2026年4月05日
「お酒を飲むと必ずお腹を壊してしまう」「飲んだ翌日はいつも下痢になる」と悩まれている方は、意外と多いものです。飲酒後の下痢は一時的なものもありますが、アルコールそのものの刺激、飲酒時の脂っこい食事、もともとの腸の敏感さ、まれに膵臓や腸の病気が関係していることもあります。
この記事では、お酒が胃や腸に与える影響から、下痢が起きる仕組み・原因・対処法まで、消化器専門医がわかりやすく解説します。

お酒を飲むと下痢をする仕組み
飲酒後に下痢が起きる主な仕組みは、腸の水分吸収低下だけではなく、アルコールによる消化管粘膜への刺激、腸の運動変化、小腸での水・ナトリウム吸収の低下などが複合して起こると考えられています。
下痢が起きるまでの流れ
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アルコールが胃や小腸・大腸の粘膜を刺激する
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小腸での水分・電解質の吸収が低下し、腸内容の水分が増える
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腸の動きが乱れ、便が十分に固まる前に排出されやすくなる
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下痢が起こる
なお、二日酔いの有無と下痢は必ずしも一致しません。
アセトアルデヒドだけで説明できるわけではなく、エタノール自体の作用や食事内容も関与します。
お酒で下痢になりやすい原因4つ|飲みすぎ・食事・体質・基礎疾患
飲酒後の下痢には、主に4つの原因が考えられます。
それぞれ仕組みが異なるため、ご自身に当てはまるものを確認してみてください。

原因①|飲みすぎ・食べすぎ
飲み会の翌日だけ下痢になる方に多いタイプです。
大量のアルコールやおつまみが一度に胃腸へ入ることで、消化管が刺激され、下痢が起こりやすくなります。特に高脂肪食は下痢や胃もたれを悪化させやすいため注意が必要です。
こんな方に多い
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飲んだ翌日だけ下痢になる
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お酒の量が多いと感じている
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脂っこいおつまみをよく食べる
原因②|体質・腸が敏感な状態(IBSなど)
もともと腸が敏感な方では、アルコールをきっかけに下痢や腹痛が出やすくなります。
臨床現場でも、過敏性腸症候群(IBS)のある方が「飲酒のたびにお腹を壊す」と訴えることは少なくありません。IBSはRome基準に基づいて診断し、警告症状がある場合は他疾患の除外が重要です。
こんな方に多い
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少量の飲酒でもお腹がゴロゴロする
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ストレスで下痢しやすい
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普段から腹痛や便通異常を繰り返す
原因③|膵臓(すいぞう)の機能低下
膵臓は、脂質やタンパク質を分解する消化酵素を含む膵液を分泌する臓器です。
長期にわたる過剰な飲酒は慢性膵炎の原因となり、膵外分泌機能が低下すると、脂質が消化されにくくなります。この場合は、脂肪便(油が浮いたような便)、体重減少、栄養障害、腹部膨満などを伴うことがあります。
こんな方は要注意
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長年、毎日お酒を飲んでいる
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みぞおちや背中に鈍い痛みがある
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便が油っぽい・水面に浮く
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体重が減ってきた
原因④|腸内環境の変化・腸粘膜への障害
長期・多量飲酒では、腸内細菌叢の変化や腸管の透過性亢進が報告されています。
アルコールを分解する過程で生じる「アセトアルデヒド」は、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を乱すことが研究で示されています。善玉菌(ビフィズス菌・酪酸菌など)が減少し、悪玉菌が増えることで、慢性的に下痢や軟便が続きやすい状態になります。
飲酒後の下痢への対処法
飲酒後に下痢が起きた場合は、以下の対処を心がけてください。
無理に食事をとったり、水分を控えたりすることは避けましょう。急性の下痢では、まず脱水予防が基本です。
まず水分補給を優先する
下痢が続くと、体内の水分と電解質(ナトリウムなど)が失われます。「下痢が悪化するから」と水分を控える方もいますが、これはかえって脱水を招く危険があります。
おすすめの水分補給
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水・麦茶(常温または温かいもの)
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経口補水液(脱水が強い場合)
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スポーツ飲料(糖分が多いため飲みすぎに注意)
消化の良い食事を選ぶ
胃腸を休めるために、脂質が少なく刺激の少ない食事を選びましょう。
食べて良いもの
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おかゆ・うどん
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白身魚・鶏むね肉
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すりおろしリンゴ
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野菜スープ(薄味)
避けるもの
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揚げ物・脂っこいもの
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香辛料・辛いもの
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乳製品(普段から牛乳などでお腹を壊しやすい方)
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生野菜・食物繊維の多いもの
下痢しにくいお酒の飲み方・予防のコツ
飲酒による下痢を防ぐには、日ごろの飲み方を少し見直すことが大切です。以下のポイントを意識してみてください。
飲む前・飲みながらの工夫
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空腹を避け、食事と一緒に飲む
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空腹時は腸への刺激が強まりやすい
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チェイサー(水・お茶)を挟む
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アルコール濃度を薄め、腸の負担を軽減する
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ゆっくりペースで飲む
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急な大量摂取は腸に強い刺激を与える
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脂っこいもの・塩辛いものを控える
1日の飲酒量の目安
厚生労働省は、飲酒による影響には個人差が大きいことを前提に、「節度ある飲酒」の目安として、1日あたり純アルコール約20g程度を示しています。
| 種類 | 目安 |
| ビール(5%) | 中瓶1本(500ml)前後 |
| 日本酒 | 1合(180ml) |
| ワイン | グラス2杯程度 |
| 焼酎(25%) | 約100mL前後 |
※ただし、2024年公表の健康に配慮した飲酒に関するガイドラインでは、病気によっては少量でもリスクが上がること、女性や高齢者、飲酒に弱い体質の方ではより少ない量でも影響を受けやすいことが示されています。「この量までなら安全」と言い切れるわけではありません。症状が出る方は、目安量未満でも減酒・休肝日・禁酒を検討してください。
繰り返す下痢は病気のサイン?|疑われる疾患
飲酒に関係なく下痢が続く場合や、お酒を少し飲んだだけで症状が起きる場合は、消化器の病気が隠れていることがあります。以下の疾患が疑われることがあります。
疑われる主な疾患
アルコール関連胃炎・胃潰瘍
大量飲酒は胃の粘膜を直接刺激し、胃痛、吐き気、食欲不振、黒色便の原因になることがあります。黒色便は上部消化管出血のサインになりうるため注意が必要です。
慢性膵炎(まんせいすいえん)
長期にわたる飲酒が主な原因の一つとされています。膵臓の機能が低下し、消化不良・脂肪便・体重減少、栄養障害、背部痛などを伴う場合は詳しい評価が必要です。
過敏性腸症候群(IBS)
ストレスや生活習慣の乱れで腸が過敏になり、下痢・腹痛を繰り返す状態です。飲酒や食事が症状の引き金になることもあります。
感染性腸炎
飲酒時の食事内容によっては、加熱不十分な食品などによる感染性腸炎も鑑別に挙がります。発熱、嘔吐、強い腹痛、血便があれば要注意です。
大腸ポリープ・大腸がん
飲酒は大腸がんのリスク因子の一つとされています。「飲酒後の下痢」だけで大腸がんを強く疑うわけではありませんが、自覚症状が出にくいため、定期的な検査が重要です。
こんな症状があれば早めに受診を
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血便・黒っぽい便が続く
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体重が減ってきた
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みぞおち・背中に継続的な痛みがある
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下痢と便秘を繰り返す
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少量の飲酒でも毎回下痢になる
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2週間以上続く、または繰り返す下痢がある
日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックについて

当クリニックは、消化器疾患の診断と治療を専門としています。飲酒後の下痢・胃痛をはじめとする消化器のトラブルに対応しています。
当クリニックの特徴
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消化器専門医による診療
日本消化器病学会専門医が、丁寧に診察いたします
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内視鏡検査が可能
胃カメラや大腸カメラなど、精密な検査を行うことができます
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土曜日・日曜日も診療
平日お忙しい方も受診しやすい体制を整えています
こんな症状があればご相談ください
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飲酒後に毎回下痢・腹痛が起きる
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みぞおちや背中の痛みが続いている
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血便・黒い便が出た
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体重が最近減ってきた
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少量の飲酒でも胃の不快感が続く
お腹の症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
詳しくは公式サイトをご覧ください。よくある質問
関係する可能性はあります。日本人ではALDH2の働きが弱い方が一定数おり、飲酒で顔が赤くなる、動悸、吐き気などの不快症状が出やすいことが知られています。ただし、ALDH2の体質だけで下痢を一律に説明できるわけではなく、飲酒量、食事内容、IBSなど他の要因も一緒に考える必要があります。ご自身の体質を知りたい方には、アルコール遺伝子検査で確認することもできます。
飲みすぎによる一時的な下痢であれば、減酒や禁酒で改善することが多いです。ただし、慢性膵炎やIBSなどの基礎疾患がある場合は、禁酒だけでは十分でないことがあります。繰り返す場合は消化器内科での評価をおすすめします。
下痢が続くと、水分・電解質が失われ、脱水を起こす可能性があります。また、長引くと体重減少や倦怠感につながることもあります。血便、黒色便、発熱、強い腹痛、脱水、体重減少を伴う場合は、期間にかかわらず早めの受診が必要です。