2026年2月04日
肛門のかゆみは日常生活に支障をきたす、とてもつらい症状です。デリケートな部位のため、なかなか人に相談できずに一人で悩んでいる方も少なくありません。痔が原因で肛門のかゆみが起こることがあります。また、清潔にしようと頑張りすぎること(洗いすぎ・拭きすぎ)が、かゆみを悪化させている場合もあります。
この記事では、消化器専門医が、痔によるかゆみの原因から正しいケア方法、受診の目安まで、わかりやすく解説いたします。

痔とかゆみの関係について
肛門のかゆみがあると「痔では?」と考える方は多いのですが、かゆみを引き起こす“痔”は多くはなく、肛門のかゆみの多くは「肛門そうよう症(肛門掻痒症)」とされています。
一方で、痔の代表である痔核(いぼ痔)にも、出血・脱出(肛門の外に出る)・腫れ・痛みに加えて、分泌物(粘液)などの症状がみられることがあり、これらが肛門周囲の皮膚を刺激してかゆみの原因になる場合があります。
つまり、
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痔でもかゆみが起こることはある
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しかし、かゆみの多くは痔そのものではなく、肛門掻痒症という別の病態による
という点が重要です。
ここで重要なのは、肛門掻痒症は“痔の一症状”ではなく、医学的に定義された別の病態だという点です。肛門掻痒症は、もともと目立った湿疹(原発疹)がないのにかゆみが生じ、掻く・こする・洗いすぎることで二次的に湿疹(続発疹)を作って悪循環に陥るのが特徴です。
したがって、かゆみが続く場合は「痔かどうか」だけでなく、肛門掻痒症、皮膚炎、感染症なども含めて原因を見極め、原因に合ったケアや治療を選ぶことが大切です。
痔でかゆみが起こる主な原因
痔によってかゆみが生じる仕組みは、痔の種類によって異なります。
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いぼ痔(痔核)によるかゆみ
いぼ痔が進行すると、痔核が肛門の外に飛び出す「脱出」が起こります。すると直腸からの粘液が肛門周囲に付着し、下着にこすれて皮膚が刺激を受けます。また、粘液によって肛門周囲が常に湿った状態になり、蒸れてかゆみが生じます。 -
切れ痔(裂肛)によるかゆみ
切れ痔は肛門の粘膜が裂けた状態です。傷が治りかけの時期や小さな傷の場合、痛みよりもかゆみを感じることがあります。傷口からの分泌物が肛門周囲に付着し、皮膚が刺激を受けてかゆみが生じます。 -
あな痔(痔瘻)によるかゆみ
あな痔は肛門周囲に膿がたまり、皮膚を破って外に排出される状態です。膿が継続的に出ることで下着が汚れ、肛門周囲の皮膚が刺激を受けてかゆみが現れます。自然に治ることが少なく、早めの受診が必要です。
痔以外で考えられる「肛門のかゆみ」の原因
肛門のかゆみは、痔以外にもさまざまな原因で起こります。
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肛門そうよう症
肛門のかゆみの中で最も多いのが「肛門そうよう症」です。これは痔のような明らかな病変がないにもかかわらず、肛門周囲にかゆみが生じる状態を指します。洗いすぎや拭きすぎ、温水洗浄便座の使いすぎなどで皮膚のバリア機能が低下し、慢性的な湿疹を生じかゆみを感じます。 -
皮膚炎・接触性皮膚炎
石鹸や洗剤、下着の素材、生理用品などが肌に合わない場合、かぶれの原因になります。また、おむつを長時間使用することで蒸れが生じ、かゆみが起こることもあります。 -
感染症
カンジダや白癬などの真菌感染、細菌感染によってもかゆみが生じます。また、ぎょう虫症では夜間に肛門周囲にかゆみが強く現れるのが特徴です。 -
その他の疾患
糖尿病や肝臓病、腎臓病などの全身疾患でもかゆみを感じることがあります。まれに肛門のがんが原因となる場合もあります。
痔のかゆみは自分で治せる?セルフケアの基本
痔によるかゆみは、日常生活の工夫やセルフケアで改善できることがあります。
ここでは、自宅でできる基本的な対処法をご紹介します。
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肛門を清潔に保つ
排便後は肛門周囲を清潔に保つことが大切です。ただし、強く拭きすぎたり、温水洗浄便座を長時間使用したりすると、皮膚のバリア機能が低下してかゆみが悪化します。やわらかいトイレットペーパーで優しく押さえるように拭き、温水洗浄便座は短時間の使用にとどめましょう。 -
血行を改善する
血行不良は痔の大きな原因です。38度から40度程度のぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、肛門周囲を温めることで血行が促進されます。長時間座りっぱなしや立ちっぱなしの方は、休憩時間に軽く歩いたり、ストレッチをしたりして血流を改善しましょう。 -
刺激物を避ける
肛門周囲は皮膚が薄くデリケートです。刺激の強い石鹸や洗剤の使用を控え、通気性の良い綿素材の下着を選びましょう。また、アルコールや香辛料などの刺激物の過剰摂取も控えることが望ましいです。 -
市販薬の使用
かゆみを抑える成分が含まれた痔の軟膏や坐剤が市販されています。ただし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
こんな症状は要注意|病院受診を考える目安
痔によるかゆみの中には、自己判断で様子を見ていると悪化するケースもあります。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
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かゆみが1週間以上続く
一時的な皮膚刺激であれば自然に改善することもありますが、1週間以上続く場合は、肛門掻痒症、皮膚炎、感染症などが背景にある可能性があります。原因に応じた治療が必要です。 -
出血やしこり、腫れを伴う
かゆみに加えて出血や腫れ、しこりがある場合は、いぼ痔(痔核)や切れ痔(裂肛)、まれに腫瘍性病変などが疑われます。肛門科での診察が必要です。 -
分泌物やただれがある
粘液や膿が出る、皮膚がただれている場合は、痔瘻(あな痔)や細菌・真菌感染、湿疹などの可能性があります。放置すると悪化するため、早めの受診が望まれます。 -
夜間にかゆみが強い
夜間に特にかゆみが強くなる場合は、ぎょう虫症などの寄生虫感染の可能性もありますが、これは主に小児に多く、成人では比較的まれです。成人の場合は、肛門掻痒症や皮膚炎などで夜間に症状が強くなることも多く、症状が続く場合は原因の鑑別が必要です。 -
市販薬で改善しない、悪化する
市販の痔の薬で改善しない場合、原因が痔ではない可能性があります。誤った自己治療により皮膚炎が悪化していることもあります。 -
かゆみ以外の症状(痛み・発熱・体重減少など)を伴う
全身疾患や感染症、まれに悪性疾患が関係している可能性もあるため、早めの医療機関受診が必要です。
肛門のかゆみが「かゆみだけ」で、出血やしこり、分泌物などの肛門症状を伴わない場合は、痔よりも 肛門掻痒症や皮膚炎などの皮膚トラブルが原因であることが多く、皮膚科の受診が適切な場合もあります。
一方で、出血・しこり・腫れ・分泌物・強い痛みを伴う場合は、痔やその他の肛門疾患の可能性があるため、肛門科・消化器内科の受診をおすすめします。
日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックについて

当クリニックは、消化器疾患の診断と内科的治療を専門としています。肛門疾患についても、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)などの内科的治療(薬物療法・生活指導)には対応しています。
一方で、痔瘻(あな痔)など外科的な手術が必要と判断される場合には、当院での治療は行わず、適切な高次医療機関(専門病院)をご紹介しています。患者さんの病状に応じて、最も適切な医療機関で治療を受けていただけるよう連携を行っています。
当クリニックの特徴
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消化器専門医による診療
日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医が、丁寧に診察いたします。 -
土曜日・日曜日も診療
平日お忙しい方も受診しやすい体制を整えています。
当院では、痔などの肛門疾患については内科的な治療を中心に診療を行っています。また、ご自身では痔の症状だと思っても、他の悪性疾患等が隠れている場合もありますので、症状によっては別途内視鏡検査等も必要な場合があり、対応可能です。
外科的な手術が必要な場合には、専門的な治療が可能な医療機関をご紹介いたしますので、まずはご相談ください。
こんな症状があればご相談ください
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肛門のかゆみが続く
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排便時に出血がある
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肛門周囲に腫れやしこりがある
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肛門から粘液や膿が出る
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市販薬を使っても症状が改善しない
お腹の症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
詳しくは公式サイトをご覧ください。まとめ
肛門のかゆみは、痔が原因となっていることもありますが、すべてのかゆみが痔によるものではありません。いぼ痔、切れ痔、あな痔などの痔疾患では、粘液や分泌物、膿などが肛門周囲の皮膚を刺激してかゆみを引き起こします。
一方で、肛門そうよう症や皮膚炎、感染症などが原因でかゆみが生じることも多く、原因によって対処法が異なります。洗いすぎや拭きすぎを避け、肛門を清潔に保ちながら刺激を減らすことが大切です。また、血行を改善するために温浴を行ったり、通気性の良い下着を選んだりするなど、日常生活の工夫も有効です。
ただし、かゆみが1週間以上続く場合や、出血、しこり、分泌物を伴う場合、市販薬で改善しない場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることで、症状の改善と悪化の防止につながります。
肛門のかゆみでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
軽度のかゆみであれば、清潔を保ち刺激を避けることで自然に改善することもあります。ただし、1週間以上続く場合や、出血や腫れを伴う場合は、痔が進行している可能性があるため、早めに受診することをおすすめします。
温水洗浄便座自体が悪いわけではありませんが、長時間使用したり、水圧を強くしたりすると、皮膚のバリア機能が低下してかゆみの原因になります。使用する場合は、弱めの水圧で短時間にとどめましょう。
市販薬を1週間程度使用しても症状が改善しない場合は、使用を中止して医療機関を受診してください。原因が痔ではない可能性や、より専門的な治療が必要な場合があります。
掻くことで一時的にかゆみは和らぎますが、皮膚に傷がつき、症状が悪化する原因になります。かゆみが強い場合は、冷やしたタオルで優しく押さえるか、市販のかゆみ止めを使用し、掻かないように注意しましょう。
かゆみの原因が痔であれば、手術により改善する可能性があります。ただし、かゆみの原因が肛門そうよう症や皮膚炎である場合、手術をしてもかゆみは治りません。まずは原因を正確に診断することが重要です。





