2025年4月30日
「食道に何かが引っかかるような感じがする」「食べ物がスムーズに通らない気がする」といった“食道の詰まり感”に悩まされていませんか?症状は軽くても、放置すると深刻な病気が隠れていることもあります。原因は胃や食道の炎症、ストレス、加齢による嚥下機能の低下など多岐にわたり、適切な科での診察が重要です。
この記事では、考えられる原因や受診の目安、対処法をわかりやすく解説します。

食道に詰まり感があるとき
食道の詰まり感とは、食べ物や飲み物を飲み込む際にスムーズに通らず、途中で引っかかるような違和感を覚える状態を指します。
喉ではなく、胸の奥やみぞおちのあたりで詰まっているように感じる方が多く、単なる一時的な症状と思いがちですが、実はさまざまな消化器疾患の初期症状である可能性もあります。
特に、詰まり感が継続している、飲食が困難になってきた、喉や胸に痛みを伴うといった場合は、早めの医療機関受診が推奨されます。
症状チェック
食道の詰まり感を感じたときは、以下のような症状がないかをチェックしてみましょう。
症状によって、疑われる疾患や必要な診療科が変わることがあります。
- 飲み込むと胸の奥に違和感がある
- 食事中にむせやすい、飲み込みに時間がかかる
- 食べ物や飲み物が喉や胸に引っかかる感じがする
- 胸やけ、酸っぱい液が上がってくることがある
- のどに異物感があるが、目に見える範囲には何もない
- 症状が食後に悪化しやすい
- 体重が知らないうちに減っている
- 声がかすれる、咳が続く
このような症状が継続または悪化している場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
考えられる疾患
食道の詰まり感にはさまざまな疾患が考えられます。
ここでは、代表的な疾患を5つ紹介します。いずれも早期発見・早期治療が重要です。
胃食道逆流症(GERD)
胃酸が食道へ逆流することで、食道粘膜が炎症を起こし、詰まり感や胸やけを引き起こします。慢性的に続くと粘膜が傷つき、食道狭窄の原因になることもあります。
食道炎
カンジダ菌やヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどの真菌やウイルス感染、薬の錠剤やカプセルが食道内で停滞し、局所的に粘膜を傷つけてしまう薬剤性食道炎、アレルギーが関与する好酸球性食道炎、熱いものを飲み込んだ後の食道熱傷など、食道が炎症を起こした状態です。嚥下時の痛みや違和感、詰まり感、染みるような症状が主な症状です。
食道がん・咽頭がん
食道やのどの粘膜に発生する悪性腫瘍です。初期は無症状のこともありますが、進行すると食べ物が通りにくくなり、詰まり感や胸の圧迫感を感じるようになります。喉の違和感や声のかすれ、体重減少も伴うことがあります。
咽喉頭異常感症(ストレスや自律神経の影響)
検査をしても異常が見つからないのに、喉や食道に詰まり感や異物感を覚える状態です。ストレスや自律神経の乱れが関係していることが多く、精神的な緊張状態が続いている方に多く見られます。心配性な方や、真面目な正確な方に多く見られる症状です。
副鼻腔炎・後鼻漏
後鼻漏とは、鼻の奥(副鼻腔など)で分泌された鼻水や膿性分泌物が、前ではなく喉の奥へ流れ落ちてくる状態です。風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)などが原因になります。後鼻漏によって喉の奥(咽頭~喉頭)に粘液がへばりつくと、喉のつかえ感(異物感)、食べ物が通りにくい感じ、咳払いが増える、慢性的な咳や声枯れといった症状を引き起こします。
何科に行けばいい?
食道の詰まり感を感じたとき、「何科を受診すればよいのか分からない」と迷う方は少なくありません。原因によって適切な診療科が異なるため、症状の傾向を見極めることが大切です。
- まずは「内科」または「消化器内科」へ
食道の詰まり感の多くは、胃食道逆流症や食道炎といった消化器のトラブルが関係していることが多いため、まずは「内科」または「消化器内科」の受診をおすすめします。消化器内科では内視鏡検査などで詳細に原因を調べることが可能です。 - 喉の違和感が強い場合は「耳鼻咽喉科」も検討
詰まり感が喉の近くで強く感じられる、または声のかすれや咳が続くといった症状がある場合は、耳鼻咽喉科の受診も選択肢になります。咽頭や喉頭の疾患が関係していることもあります。 - 咳症状などを伴う場合は「呼吸器内科」も検討
咳喘息やアレルギー疾患が原因で症状が出ることもあるため、咳症状などを伴う場合は呼吸器内科も検討すると良いでしょう。一般的には呼吸器内科はアレルギー科も標榜していることが多いです。
受診の目安・すぐに病院に行くべき症状とは?
食道の詰まり感があるからといって、すぐに病院へ行くべきか迷う方も多いかもしれません。
以下のような症状がある場合は放置せず早急な受診が必要です。
- 詰まり感に加えて痛みや吐き気がある場合
食道炎や胃食道逆流症、食道潰瘍などが疑われます。飲み込むときの痛みや胸の不快感、吐き気がある場合は早めの診察が重要です。 - 食事がしづらい、飲み込みにくい場合
食道の狭窄や嚥下障害、腫瘍の可能性があります。食事のたびに苦痛があるようなら、速やかに検査を受けましょう。 - 急激な体重減少や喉のしこりがある場合
悪性腫瘍など重篤な疾患の可能性があるため、緊急性が高い症状です。これらが見られる場合はすぐに医療機関を受診してください。
よくある質問
Q. 食道の詰まり感は自然に治ることがありますか?
A. 一時的なものであれば自然に軽快することもありますが、繰り返す場合や長引く場合は病気が隠れている可能性があるため、医療機関を受診してください。
Q. どのタイミングで病院に行くべきですか?
A. 詰まり感が数日以上続く、食事がとりにくい、痛みや体重減少がある場合は早めに受診をおすすめします。
Q. 内視鏡検査は必ず必要ですか?
A. 症状によっては必要です。食道の状態を直接確認できるため、正確な診断と治療方針の決定に役立ちます。定期的な検査を受けている方であれば、先に薬物治療から開始し、良くならない場合に内視鏡検査をおすすめする場合もありますが、検査を受けたことがない場合は、一度受けておいた方が安心です。
Q. ストレスでも詰まり感が起こることはありますか?
A. はい、ストレスや自律神経の乱れが原因で、咽喉頭異常感症と呼ばれる症状が起こることがあります。身体的異常がない場合でも症状が出ることがあります。
Q. 食事内容で気をつけたほうがいいことはありますか?
A. 消化に良い柔らかい食事を意識し、ゆっくりよく噛んで食べることが大切です。香辛料や脂っこいもの、アルコールなどは症状を悪化させる場合があるため控えましょう。
まとめ
食道の詰まり感は、胃食道逆流症や食道炎といった軽度の疾患から、食道がんなど重大な病気の初期症状まで、さまざまな原因が考えられます。一時的な違和感でも、症状が続いたり悪化したりする場合は、専門の医療機関での診察が必要です。特に、飲み込みにくさや痛み、体重減少があるときは、早期の受診が命を守ることにもつながります。
当院では消化器の専門的な視点から、内視鏡を用いた精密検査や適切な治療を行っています。気になる症状は放置せず、ぜひ一度ご相談ください。