下腹部を押すと痛い!?考えられる病気・受診の目安を医師が解説

下腹部を押すと痛い!考えられる病気・受診の目安を医師が解説

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2025年6月23日

下腹部を押すとチクチク、ズキズキと痛む…そんな経験はありませんか?「一時的なものだろう」と放っておくと、思わぬ病気が隠れていることもあります。虫垂炎や憩室炎・便秘などの消化器由来の疾患から、泌尿器科疾患・女性特有の婦人科疾患など、原因は多岐にわたります。
この記事では、下腹部に押さえたときの痛みが生じる原因や、場所によって考えられる病気、医療機関を受診すべきタイミング、自宅でできる対処法をわかりやすく解説します。

下腹部を押すと痛い!?考えられる病気・受診の目安を医師が解説

下腹部を押すと痛い

下腹部を押したときに痛みを感じる状態は「圧痛」と呼ばれ、体の異常を知らせるサインのひとつです。この痛みは、消化器系・泌尿器系・婦人科系など、さまざまな臓器や組織の異常で起こります。

多くの場合、軽い腹痛は一時的な便秘やガスの貯留などが原因で自然に治まりますが、押したときの痛みが強かったり、持続したり、発熱や吐き気などの全身症状を伴う場合は注意が必要です。

特に、右下腹部の強い圧痛は「虫垂炎(盲腸)」が疑われ、放置すると炎症が進行するため注意が必要です。また、女性では卵巣出血や子宮外妊娠などが痛みの原因になることも。
「ただの腹痛」と軽視せず、痛みの性質や他の症状にも注目し、適切な判断をすることが大切です。

痛みの場所でわかる原因(右下・左下・中央)

下腹部の痛みは、左右や中央など、痛みの部位によって考えられる原因が異なります。

右下腹部の痛み

  • 虫垂炎(盲腸)、盲腸がん、大腸憩室炎、感染性腸炎、過敏性腸症候群、子宮外妊娠、卵巣出血、卵巣捻転(卵巣嚢腫などのねじれ)など

鋭い痛みや圧痛が続く場合は、早急な受診が必要です

左下腹部の痛み

  • 虚血性腸炎、大腸憩室炎、便秘、大腸がん、子宮外妊娠、卵巣出血など

便通異常や慢性的な痛みがあることが多いです

下腹部中央の痛み

  • 膀胱炎、子宮筋腫、排卵痛など

排尿時の違和感や周期的な痛みが見られる場合があります

痛みの位置と併発する症状(発熱・吐き気・出血など)を照らし合わせて、早めに医療機関を受診することが重要です。特に急激に悪化する痛みは注意が必要です。

下腹部の痛みで考えられる主な病気

消化器系の病気

  • 虫垂炎(盲腸)
    右下腹部に強い痛み。進行すると発熱・嘔吐を伴うこともあり、緊急手術が必要となる場合があります。発症初期にはみぞおちの痛みなど部位が異なる場合もありますが、時間経過とともに右下腹部に痛みが移動してくる場合は注意が必要です。
  • 大腸憩室炎
    主に右下腹部〜側腹部、または左下腹部が痛みます。発熱や下痢を伴うこともあり、抗菌薬による治療が必要となる場合もあります。
  • 便秘
    ガスや便が溜まることで、下腹部に鈍い痛みや不快感が生じます。特に便が硬い場合などは、蠕動痛と呼ばれる腸管の動きに伴う痛みが強く出る場合もあります。軽症の便秘の場合は生活習慣の改善で軽快する場合もありますが、慢性便秘がある場合には、適切な治療介入が必要です。
  • 腸閉塞
    強い腹痛、吐き気、排便・排ガスの停止などを伴う場合は緊急性が高く、速やかに受診する必要があります。

泌尿器系の病気

  • 膀胱炎
    女性に多く、排尿時の痛み・頻尿・残尿感とともに下腹部の鈍痛を伴います。抗菌薬による治療が基本です。
  • 尿管結石
    突然の激しい痛みが特徴で、背中から下腹部、太ももの付け根にかけて放散します。血尿を伴うこともあります。
  • 前立腺炎(男性)
    会陰部や下腹部の痛み、排尿困難や頻尿がみられます。急性の場合は発熱を伴い、治療には抗菌薬が用いられます。
  • 膀胱破裂
    非常に稀な疾患ではありますが尿をためる袋である膀胱に穴があく状態を指し、下腹部の激しい痛みの原因となります。
  • 臍炎
    尿膜管(にょうまくかん)とは、胎児期に膀胱とへそ(臍)をつなぐ管のことです。ふつうは出生までにこの管は閉じてしまいますが、まれに一部または全部が閉じずに残ってしまうことがあります。これを尿膜管遺残と呼びます。臍に近い側の尿膜管が開いていると、細菌感染が起こり臍炎の原因となります。

婦人科系の病気

  • 排卵痛(中間期痛)
    月経周期の中間にみられ、片側の下腹部にチクチクした痛みを感じます。数時間〜数日で自然に治まるのが特徴です。
  • 子宮内膜症
    子宮以外の部位に子宮内膜が発生・増殖する病気で、月経時や性交時、排便時などに強い痛みを伴います。進行すると不妊の原因になることもあります。
  • 卵巣出血・卵巣嚢腫の破裂
    急激な腹痛や出血を引き起こすことがあり、緊急処置が必要になる場合もあります。
  • 子宮外妊娠(異所性妊娠)
    子宮外妊娠とは、受精卵が本来着床すべき子宮内ではなく、卵管や卵巣、腹腔などの子宮以外の場所に着床してしまう状態です。特に卵管妊娠が多くを占め、下腹部の痛みの原因となります。
  • 卵巣捻転
    卵巣がねじれて血流が悪くなる病気です。卵巣にできた嚢腫などが原因となって、卵巣が回転してしまうことがあります。卵巣の血流が途絶えると、卵巣が壊死(壊れてしまう)することもあるため、早急な手術が必要です。特に突然の激しい腹痛がある女性は、すぐに医療機関へ。

その他の病気

下腹部の痛みは、消化器や泌尿器、婦人科系以外にも、以下のような原因で起こることがあります。

  • 鼠径ヘルニア
    腸の一部が腹壁から飛び出してしまう病気で、下腹部や足の付け根にふくらみや違和感、痛みを感じます。手術が必要なケースもあります。
  • 筋肉痛・筋膜性疼痛症候群
    腹筋の過度な使用やストレスによって、腹部の筋肉に痛みが生じることがあります。押すとピンポイントで痛みが強まるのが特徴です。

受診すべき症状

下腹部の痛みがある場合、以下のような症状を伴うときは、速やかに医療機関を受診する必要があります。

  • 発熱や悪寒を伴う
  • 吐き気・嘔吐がある
  • 排尿時の痛みや血尿がある
  • 下痢・便秘などの排便異常が続く
  • 性交痛や不正出血がある(女性)
  • 痛みがどんどん強くなっていく
  • 痛みが24時間以上続く
  • 触ると強い圧痛がある、腹部が張っている

これらの症状がある場合、虫垂炎や憩室炎、尿路感染症、婦人科系の病気など、治療を必要とする疾患が背景にある可能性があります。特に、急激に悪化する痛みや全身状態の悪化を伴う場合は緊急性が高く、放置すると症状が進行してしまいます。
自己判断せず、迷った場合でも一度医師の診察を受けることをおすすめします。

自宅でできる対処法と注意点

軽度の下腹部痛で、明らかな発熱や嘔吐、出血がない場合には、以下のような自宅での対処が役立つこともあります。
ただし、「少し様子を見よう」が重症化につながることもあるため、自己判断は慎重に行いましょう。

【自宅でできる対処法】

  • 安静にし、無理な動きを避ける
  • 腹部を温めて血流を促す(湯たんぽやカイロなど)
  • 消化の良い食事を心がける
  • 水分をしっかり補給する
  • 排便を促すために適度な水分・食物繊維を摂取する

【注意点】

  • 鎮痛剤の自己判断での乱用は控える(症状が隠れてしまうことがあります)
  • 痛みが強くなったり、長引いたりする場合は必ず受診する
  • 下腹部の張り、膨満感、吐き気などがあればすぐに医師の判断を仰ぐ

まとめ

下腹部を押したときの痛みは、体からの重要なサインです。一時的な便秘や排卵痛など軽度の症状であることもあれば、虫垂炎や憩室炎、膀胱炎、婦人科系の疾患など治療が必要な病気が隠れていることもあります。

痛みの位置や性質、伴う症状(発熱・嘔吐・排尿異常など)をよく観察し、「いつもと違う」と感じたら、無理に我慢せず早めに医療機関を受診しましょう。特に急激に悪化する痛みや、痛みが長引くケースでは放置は禁物です。

当院では、消化器内科・内視鏡専門医として、下腹部の痛みに対して的確な診断と治療を行っております。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q.下腹部を押すと痛い場合、何科を受診すれば良いですか?
A.まずは消化器内科や内科を受診してください。女性で婦人科系の可能性がある場合は、婦人科への受診も検討されます。

Q.女性の場合、下腹部を押すと痛いのはどんな原因が考えられますか?
A.女性の場合、以下のような原因が考えられます。

  • 排卵痛や月経痛
  • 子宮内膜症や子宮筋腫
  • 卵巣嚢腫・卵巣茎捻転
  • 膀胱炎や尿路感染症
  • 消化器疾患(便秘、過敏性腸症候群など)

Q.緊急性がある下腹部の痛みはどんな症状ですか?
A.以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 強い痛みが突然現れる
  • 発熱・吐き気・嘔吐を伴う
  • お腹が張って動けない
  • 血便が出る
  • 意識がもうろうとする、冷や汗が出る

Q.ストレスが下腹部の痛みに影響を与える可能性はありますか?
A.はい、あります。過敏性腸症候群(IBS)のように、ストレスが腸の働きに影響し、下腹部の痛みや不快感を引き起こすことがあります。ストレス対策も重要なケアの一つです。

Q.下腹部の痛が強い時、受診のタイミングはいつですか
A.痛みが数日以上続く場合や、日常生活に支障がある場合は早めの受診が推奨されます。症状が突然強くなったり、発熱・嘔吐・血便を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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