2025年10月21日
切れ痔があると、排便のたびに強い痛みを感じ、「うんちをするのが怖い」と感じてしまう方も少なくありません。痛みを避けようと便を我慢すると、便がさらに硬くなり悪循環に陥ります。
この記事では、切れ痔のときに痛みを減らす排便方法や、スムーズに出すための工夫を医師の視点からわかりやすく解説します。

切れ痔について
切れ痔(裂肛)は、肛門の出口付近の皮膚や粘膜が裂けてしまう状態を指します。
排便時に強い痛みを伴い、トイレットペーパーに鮮やかな血がつくのが特徴です。
主な原因は、硬い便を無理に出そうとすることや、下痢で何度も肛門に刺激が加わることです。女性では便秘や出産後に起こるケースも多く見られます。
軽度であれば自然に治ることもありますが、慢性化すると「肛門狭窄(こうもんきょうさく)」を起こし、便がさらに出にくくなることがあります。早めの対処と、適切な排便習慣が大切です。
切れ痔で排便がつらい理由
切れ痔のときに排便がつらい最大の理由は、「痛み」と「恐怖」による悪循環です。
肛門に傷がある状態で便が通過すると、鋭い痛みが生じます。
その痛みによって肛門周囲の筋肉(肛門括約筋)が反射的に収縮し、さらに便が出にくくなります。便が出にくくなると排便時間が長くなり、肛門への負担が増すため、傷口が再び裂けてしまうこともあります。
また、「痛いから出したくない」と排便を我慢すると、便が硬くなり、次の排便時にさらに痛みが強くなるという悪循環になります。
切れ痔のときのうんちの仕方
切れ痔の痛みを減らすためには、「無理なく、スムーズに便を出す」ことが大切です。
以下の方法を意識しましょう。
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力を入れすぎない
強くいきむと肛門が裂けやすくなります。深呼吸しながらゆっくりと力を抜いて出しましょう。
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便意を我慢しない
便意を感じたら早めにトイレへ。便をためると硬くなり、傷が悪化します。
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トイレの姿勢を工夫する
足元に踏み台を置き、少しかがむような姿勢にすると直腸がまっすぐになり、排便しやすくなります。
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短時間で済ませる
長時間トイレに座ると肛門がうっ血し、切れ痔が治りにくくなります。
これらを意識することで、痛みを最小限にしながら排便が行いやすくなります。
生活習慣の改善のみで、便秘がなかなか改善しない場合は、酸化マグネシウムなど、便を柔らかくする薬の使用が有効です。
医療機関の受診も検討しましょう。
排便をスムーズにする生活習慣
切れ痔の改善には、日常の生活習慣を見直すことが欠かせません。
特に便通を整えることで、排便時の痛みを大きく減らすことができます。
食事の工夫
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食物繊維を多く含む野菜・果物・海藻類を意識して摂る
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水分をこまめに取り、便を柔らかく保つ
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アルコールや刺激物(香辛料など)は控えめに
排便リズムの整え方
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毎日同じ時間帯にトイレに行く習慣をつける
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朝食後は腸が動きやすくなるため、排便のチャンス
運動の習慣
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ウォーキングやストレッチで血流を促進
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適度な運動は腸の動きを活発にし、便秘予防にも効果的
切れ痔を悪化させない日常の工夫
切れ痔を悪化させないためには、排便だけでなく日常生活でも肛門への刺激を減らすことが重要です。
以下のポイントを心がけましょう。
肛門を清潔に保つ
排便後は強く拭かず、やわらかいトイレットペーパーで軽く押さえるようにぬるま湯で洗う「坐浴(ざよく)」もおすすめ。
血流が良くなり、治りが早まります。
肛門を冷やさない
冷えは血流を悪くし、治癒を遅らせます。
入浴で体を温め、下半身を冷やさないようにしましょう。
便秘・下痢を放置しない
便秘薬の使用や食事改善で便の状態を整えることが大切です。
肛門はデリケートな部位です。
痛みが強いときや出血が続く場合は、無理をせず医療機関で早めに相談しましょう。
よくある質問
我慢は禁物です。 便意を我慢すると便が硬くなり、次の排便時に傷口が再び裂ける恐れがあります。便意を感じたらできるだけ早めにトイレへ行き、無理なく出すことが大切です。
足元に踏み台を置いて、少しかがむ姿勢がおすすめです。
直腸がまっすぐになり、力を入れずに排便しやすくなります。洋式トイレでは特に効果的です。
水分と食物繊維を意識的に摂りましょう。
水分は1日1.5〜2Lを目安に。野菜・海藻・果物などを毎食に取り入れると便が柔らかくなり、排便時の痛みを軽減できます。
力まずに、深呼吸をしながらゆっくり排便するのがポイントです。
また、便が硬い場合は市販の整腸剤や便を柔らかくする薬(酸化マグネシウムなど)を医師の指導のもとで使用すると効果的です。
無理をせず、早めに医療機関を受診してください。
出血が続く場合は、裂肛のほかに痔核(いぼ痔)や直腸癌などの可能性もあります。