見つからず、「異常ありません」などと片付けられてしまうケースもあり、困っている患者様をよくお見かけしますが、この場合に医師が言う「異常なし」とはあくまで「目に見える異常がない」という意味であって、症状があるからには腸の働き(動きや神経の伝達)に異常があることがほとんどです。

代表的な原因は以下の通りです。

  • 過敏性腸症候群(IBS)
    ストレスや生活習慣の乱れにより腸の運動が過敏になることで、便秘と下痢を交互に繰り返すのが特徴です。
  • ストレスや自律神経の乱れ
    精神的なストレスは腸の動きをコントロールする自律神経に影響を与え、排便リズムを乱します。
  • 生活習慣の乱れ
    不規則な食事、偏った栄養バランス、運動不足、睡眠不足などが腸内環境を悪化させます。
  • 腸内フローラの乱れ
    腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、便通異常が起こりやすくなります。
  • ホルモンバランスの影響
    女性に多く、生理周期や更年期などホルモンの変化により腸の動きが影響を受けることがあります。
  • 薬の副作用や食物アレルギー
    特定の薬剤や食べ物が腸に刺激を与え、交互に便秘と下痢を招くこともあります。

一時的な要因であれば上記を意識することで、症状の改善も期待できますが、反対に該当する要因がない場合や、症状が長期化する場合は、腸そのものに病気がある(器質的疾患)可能性もあるため、適切に医療機関を受診し、大腸カメラ検査を受けることが必要です。

考えられる主な病気は?器質的疾患について

便秘と下痢を繰り返す背景には、以下のような「腸そのものの病気」が原因となって、便通異常を引き起こすこともあります。

  • 大腸がん・ポリープ
    腸管内の物理的な狭窄や刺激によって、便通異常が起こることがあります。特に40歳以降で急な排便習慣の変化があった場合には注意が必要です。
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
    腸に慢性的な炎症が起きる疾患で、いずれも通常は下痢が主症状ですが、腸が狭くなったり、炎症による腸の動きの乱れで便秘と下痢を繰り返すことがあります。
  • 腸の癒着や狭窄
    過去の手術や炎症、腸管の奇形などによって腸が物理的に狭くなっていると、スムーズに便が流れず、排便習慣が乱れる場合があります。
  • 大腸憩室(けいしつ)
    大腸の壁にできた袋(憩室)が多発すると、腸が硬くなり動きが乱れ、便秘と下痢が交互に現れる場合があります。
  • 甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症・亢進症)
    ホルモンバランスの異常により、便秘または下痢などの消化器症状が出現します。

特に、大腸がんや大腸ポリープは、早期に発見すれば根治可能ですが、放置すると将来的に命に危険が及ぶ場合もあるため、症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。

便秘と下痢を繰り返すときのセルフケア

便秘と下痢を繰り返す場合、日常生活の中で取り組めるセルフケアが症状の緩和につながります。

ただし、セルフケアを行っても改善しない、または悪化する場合は、自己判断せず早めに医師の診察を受けましょう。

  • 規則正しい生活を心がける
    睡眠・食事・運動を安定させることで自律神経のバランスが整い、腸の働きが改善されます。
  • 水分を十分にとる
    脱水は便秘・下痢のどちらにも悪影響を与えるため、こまめな水分補給を心がけましょう。
  • 食物繊維を適量摂る
    不溶性と水溶性の食物繊維をバランスよく摂取すると、腸内環境が整いやすくなります。
  • ストレスをためない工夫
    趣味やリラックス法を取り入れて、心身の緊張をほぐすことが大切です。

市販薬や整腸剤は効果がある?

便秘と下痢の原因が機能性(検査では異常がない)である場合には、市販薬や整腸剤が症状を緩和することがあります。ただし、市販薬や整腸剤を使用する場合には、注意点もあります。

整腸剤(乳酸菌製剤・ビフィズス菌など)

 乳酸菌やビフィズス菌などが腸内環境を整え、便通の改善に役立ちます。強い作用はなく、あくまで補助的な薬品ですので、自己判断で開始しても大きな問題になることは少なく、慢性的な便通異常の初期対応として有効な場合があります。

便秘薬(下剤)

便秘症状が主体の場合には、酸化マグネシウムなどの「非刺激性下剤」を使用してみるのも良いでしょう。これらは腸を無理に動かさず、便に水分を引き込んで柔らかくするタイプの薬です。用法用量を守って使用すれば、比較的安全に使用できる薬剤です。一方でコーラックなどの刺激性下剤は、腸を強制的に動かす薬で、短期的には効果がありますが、連用すると耐性がつき、腸が自力で動かなくなるリスクがあり注意が必要です。

止瀉薬(下痢止め)

 腸の動きを止める薬で、例えば原因が感染症によるものの場合には状態を悪化させる危険があります。また、炎症性腸疾患などの器質的疾患が隠れている場合は、重篤な合併症を引き起こす恐れもあります。

薬で症状が一時的に収まっても、大腸がんや炎症性腸疾患などの器質的疾患が隠れている可能性もあります。その場合は、整腸剤や市販薬の使用が診断を遅らせる原因にもなるため、症状が続く場合は必ず医療機関を受診しましょう。

受診すべきタイミングと目安

便秘と下痢を繰り返す状態が一時的であれば、様子を見るのも一つの選択肢ですが、以下のようなケースでは早めの受診が推奨されます。

  • 症状が2週間以上続いている
    一時的な腸の不調ではなく、病気が背景にある可能性があります。
  • 便に血が混じる、黒い便が出る
    消化管出血のサインであることもあるため、早急な検査が必要です。
  • 体重減少や発熱を伴う
    炎症性腸疾患や腫瘍など、全身性の病気が関与している可能性があります。
  • 強い腹痛や嘔吐がある
     腸閉塞や感染症など、緊急性の高い状態が疑われます。

何科に行けばいい?

便秘と下痢を繰り返す場合、まず受診すべきは消化器内科です。腸の働きや内視鏡による検査が必要なケースが多く、専門的な診断と治療が受けられます。

特に以下のような症状がある場合は、消化器内科を選びましょう。

  • 腹痛やお腹の張りが続いている
  • 便の性状に変化があり、不安がある
  • 市販薬や整腸剤で効果がない
  • 家族に大腸の病気を患った人がいる

ただし、精神的なストレスが強く関与していると考えられる場合は、心療内科の受診も検討するとよいでしょう。

まとめ

便秘と下痢を繰り返す症状は、腸の不調のサインであるとともに、重大な病気の兆候である可能性もあります。ストレスや生活習慣の乱れなど、一見すると軽微な要因が背景にあることも多いですが、放置することで症状が慢性化し、生活の質が低下する恐れもあります。

まずはセルフケアとして、生活リズムや食事の見直し、整腸剤の活用などを試みることが大切ですが、それでも改善しない場合や、不安な症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが望ましいです。

当院では、消化器内科として内視鏡検査や腹部超音波検査、血液検査などを通じて、原因の特定と適切な治療を行っています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

便秘と下痢を繰り返す場合によくある質問

Q. 便秘や下痢は、大腸がんのリスクになりますか?
A. 便秘や下痢そのものが直接「大腸がんのリスクになる」わけではありません。つまり、便秘や下痢=大腸がんになりやすい状態ではありません。ただし、長引く便通異常は大腸がんの初期症状として現れることがありますので、40歳以上・家族歴あり・症状が続く・出血ありなどの場合は、大腸カメラ検査を受けることを強く推奨します。

Q. 20代で便秘と下痢を繰り返す理由は何ですか?
A. 20代など若年層で便秘と下痢を繰り返す場合、器質的な病気よりも機能性の原因(過敏性腸症候群や生活習慣の乱れなど)が多いです。ただし、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は若年層が好発年齢でもあるため、自己判断せずに一度医療機関で相談すると良いでしょう。

Q. 下痢なのにスッキリしない(残便感がある)のはなぜ?
A. 便秘で腸内に便がたまっていると、その隙間から水分だけが出る「溢流性下痢」という状態になることがあります。この場合、見た目は下痢でも、腸の中には硬い便が残っており、排便後のスッキリ感がありません。また、便の硬さが適切でない場合や、骨盤底筋の機能低下などにより排便力が弱くなると、分割排便といって排便が1回で終わらず、何度かに分けて少しずつ排便する状態となる場合がありスッキリ感がありません。

Q. 診断のためにどのような検査が必要ですか?
A. 便秘と下痢を繰り返す症状がある場合、まずは問診で生活習慣や便の状態を確認します。そのうえで、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)や腹部超音波検査/CT検査、血液検査(炎症の有無や甲状腺ホルモン検査など)、便培養・感染症検査などが行われる場合があります。特に40歳以上で症状が持続している場合や、血便・体重減少がある場合には、大腸内視鏡検査が最も重要です。

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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