2025年5月31日
朝の目覚めに欠かせないコーヒーですが、飲んだ後にお腹が緩くなる経験はありませんか?「下痢の原因がコーヒーかもしれない」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。コーヒーに含まれる成分が腸に影響を与えることがあります。
本記事では、医師の視点からコーヒーと下痢の関係をわかりやすく解説し、下痢中に飲んでも大丈夫なのか、どんなコーヒーに注意すべきかなど、役立つ情報をお届けします。

コーヒーを飲むと下痢になるのはなぜ?
コーヒーを飲んだ後にお腹が緩くなる方は少なくありません。
その原因として、主に以下の3つの作用が関係しています。
- 腸のぜん動運動を刺激する作用
コーヒーに含まれるカフェインには、胃や腸の動きを活発にする作用があり、排便を促進します。その結果、腸内で十分に水分が吸収される前に便が排出されてしまい、下痢につながることがあります。 - 胃酸の分泌促進
コーヒーは胃酸の分泌を促すため、胃腸に刺激が加わります。胃酸過多は胃腸の痛みや不快感を引き起こすだけではなく、間接的に腸のぜん動運動を促進し、下痢を誘発することもあります。 - 冷たいコーヒーによる冷え
アイスコーヒーなど冷たい飲み物は、腸を冷やして一時的に働きを乱すことがあり、それが下痢につながることも。
このように、コーヒーは体質や体調によって腸に刺激を与えやすい飲み物であるため、敏感な方は注意が必要です。
下痢の原因として考えられるコーヒーの成分
コーヒーに含まれるいくつかの成分は、下痢を引き起こす要因になることがあります。特に以下のような成分に注意が必要です。
- カフェイン
覚醒作用で知られるカフェインは、胃腸のぜん動運動を促進する作用があります。これは排便を助ける一方で、過剰に摂取すると腸の動きが速まりすぎ、下痢を引き起こすことがあります。 - クロロゲン酸
コーヒーに含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化作用がありますが、胃酸の分泌を刺激し、胃腸に負担をかけることがあります。 - 酸味成分
酸味の強いコーヒーは、胃に刺激を与えるため、胃腸の不快感や下痢の原因になることがあります。 - 添加物やミルク
市販の缶コーヒーやカフェオレには、乳製品や甘味料などが含まれています。これらの成分が乳糖不耐症の方や過敏な腸を持つ方にとって下痢の誘因となる場合もあります。
これらの成分が複合的に働き、下痢を引き起こすことがあるため、自分にとってどの成分が合わないのかを見極めることが大切です。
コーヒーが合わない体質とは?
コーヒーを飲むと毎回お腹が緩くなるという方は、体質的にコーヒーが合わない可能性があります。以下のような体質の方は注意が必要です。
- カフェインに敏感な体質
カフェインの刺激に対して過敏な人は、少量でも交感神経が刺激され、腸の動きが過剰になりやすく、下痢や胃痛を起こすことがあります。 - 過敏性腸症候群(IBS)の傾向がある方
ストレスや食事の影響で腸が過敏に反応するIBSの方は、コーヒーの刺激で症状が悪化しやすいです。 - 乳糖不耐症
カフェオレやラテなど乳成分を含むコーヒーを飲むと下痢になる方は、乳糖不耐症の可能性があります。乳糖をうまく分解できない体質により、下痢や腹痛を起こしやすくなります。 - 冷え性・胃腸が弱い体質
特に冷たいコーヒーを飲むと、腸が冷えて働きが低下し、消化不良や下痢を引き起こすことがあります。
こうした体質の方は、コーヒーの摂取量や飲み方を見直すことが症状の改善につながります。
下痢中にコーヒーを飲んでも大丈夫?
下痢の最中にコーヒーを飲むことは、基本的にはおすすめできません。
コーヒーには腸を刺激する成分が多く含まれており、症状を悪化させる可能性があるからです。
- 腸への刺激を強める
下痢の際はすでに腸が過敏な状態です。カフェインや酸味成分は腸をさらに刺激し、症状が長引く原因となることがあります。 - 脱水を助長する可能性
カフェインには利尿作用があるため、水分が体外に排出されやすくなります。下痢によってすでに脱水傾向にある状態でコーヒーを飲むと、さらに体内の水分が失われる危険性があります。 - 胃腸への負担を増やす
特に空腹時や体力が落ちているときにコーヒーを飲むと、胃酸の分泌が活発になり、胃腸に余計な負担がかかることも。
下痢のときはコーヒーよりも、白湯や経口補水液など、体に優しく水分補給ができる飲み物を選ぶことが望ましいでしょう。
下痢を防ぐコーヒーの飲み方の工夫

コーヒーによる下痢を防ぐには、飲み方を少し工夫することが効果的です。
以下のようなポイントを意識してみましょう。
- 空腹時を避ける
コーヒーは胃酸の分泌を促すため、空腹時に飲むと胃腸への刺激が強くなりがちです。なるべく食後に飲むようにしましょう。 - ホットコーヒーにする
冷たいコーヒーは腸を冷やしてしまうため、常温やホットの方が胃腸に優しく、下痢を起こしにくくなります。 - ミルクや砂糖を控える
乳製品や糖分は腸に負担をかけることがあります。特に乳糖不耐症の方はミルク入りのコーヒーを避けた方が無難です。 - 量を控えめにする
1日に何杯も飲むとカフェイン摂取量が増え、腸の刺激が強くなります。1〜2杯程度に抑えるのが安心です。 - カフェインレスコーヒーを試す
カフェインの刺激が気になる方は、カフェインレスコーヒーに切り替えるのも選択肢です。
下痢が続くときに考えられる病気
一時的な下痢は体調や食生活によって起こることが多いですが、数日以上続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性もあります。以下のような疾患が考えられます。
感染性胃腸炎
ウイルスや細菌によって引き起こされる腸の感染症です。水様便や腹痛、発熱、吐き気を伴うことがあります。
過敏性腸症候群(IBS)
検査で異常が見つからないにもかかわらず、慢性的に下痢や便秘を繰り返す機能性疾患です。ストレスとの関連も指摘されています。
関連記事:過敏性腸症候群(IBS)
潰瘍性大腸炎・クローン病
腸に炎症が起こる慢性疾患で、粘血便や体重減少を伴うことがあります。治療には専門的な管理が必要です。
関連記事:潰瘍性大腸炎・クローン病
大腸がん
初期の大腸がんは症状が乏しいこともありますが、進行すると下痢や便秘、血便、体重減少がみられることがあります。特に40歳以上で急な排便習慣の変化があった場合や、家族に大腸がんの既往がある場合は注意が必要です。
関連記事:大腸がん
すい臓がん
膵臓にがんができると、膵液の流れが妨げられ、消化不良や下痢を引き起こすことがあります。脂肪下痢、体重減少、背中の痛み、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなる)などが特徴です。
関連記事:すい臓がん
これらの疾患は自己判断が難しいため、下痢が数日以上続いたり、血便や激しい腹痛を伴う場合は早めの受診をおすすめします。
病院に行くべき症状の目安
下痢は一過性のものであれば自然に治ることもありますが、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
- 3日以上下痢が続く
感染性の下痢や慢性疾患が隠れている可能性があり、原因の特定と適切な治療が必要になります。 - 発熱や嘔吐を伴う
ウイルス性や細菌性の感染による胃腸炎などが考えられ、脱水のリスクも高まります。 - 血便や粘液便が出る
腸に炎症や出血があるサインで、潰瘍性大腸炎や感染性腸炎、大腸がんなどの可能性もあります。 - 強い腹痛やけいれんを伴う
腸閉塞や腸重積、虫垂炎など、緊急の対応が必要な疾患の可能性も否定できません。 - 脱水症状がある
口の渇き、尿量の減少、めまいなどが現れている場合は、早急な水分補給と治療が必要です。 - 体重が急激に減っている
消化吸収に問題がある慢性疾患のサインかもしれません。
大腸がんやすい臓がんなど悪性腫瘍の可能性も否定できず、医療機関の受診が推奨されます。
これらの症状がある場合は、放置せずに消化器内科など専門の医療機関に相談しましょう。
まとめ
コーヒーは多くの人にとって身近な飲み物ですが、下痢との関係には注意が必要です。
カフェインや酸味成分、冷たさなどが腸を刺激し、体質や飲み方によっては下痢を引き起こすことがあります。特に体調が悪いときや下痢が続いているときは、コーヒーの摂取を控えることが望ましいでしょう。
また、コーヒーが合わない体質や隠れた病気の可能性もあるため、症状が長引く場合は専門医の診察を受けることが大切です。自分の体と上手に向き合いながら、コーヒーを楽しむための工夫を取り入れていきましょう。