2025年10月17日
FODMAP(フォドマップ)とは、特定の糖質の総称で、腸内でガスを発生しやすく、腹部の張りや下痢、便秘などを引き起こす原因になることがあります。
特に過敏性腸症候群(IBS)でお悩みの方は、食事内容によって症状が大きく左右されることも。
この記事では、FODMAPの基本から、高・低FODMAP食品の一覧、食事法の注意点までわかりやすく解説します。

FODMAPとは?
FODMAP(フォドマップ)とは、腸内で発酵しやすい糖質の総称で、Fermentable(発酵性)・Oligosaccharides(オリゴ糖)・Disaccharides(二糖類)・Monosaccharides(単糖類)・And・Polyols(ポリオール)の頭文字をとった言葉です。
これらは小腸で吸収されにくく、大腸で腸内細菌によって発酵することでガスを発生させ、腹部の張りや腹痛、下痢・便秘などを引き起こすことがあります。
症状の出方や程度は人によって異なり、同じ食品を食べても平気な人もいれば、強い症状を感じる人もいます。
健康な人でも食べ過ぎや体調不良、ストレス、腸内環境の乱れなどによって一時的に腸の動きや感受性が変化すると、お腹の張りやガスを感じることがあります。
特に、過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシアと診断された方では、FODMAPが症状を悪化させる要因になることがあります。
FODMAPを多く含む食品を控え、低FODMAP食品を中心に食事を組み立てることで、腸内環境を整え、症状の緩和が期待できます。
高FODMAP 食品一覧
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穀類
小麦(パン、うどん、パスタ、ラーメン、そうめん、焼きそば、ピザ生地、餃子の皮、春巻きの皮、天ぷら衣)
ライ麦、黒パン、全粒粉パン
ケーキ、ドーナツ、マフィン、ホットケーキ、パンケーキ、クッキー、クラッカー、クロワッサン
小麦を含むソース類(ホワイトソース、グレービーソースなど)
もち麦、押し麦、ライスブラン入りパン
野菜・きのこ類
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玉ねぎ(白・赤・青ねぎ含む)、にんにく、にら、らっきょう、エシャロット
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キャベツ(特に生キャベツや紫キャベツ)、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ
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アスパラガス、アーティチョーク、とうもろこし、そら豆、グリーンピース、枝豆
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マッシュルーム(ホワイト、シイタケ、エノキ、マイタケなど)
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ごぼう、れんこん、たけのこ
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セロリ、白菜(特に芯の部分)、オクラ、ズッキーニ
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乾燥野菜、野菜スープの素
果物
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りんご、梨、スイカ、マンゴー、柿、さくらんぼ、プラム、プルーン、アプリコット
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ドライフルーツ(レーズン、デーツ、ドライいちじく、ドライマンゴー、ドライアップル)
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はちみつ(高フルクトース含有)
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ライチ、ネクタリン、桃、スモモ
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すいか、なし、黒いちじく
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果汁100%ジュース(特にりんご・梨・マンゴー・グレープ)
乳製品・乳糖を含む食品
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牛乳(全脂・低脂問わず)、ヨーグルト、アイスクリーム、練乳、ホエイプロテイン
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カフェラテ、ミルクティー、ミルクココア、カプチーノ
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チーズ(リコッタ、カッテージ、マスカルポーネ、クリームチーズなど)
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生クリーム、ホワイトソース、クリームスープ
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ミルクチョコレート、ミルク入り飴
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乳成分を多く含むお菓子・スイーツ全般
豆類・豆製品
豆類はオリゴ糖を多く含むため、腸内でガスが発生しやすい食材です。
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大豆(豆そのもの)、枝豆、納豆、あずき、黒豆、インゲン豆、そら豆、えんどう豆
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レンズ豆、ひよこ豆、白いんげん豆、金時豆、ピント豆
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豆乳(特に濃度の高い無調整豆乳)
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高たんぱく質の大豆製品(豆バー、プロテイン食品)
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豆の缶詰、レトルト豆スープ
甘味料・加工食品
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ソルビトール(E420)、マンニトール(E421)、キシリトール、マルチトール、エリスリトール(人によっては影響)
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高フルクトースコーンシロップ(異性化糖)
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はちみつ、アガベシロップ、メープル風味シロップ
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ダイエット飲料、無糖ガム、シュガーレスキャンディ、人工甘味料入りスナック
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プロテインバー、エナジードリンク(人工甘味料入り)
その他・調味料類
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カレーやシチューのルウ(小麦粉・玉ねぎ入り)
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ケチャップ、焼肉のタレ、オイスターソース、ウスターソース
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にんにく入りドレッシング、たまねぎドレッシング
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ビール(麦芽・発酵糖を含む)
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ワイン(特に甘口)、果実酒
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炭酸飲料(ガス膨満を助長)
和食・日本特有の食品で高FODMAPな例
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味噌(特に大豆多めのタイプ)、しょうゆ(たまり・濃口)
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あんこ(あずき)、どら焼き、大福、ようかん
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カステラ、シュークリーム、プリン
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ラーメン、うどん、カレーライス、パン粉を使った揚げ物
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果物入りヨーグルトやパフェ
このように、私たちが日常的に口にする食品の多くに高FODMAP成分が含まれています。
重要なのは「全てを避ける」のではなく、自分の腸に合わない食材を把握して調整することです。
低FODMAP 食品一覧
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穀類
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米類:白米、玄米、もち米、発芽玄米、胚芽米、雑穀米(低FODMAP穀物配合のもの)
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そば(十割そばのみ/小麦入りは不可)
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米粉製品:米粉パン、米粉クッキー、米粉うどん、ライスヌードル(フォー)
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オートミール(少量/1食30g程度まで)
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コーンフレーク(無糖タイプ)、コーンブレッド
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ポップコーン、コーンミール、とうもろこし粉
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タピオカ、くず粉
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じゃがいも、さつまいも、里芋(適量)
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春雨(緑豆・でんぷん由来)
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ビーフン、ライスパスタ
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グルテンフリーパスタ(米・とうもろこしベース)
野菜・きのこ類
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葉物野菜:レタス、サニーレタス、ほうれん草、小松菜、水菜、チンゲン菜、春菊、キャベツ(少量)、ブロッコリーの茎部分
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根菜類:にんじん、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ(少量)、大根、かぶ、れんこん、長いも(少量)
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果菜類:トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、パプリカ、きゅうり、ズッキーニ、かぼちゃ(日本種)
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もやし、スプラウト、ブロッコリースプラウト
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海藻類:わかめ、昆布、のり、ひじき(食物繊維豊富でFODMAP低)
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きのこ類(低FODMAP):えのき(少量)、マッシュルーム(缶詰タイプ)、まいたけ(ごく少量)
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芋類:こんにゃく、長芋(少量)
果物
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バナナ(熟しすぎていないもの)
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キウイ(緑・ゴールド)
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いちご、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー
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パイナップル、メロン(カンタロープ、ハネデューメロン)
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ぶどう(赤・緑)、柑橘類全般(レモン、ライム含む)
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ドラゴンフルーツ、パパイヤ
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ココナッツ(ココナッツミルクは少量)
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トマト(果実扱いとしても可)
乳製品・乳代替品
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ラクトースフリー牛乳(乳糖分解済みミルク)
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無糖の調整豆乳(大豆固形分が少ないもの)
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アーモンドミルク、オーツミルク(砂糖無添加タイプ)
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ラクトースフリーヨーグルト、ギリシャヨーグルト(乳糖カットタイプ)
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チーズ類(低乳糖):チェダー、パルメザン、モッツァレラ、ブリー、フェタ、ゴーダ
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バター、マーガリン(乳糖ほぼゼロ)
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クリームチーズ(少量)
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無糖ホイップ(乳糖フリータイプ)
たんぱく質・肉・魚・卵・大豆製品
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肉類:鶏肉、豚肉、牛肉、ラム肉、鴨肉、ターキー
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魚類:サバ、アジ、イワシ、サンマ、ブリ、カツオ、マグロ、タイ、ヒラメ、タラ、ホッケ、鮭
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卵:鶏卵(全卵・卵白・卵黄いずれも可)
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豆腐(木綿・絹ごし)、厚揚げ、油揚げ(少量)
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大豆ミート(低FODMAPタイプ)、プロテインパウダー(ホエイフリープロテイン)
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ハム、ベーコン、ウインナー(無糖・無添加タイプ)
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魚介類:えび、かに、いか、たこ、ほたて、あさり
甘味料・調味料
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白砂糖(上白糖)、グラニュー糖
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ブドウ糖(グルコース)
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メープルシロップ(純粋タイプ)
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ステビア、ラカントS(エリスリトール主体)
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塩、こしょう、オリーブオイル、ごま油、米油、バター
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しょうゆ(淡口・無添加)、みそ(米みそ/大豆控えめタイプ)
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酢、米酢、黒酢、ポン酢(玉ねぎ・にんにく不使用)
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マヨネーズ(無糖タイプ)、ケチャップ(少量)
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和風だし、昆布だし、かつおだし
飲み物
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水(軟水・ミネラルウォーター)
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緑茶、麦茶、玄米茶、ルイボスティー
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紅茶(無糖)、ハーブティー(カモミール、ペパーミントなど)
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コーヒー(ストレート少量)、デカフェコーヒー
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スポーツドリンク(低糖タイプ)、経口補水液
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豆乳ラテ(調整豆乳使用)
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炭酸水(無糖)
和食・日本の低FODMAP例
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ごはん、塩むすび、鮭おにぎり、梅干しおにぎり(少量)
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焼き魚定食、肉じゃが(玉ねぎ抜き)、野菜炒め(にんにく抜き)
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冷しゃぶ、湯豆腐、茶碗蒸し、だし巻き卵
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みそ汁(大豆少なめ・野菜多め)
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おでん(こんにゃく、卵、大根、ちくわなど)
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おひたし、煮物(根菜中心)、漬物(浅漬け)
毎食すべてを厳密に制限する必要はなく、「高FODMAPを減らし、低FODMAPを多くする」意識を持つだけで腸の調子が整いやすくなります。
低FODMAP お菓子一覧
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米・いも・ナッツを使ったお菓子
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米粉クッキー、米粉パンケーキ、米粉マドレーヌ、米粉スコーン
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ポン菓子、ポップコーン、あられ、せんべい(しょうゆ味・塩味)
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じゃがいもチップス(ポテトチップス:無添加・プレーンタイプ)
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さつまいもチップス、干しいも(砂糖不使用タイプ)
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ナッツ類(アーモンド、くるみ、ピーナッツ、ピスタチオなどは1回20粒以内が目安)
チョコ・スイーツ系
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チョコレート(カカオ70%以上・乳成分少なめ)
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ココア(無糖タイプ)+豆乳やラクトースフリーミルクで作るホットココア
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米粉ブラウニー、米粉マフィン、米粉シフォンケーキ(乳糖フリーのバター・豆乳使用)
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手作りプリン(乳糖除去ミルクで)
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フルーツゼリー(オレンジ、いちご、キウイなど低FODMAP果実使用)
甘味料を工夫したお菓子
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メープルシロップを使ったスイーツ(ホットケーキ、クッキーなど)
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ステビアやラカントSで甘みをつけた低糖スイーツ
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寒天ゼリー、杏仁豆腐(豆乳・ラクトースフリー牛乳使用)
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バナナやキウイを使った果物アイス、スムージー(砂糖不使用)
和菓子系(控えめにすればOK)
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塩せんべい、かるせん(無添加タイプ)
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ようかん(砂糖控えめ・あずき少なめ)
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みたらし団子(タレに小麦粉不使用のもの)
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寒天を使った和ゼリー、黒蜜少量がけ
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甘納豆風のおやつ(豆を使わずナッツや穀物で代用)
FODMAP食事法のメリットと注意点
FODMAP食事法(低FODMAP)は、過敏性腸症候群(IBS)や慢性的な腹部膨満、ガス、便通異常などで悩む方に有効とされる食事療法です。
腸で発酵しやすい糖質を制限し、腸内環境を整えることで、症状を和らげることが目的です。
メリット
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腹部の張り・ガスの軽減
発酵性糖質を減らすことで、腸内ガスの発生が抑えられます。
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便通リズムの安定化
便秘・下痢いずれのタイプにも効果があり、排便がスムーズになります。
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腸内環境の改善
腸内細菌のバランスが整い、炎症や不快感が減少します。
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食事による症状コントロール
薬に頼らず、日常の食事で症状を管理できます。
注意点
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自己流で長期間続けない
低FODMAP食は「一生続ける食事法」ではなく、症状を落ち着かせるための一時的なアプローチとして行うのが基本です。
約4〜6週間を目安に試してみて、症状が落ち着くかを確認しましょう。再導入期(高FODMAPを少しずつ戻す期間)は、食品群ごとに少しずつFODMAPを再導入し、自分がどの種類・量で症状が出るかを見極めましょう。
個別の体質に合わせた調整が大切です。 -
短期間での効果を焦らない
腸内環境の変化には数週間かかる場合があります。
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完全除去は不要
体質により耐えられる量が異なるため、食材ごとに「許容量」を見極めることが重要です。
自分に合う範囲のFODMAP食品をバランス良く取り入れ、制限を緩やかに行うことが継続の秘訣です。 -
善玉菌も減らすリスク
FODMAPの多くは、実は腸内の「善玉菌(ビフィズス菌など)」のエサとなる発酵性食物繊維でもあります。
食物繊維の摂取が減りすぎると腸内の有用菌まで減ってしまうことがあります。
よくある質問
いいえ、完全に避ける必要はありません。
FODMAPは腸に悪い成分ではなく、腸内でガスを発生しやすい糖質です。
体質により耐えられる量が異なるため、症状が出やすい食品を中心に控えるのがおすすめです。
一般的には4〜6週間の「除去期間」で変化を感じる方が多いです。
その後、少しずつ高FODMAP食品を再導入して、自分の腸に合う食品を見つけるステップに進みます。
はい、日本食は低FODMAが豊富です。
白米、焼き魚、卵焼き、豆腐、みそ汁(玉ねぎ・にんにくなし)などは低FODMAPです。
和食は工夫次第で非常に取り入れやすい食事法です。
一時的な試みであれば問題ありませんが、長期的に自己判断で制限すると栄養不足のリスクがあります。
医師や管理栄養士の指導を受けながら進めるのが安全です。
他の要因(ストレス、腸の運動異常、他疾患など)が関与していることもあります。
その場合は、食事だけでなく生活習慣の見直しや内科的検査を行うことが大切です。