2025年3月09日
「胃カメラは二度とやりたくない…」。そう思われた経験はありませんか?多くの患者様が、胃カメラ検査に対して苦痛や不快感を抱えているのが現状です。
実際、当院にも「以前、他の病院で胃カメラ検査を受けたけれど、とても辛かった」「あまりの苦しさに涙が止まらなかった」と不安そうに来院される患者様がいらっしゃいます。
しかし、胃カメラ検査の痛みや不快感は、適切な工夫や技術を用いることで最小限に抑えることが可能です。胃カメラ検査は、早期の胃がん発見に非常に有効な手段です。早期発見できれば、内視鏡治療で完治できる可能性も高まります。
この記事では、胃カメラ検査が「二度とやりたくない」と思われてしまう原因や、どのような方法で苦痛を軽減できるのか、そして検査を受ける際の心構えについて詳しく解説いたします。

胃カメラは辛い、もう二度とやりたくないと言われる原因
胃カメラ検査が「もう二度とやりたくない」と思われてしまう原因は、主に以下の3つが挙げられます。
- 嘔吐反射(えずき)
検査時にカメラが喉を通る際、どうしても「オエッ」となる嘔吐反射が起こりやすくなります。この嘔吐反射は、人によっては非常に強い不快感を伴い、検査に対する恐怖心を植え付けてしまうことがあります。 - 苦痛
胃カメラ検査では、口または鼻からスコープを挿入するため、どうしても喉や食道に異物感や圧迫感を感じてしまいます。また、検査中に空気を胃に送り込むことで、お腹が張るような不快感を感じる方もいらっしゃいます。 - 精神的な負担
検査を受けること自体に不安や緊張を感じてしまい、それが苦痛を増強させてしまうことがあります。特に、過去に胃カメラ検査で辛い経験をしたことがある方は、その時の記憶がフラッシュバックして、強い拒否反応を示してしまう場合もあります。
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胃カメラの苦痛を和らげる方法
胃カメラ検査に伴う苦痛を軽減するための主な方法をご紹介します。
鎮静剤・鎮痛剤の使用
検査前に鎮静剤・鎮痛剤を注射することで、嘔吐反射を抑え、ウトウトとリラックスした状態で検査を受けることができます。「別の病院で鎮静剤を使用したが辛かった」というお声を聞くこともありますが、鎮静剤にも様々な種類がありますので、個人個人に合わせた鎮静剤の種類や量を適切に調整することで、ほとんどの方は検査中の記憶がなく、楽に検査を終えられます。
使用する薬剤は医療機関ごとに異なる場合があるため、心配な方は事前の診察時に確認するとよいでしょう。
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細径内視鏡
通常の内視鏡よりも細い内視鏡を使用する方法です。挿入時の異物感が軽減され、より楽に検査を受けることができます。当院では「EG-840TP」という機種を採用しております。従来の経口内視鏡と同等の高画質を保ちながら、太さも7.9mmと細く、患者様への負担の軽減も期待できる、まさに経口内視鏡と経鼻内視鏡のいいとこ取りをしたような機種です。鎮静剤と組み合わせることで、「鼻カメラよりも楽な口からのカメラ」を目指しています。
熟練した医師による検査
内視鏡検査は医師の技術によって、苦痛の度合いが大きく変わります。経験豊富な医師は、患者様の体格や状態に合わせて、嘔吐反射を起こしやすいポイントを避けるように内視鏡を細かく操作し、苦痛を最小限に抑えることができます。
医療機関の選び方
痛みを軽減するためには、設備が整った医療機関を選ぶことが重要です。内視鏡の機能としては、画像強調内視鏡(NBI・BLI/LCI)機能は病変の検出率向上には必須の機能と言えるでしょう。また、内視鏡検査の経験が豊富な医師がいる施設を選びましょう。
一概には言えませんが、がん専門病院や大学病院の内視鏡部門出身の先生は、症例経験数が豊富な場合が多いです。経験豊富な医師は、スコープの細かな操作により、痛みを最小限に抑えることができることに加え、病変の発見率も高いため、胃がんの予防効果も高まります。検査後の説明が明確かどうか、というのも重要なポイントです。
胃カメラ以外の選択肢はある?
胃の検査には、胃カメラ以外にも以下の選択肢があります。
胃部X線検査
バリウムを飲んで胃の形状や内部の凹凸をX線で撮影する検査です。胃カメラ検査が直接胃の内部を観察する検査であるのに対し、バリウム検査はバリウムを飲んだ後にレントゲンを使用して、病変を間接的に観察する方法です。
胃カメラのような嘔吐反射はない一方で、バリウム検査では、バリウムの味や、発泡剤による腹部膨満感、検査台で回転したりと、特有のつらさがあります。また、便秘や腸管穿孔などのバリウム検査特有の合併症が起こる場合があります。胃カメラに比べて病変の発見精度も低く、詳細な診断が難しいというデメリットもありますから、より楽に精度の高い検査を受けられる、鎮静剤(麻酔)を用いた胃カメラをおすすめしています。
ABC検診(胃がんリスク検診)
血液検査でピロリ菌感染の有無とペプシノゲン値を測定し、胃粘膜の萎縮度合いを調べる検査です。血液検査により簡易的に胃がんのリスクを評価することが目的で、企業検診などで取り入れられている場合があります。ピロリ菌感染が疑われた場合には、確定診断目的に胃カメラ検査が必要となります。また検診結果に応じた定期的な胃カメラ検診が推奨されます。
ABC検診は、胃カメラ検査に比べて身体的な負担は少ないですが、確定診断や詳細な観察はできません。胃がんの早期発見のためには、やはり胃カメラ検査が最も有効な手段と言えます。
胃カメラは本当に必要?
胃カメラ検査は、苦痛を伴うイメージの強い検査ではありますが、胃がんの早期発見・早期治療には必要不可欠な検査です。
部位別がん羅患数でも胃がんは毎年上位となっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | |
男性 | 前立腺がん 87,756人 | 大腸がん 82,809人 | 肺がん 81,080人 | 胃がん 75,128人 |
女性 | 乳がん 91,531人 | 大腸がん 64,915人 | 肺がん 39,679人 | 胃がん 34,551人 |
引用元:日本対がん協会
胃がんは、初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、症状が出てから検査を受けるのでは、すでに進行している可能性があります。
胃カメラ検査で早期に病変を発見できれば、高い確率で根治を望めますし、ピロリ菌の感染状況などに応じたリスク管理を行うことで、将来的な胃がんの発生リスクを低減することにもつながります。
特に、以下の項目に当てはまる方は、積極的に胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
- 40歳以上の方
- 胃がんの家族歴がある方
- 過去に胃の病気を患ったことがある方
- 家族にピロリ菌感染者がいる場合
- ご自身がピロリ菌に感染している、もしくは過去に感染していた場合
- 喫煙者
- 過度な飲酒をする方
- 塩分摂取量が多い方
- 野菜摂取量が少ない方
よくある質問
Q.胃カメラ検査はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
A.症状がない場合でも、40歳以上の方は1~2年に一度、胃カメラ検査を受けることをおすすめします。特に、胃がんのリスクが高い方は、医師と相談の上、検査頻度を決定しましょう。
Q.胃カメラ検査の前日は、食事を控える必要がありますか?
A.検査前日の夕食は、消化の良いものを軽めに済ませ、夜9時以降は絶食してください。水やお茶は飲んでいただいて構いません。
Q.胃カメラ検査の後、食事はいつからできますか?
A.検査後、喉の局所麻酔を用いた場合は~1時間程度で食事をとることができます。局所麻酔を用いない場合は、鎮静剤の効果が切れていれば検査直後から食事をとることが可能です。最初はお水などでむせ込みがないことを確認してから、消化の良いものを選んで食べていただくのが良いでしょう。
Q.妊娠中でも胃カメラ検査は受けられますか?
A.妊娠中は、胎児への影響を考慮して、基本的に胃カメラ検査はおすすめしません。ただし、母体の生命の危険がある場合など、緊急性の高い場合は、やむを得ず検査を行う場合があります。緊急対応が可能な高次医療機関で、医師と相談の上、適応を慎重に見極める必要があります。
Q.胃カメラ検査で、ポリープが見つかった場合はどうなりますか?
A.よくある質問のひとつですが、ポリープの種類によって対応が異なります。
基本的に、ポリープを切除する目的は癌の予防であり、大腸カメラ検査などでは将来的に癌化する可能性の高い腺腫や鋸歯状病変と呼ばれるポリープを切除します。しかし、胃ポリープの場合、大部分は癌化しない良性のポリープであるため、明らかに良性と判断されるポリープは通常、内視鏡で切除することはありません。
ただし、ポリープが悪性である可能性が疑われる場合には、その限りではなく、病理組織診断を行い、良性・悪性の診断を行います。病理組織学的診断結果に基づいて、その後の治療方針を決定します。ポリープの種類や状態によっては、経過観察を行ったり、必要に応じて切除や追加の検査を行うことがあります。
まとめ
この記事では、胃カメラ検査が「二度とやりたくない」と思われてしまう原因や、その対策について解説しました。
近年では、鎮静剤の使用など、苦痛を軽減するための様々な方法があります。また、経験豊富な医師による検査を受けることで、より安心して検査を受けることができます。
ご自身の健康を守るため、そして大切な家族のためにも、胃カメラ検査を検討してみてはいかがでしょうか。
当院では、患者様お一人おひとりのご要望に合わせた胃カメラ検査を行っております。検査に関する不安や疑問などございましたら、お気軽にご相談ください。