食べ物が飲み込みにくい|食道カンジダ症とは?

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2025年3月09日

「最近、食べ物が飲み込みにくい」「胸やけがする」といった症状はありませんか?もしかしたら、それは食道カンジダ症かもしれません。
食道カンジダ症は、食道にカンジダ菌という真菌(カビ)が感染することで起こる炎症です。
食道カンジダ症は、免疫力が低下している方などは注意が必要です。
この記事では、食道カンジダ症の症状や原因、治療法、予防法まで詳しく解説していきます。

食べ物が飲み込みにくい|食道カンジダ症とは?

食道カンジダ症とは?

食道カンジダ症は、食道にカンジダ菌という真菌(カビ)が感染することで起こる炎症です。カンジダ菌は、口の中や消化管、皮膚など、私たちの体の様々な場所に潜んでいます。
通常は、体の免疫機能が正常に働いているため、カンジダ菌が増殖することはありません。しかし、免疫力が低下している場合や、ある種の薬剤の使用などにより、カンジダ菌が異常増殖し、食道に感染することがあります。
食道カンジダ症は、高齢者、HIV感染者、糖尿病などの基礎疾患を有する方、抗がん剤治療を受けている方など、免疫力が低下している方で特に注意が必要です。また、健康な方でも約2%程度の頻度でみられ、過度なストレスや疲れなどによる免疫低下などが要因となる場合もあります。

初期症状は軽いことが多く、自覚症状がない場合もあります。しかし、症状が進行すると、食べ物の飲み込みにくさや胸の痛みなどが現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

カンジダ菌とは?

カンジダ菌は、酵母様真菌と呼ばれるカビの一種で、私たちの口の中や消化管、皮膚などに潜んでいる菌です。
通常は、体の免疫機能が正常に働いているため、カンジダ菌が増殖することはありません。しかし、免疫力が低下している場合や、抗生物質の使用などにより、カンジダ菌が異常増殖し、食道に感染することがあります(日和見感染)。 カンジダ菌には、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)をはじめ、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)など、様々な種類があります。このうち、カンジダ・アルビカンスが食道カンジダ症の最も一般的な原因菌となります。

なぜ食道に感染するのか?

カンジダ菌は、健康な人の口の中や消化管などにも潜んでいる菌ですが、通常は体の免疫機能によって増殖が抑制されています。
しかし、以下の様な原因で免疫力が低下すると、カンジダ菌が異常増殖し、食道に感染することがあります。

免疫力の低下
  • 高齢者
  • HIV感染者
  • 糖尿病患者
  • がん患者
  • 抗がん剤治療や免疫抑制剤治療を受けている方
  • ステロイドの使用
  • H2-blockerやPPI/P-CABなどの酸分泌抑制薬の使用
  • 栄養状態の悪い方
  • 抗生物質の長期使用
    抗生物質は、細菌を殺すための薬ですが、腸内細菌のバランスを崩し、カンジダ菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。
口腔内の不衛生

口腔内の衛生状態が悪いと、カンジダ菌が増殖しやすくなります。

食道の運動機能の低下

食道の運動機能が低下すると、食道内の食べ物が停滞しやすくなり、カンジダ菌が増殖しやすくなります。

食道カンジダ症の症状

食道カンジダ症の症状は、初期段階では自覚症状がない場合も多いですが、進行すると下記のような症状が現れます。

  • 嚥下困難(えんげこんなん)
    食べ物が飲み込みにくい、つかえる感じがする
  • 胸やけ
    食後に胸が焼けるような感覚がある
  • 食道痛
    食道に痛みを感じ、食事が辛い
  • 吐き気
    食欲不振を伴う吐き気
  • 嘔吐
    食べたものを吐いてしまう

これらの症状は、逆流性食道炎など他の食道疾患と似ている場合があり、自己判断で放置すると症状が悪化してしまう可能性があります。
もし、上記のような症状が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。

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食道カンジダ症の検査と診断

食道カンジダ症の検査と診断は、主に以下の方法で行われます。

  • 胃カメラ検査(胃内視鏡検査)
    食道カンジダ症の診断に最も有効な方法です。口または鼻から細い管状のスコープを挿入し、食道の粘膜を直接観察します。食道カンジダ症の場合、食道粘膜に白い苔状のものや、潰瘍などがみられます。
  • 生検検査
    内視鏡検査で異常が見つかった場合、組織を採取し、顕微鏡でカンジダ菌の有無を調べることで確定診断をつけることが可能です。
  • 培養検査
    採取した組織を培養し、カンジダ菌の有無や種類を特定します。

食道カンジダ症の治療法

  • 抗真菌薬
    カンジダ菌の増殖を抑える薬です。飲み薬、点滴、うがい薬など、様々な種類があります。
    症状や重症度に合わせて、薬の種類や投与方法、期間を決定します。
  • 生活習慣の改善
    免疫力を高めるために、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
    口腔内の衛生状態を保つために、歯磨きやうがいをしっかり行いましょう。

多くの場合、抗真菌薬の内服により症状は改善されます。しかし、重症化すると入院治療が必要になるケースもあります。

食道カンジダ症の予防法

食道カンジダ症は、免疫力の低下が主な原因となるため、日頃から免疫力を高める生活習慣を心がけることが重要です。

  • バランスの取れた食事
    栄養バランスの取れた食事を摂り、免疫力を高めましょう。特に、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
  • 十分な睡眠
    睡眠不足は免疫力を低下させるため、質の高い睡眠を十分に確保しましょう。
  • 適度な運動
    適度な運動は、免疫力向上に効果的です。無理のない範囲で、ウォーキングや軽い運動などを行いましょう。
  • ストレスをためない
    ストレスは免疫力を低下させるため、ストレスをためないようにリラックスできる時間を作るなど工夫しましょう。
  • 口腔内の清潔
    口腔内を清潔に保つことも大切です。食後の歯磨きやうがいを習慣化し、カンジダ菌の増殖を抑えましょう。
  • 定期的な健康診断
    定期的な健康診断を受け、早期に異常を発見することが重要です。

よくある質問

Q. 食道カンジダ症は、人にうつりますか?
A. 食道カンジダ症は、基本的には人から人への感染は起こりません。カンジダは体内に常在している真菌の一種であり、免疫力が低下しているときに感染が進行することがありますが、一般的な接触や日常的な生活では感染しないため、他の人にうつることは心配する必要はありません。
 
Q. 食道カンジダ症と診断されたら、食事はどうすればよいですか?
A. 症状が強い場合は、以下のような食事の工夫が推奨されます。

  • 柔らかい食べ物を選ぶ
    食道に痛みや不快感がある場合は、硬い食べ物や刺激的な食事を避け、柔らかくて喉越しの良い食べ物を摂取すると良いでしょう。
  • 糖分を控える
    カンジダは糖分を好んで増殖するため、砂糖や精製された炭水化物(白米、白パン、パスタなど)は控えめにし、野菜や全粒粉など低GIの食材を選ぶことが勧められます。
  • 発酵食品を避ける
    発酵食品やアルコールはカンジダの増殖を促進する可能性があるため、治療中はこれらの摂取を避けると良いでしょう。
  • 水分補給を忘れずに
    体調を整えるために、十分な水分補給が必要です。特に喉が痛い場合でも、こまめに水を飲むよう心掛けてください。
  • ビタミンやミネラルを摂取する
    免疫力を高めるために、ビタミンCやビタミンB群、亜鉛などが豊富な食材を意識的に摂ることが助けになります。例えば、果物や野菜、ナッツ類、種子などが良い選択です。
  • カテキンの豊富な緑茶などを飲む
    カテキンを摂取することは免疫力をサポートしたり、抗菌効果を補完する可能性があるため、病気の予防や回復を助ける効果が期待できます。

Q. 食道カンジダ症は、再発しますか?
A. 食道カンジダ症は、再発しやすい病気です。特に、免疫力が低下している方は注意が必要です。再発を予防するためには、医師の指示に従って治療を継続し、日頃から免疫力を高める生活習慣を心がけることが大切です。
 
Q. 食道カンジダ症を放置すると、どうなりますか?
A. 食道カンジダ症を放置すると、症状が悪化する可能性があり、喉や食道に痛みや違和感が強くなり、飲み込む際に痛みを感じることが増えます。また、食道カンジダ症が長期間放置されると、食道が狭くなる(食道狭窄)ことがあり、これによってさらに食事や水分の摂取が難しくなり、栄養不足や脱水症状、体重減少を引き起こすこともあります。食道カンジダ症が疑われる場合、早期に医師の診断を受け、適切な治療を受けることが重要です。

まとめ

この記事では、食道カンジダ症について解説しました。
食道カンジダ症は、食道にカンジダ菌が感染することで起こる病気です。免疫力が低下している方などは、特に注意が必要です。
初期症状は軽いことが多く、自覚症状がない場合もありますが、進行すると、食べ物の飲み込みにくさや胸の痛みなどが現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。

気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。日頃から、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、免疫力を高めることが大切です。

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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