2025年6月02日
「痔があると検便の結果に影響するのでは?」と不安に思ったことはありませんか?特に便潜血検査では、少量の血液でも陽性と判定されるため、痔による出血が結果に影響することがあります。しかし、痔があるからといって検査を避けるのはおすすめできません。
この記事では、痔と検便(便潜血検査)の関係、受ける際の注意点、陽性が出た場合の対応まで、医師が詳しく解説します。

痔があっても検便(便潜血検査)は受けていい?
痔がある方でも、検便(便潜血検査)を受けることは可能です。実際、多くの方が痔を持ちながらも検査を受けており、大腸がんやポリープの発見に役立っています。便潜血検査は、消化管からの微細な出血を検出するためのスクリーニング検査で、特に自覚症状がない段階での大腸がんの発見に有効です。
ただし、痔による出血が多いタイミングで検査を受けると、便潜血反応が陽性となる可能性が高くなり、結果の解釈が難しくなることがあります。したがって、検査を受ける際には、痔の出血がないか、または落ち着いているタイミングを選ぶことが望ましいといえます。
痔による出血は検便の結果に影響するのか?

痔による出血は、便潜血検査の結果に影響を与える可能性があります。
便潜血検査では、便に微量でも血液が混じっていると「陽性」と判定されるため、肛門近くの痔からの出血も検出されてしまいます。
特に、排便時に出血があった直後に採便した場合、検査結果が陽性となる確率が高まります。これは「偽陽性」と呼ばれ、本来なら異常がないにもかかわらず陽性と判定されてしまうケースです。
そのため、痔による出血が疑われる場合には、採便のタイミングを慎重に選ぶ必要があります。出血が続いている時期は避け、出血が収まってから採便することで、より正確な検査結果が得られます。痔の出血との区別がつかないため、出血があるときの採便には注意が必要です。
便潜血検査の目的は、大腸ポリープやがんなどの腫瘍性疾患を持っている高リスク群を簡便に拾い上げることです。痔があるからといって、「どうせ痔からの出血だろう」と自己判断をしてしまい精密検査を受けないと、せっかく早期の大腸がんを見つけられたかもしれないチャンスをみすみす逃すことになりかねません。適切に採便を行い、結果が陽性となった場合には、必ず精密検査(大腸カメラ検査)を受けるようにしましょう。
便潜血陽性=大腸がんではない?
便潜血検査で「陽性」と結果が出たとしても、それが必ずしも大腸がんを意味するわけではありません。
痔や裂肛(切れ痔)などの良性の病気による出血でも陽性反応が出ることがあります。一方で、便潜血が陽性になった方の約50%に、大腸ポリープや大腸がんなどの腫瘍性疾患が見つかることもわかっています。重要なのは、便潜血陽性の「原因」が、これらの腫瘍によるものかそうでないかをしっかりと調べることです。
痔による出血は多くが排便の最後に鮮血が見られ、便の表面やトイレットペーパーに付着するのが特徴です。一方、大腸がんなどによる出血は便の内部に混ざっていることが多く、色も暗赤色〜黒に近いことがあります。
しかし、直腸癌など肛門に近い腫瘍性病変では、痔と同様に鮮血が見られる場合もあり、肉眼での判断は不確実であるため、便潜血陽性の結果が出た場合は、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)などで原因をしっかり調べることが必須です。痔の既往がある場合でも、自己判断せずに必ず医療機関を受診し適切な精密検査を受け、病気の早期発見を目指しましょう。
痔があるときの検便の正しいタイミングと注意点
痔がある場合でも、検便(便潜血検査)を正しく行えば、信頼性の高い結果を得ることが可能です。大切なのは、出血がないか、または最小限に抑えられているタイミングで採便することです。
以下の点に注意して採便を行いましょう。
出血がない日を選ぶ
排便時に出血があった日は避け、明らかに目に見える痔の出血がない日に採便を行います。
便の中心から採取する
便の表面には痔の出血が付着しやすいため、肉眼的に明らかに出血の付着のある部位は避け、それ以外の部位から満遍なく採取します。反対に、便のごく一部からのみ採取すると、両辺の検出率の低下にもつながり「偽陰性」と呼ばれる、本当は病気があるのに、誤って陰性という結果が出てしまうことにもつながりかねませんので、正しい採便方法を徹底することが重要です。
複数回採便する
便潜血検査は1回の検査では見落としがあることも。2日分の便を採取することで精度が上がります。
痔の治療中なら医師に相談
出血が頻繁にあるようなら、検査時期を変更するなど医師に相談しましょう。
正確な結果を得るためには、これらのポイントを守ることが非常に重要です。
検便前に出血があった場合はどうするべき?
検便(便潜血検査)の前に出血があった場合、その日の採便は避けた方が無難です。
痔からの出血が混ざることで、検査結果が「偽陽性」となり、本来は異常がないにもかかわらず陽性と判定されてしまう可能性があるためです。
出血が一時的である場合は、数日様子を見て、出血が治まってから再度採便することをおすすめします。便潜血検査は連続した2日間の便を採取する形式が多いため、1日目に出血があった場合は、その日は避け、別の日に採取し直しましょう。
また、出血が頻繁に続いている、もしくは出血の原因がはっきりしない場合には、そもそも痔以外の重大な疾患が隠れている場合もありますから、無理に便潜血検査を行わず、早めに医師の診察を受けることが大切です。誤った判断で精密検査を先送りにしてしまうと、診断の遅れにつながる可能性もあるため注意が必要です。
検便で陽性が出た場合の次の検査
便潜血検査で陽性となった場合、最も重要なのは「原因を特定するための精密検査」を受けることです。
受けるべき精密検査は「大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)」1択です。この検査では、大腸の粘膜を直接観察できるため、ポリープやがん、炎症、そして痔などの出血源を明確に確認することができます。
「痔があるから大丈夫」と自己判断してしまうと、見逃してはならない疾患が発見されないまま進行してしまう恐れがあります。特に、大腸がんは初期には自覚症状がほとんどないため、便潜血陽性が唯一のサインであることも少なくありません。
また、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)では、大腸ポリープが見つかれば、その場で切除することも可能です。便潜血陽性の結果が出たら、早めに消化器内視鏡専門の医療機関を受診し、内視鏡検査を受けることが非常に大切です。
まとめ
痔がある方でも、便潜血検査は受けるべき重要なスクリーニング検査です。ただし、痔による出血が検査結果に影響を与えることがあるため、採便のタイミングや方法には注意が必要です。出血がない日を選んで採便することや、肉眼的に明らかに出血の付着のある部位は避け、それ以外の部位から満遍なく採取することがポイントです。
便潜血検査で陽性となった場合でも、それがすぐに大腸がんを意味するわけではなく、痔などの良性疾患が原因の可能性もありますが、反対に、約半数の方で大腸ポリープや大腸がんなどの腫瘍性疾患が見つかります。正確な診断のためには大腸カメラ検査による精密検査が必要です。
自己判断せず、医師の診察を受けることで、無駄な不安や不必要な検査を避けることができます。正しい知識を持って検査を受けることで、大腸がんなどの重篤な病気の早期発見にもつながります。当院では、一般的に痛い・苦しい・大変そうといったイメージのある大腸カメラを可能な限り負担を少なく、検査できるよう様々な工夫を重ねています。遠方からのご来院も多数あり、検査に不安がある方はぜひいちどお気軽にご相談ください。