2025年4月29日
「胃が締め付けられるような痛み」を経験したことはありませんか?このような痛みは、一時的なストレスから命に関わる病気まで、さまざまな原因で起こる可能性があります。痛みの感じ方や持続時間によって、注意すべきサインが隠れていることもあります。
この記事では、胃の締め付けられるような痛みの正体や考えられる病気、対処法について、消化器内科専門クリニックの視点からわかりやすく解説します。

胃が締め付けられるような痛みとは?
「胃が締め付けられるような痛み」とは、胃のあたりに強い圧迫感や重苦しさ、ねじれるような不快感を感じる症状です。多くの場合、みぞおち周辺に違和感があり、痛みの程度も軽度から激痛まで様々です。人によっては「ズキズキ」「ギューッと締め付けられる」「重だるい」といった表現をすることもあります。
このような痛みは、一時的な胃の不調だけでなく、消化器の病気や心臓、ストレスなどが原因で起こることがあります。特に、急に強い痛みが出た場合や、繰り返し症状が現れる場合は、注意が必要です。放置すると症状が悪化し、深刻な病気に繋がる恐れもあるため、早期の原因把握と適切な対処が大切です。
考えられる主な原因
ストレスや自律神経の乱れによる胃の痛み
現代社会において、ストレスは胃の不調を引き起こす大きな要因のひとつです。強いストレスや不安を感じると、自律神経が乱れ、胃の働きを調整するバランスが崩れてしまいます。その結果、胃酸の分泌が過剰になったり、胃の運動が不規則になったりして、「締め付けられるような痛み」が生じることがあります。
また、ストレスによる胃の痛みは、検査をしても明確な異常が見つからないことが多いのが特徴です。これを「機能性ディスペプシア」と呼び、慢性的な胃の不快感や痛みが続くことがあります。症状が軽いうちは生活習慣の改善や休息で落ち着くこともありますが、長引く場合は内科や消化器内科の受診が必要です。
胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎などの消化器疾患
胃が締め付けられるような痛みの原因として、胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎といった消化器疾患も疑われます。これらは、胃酸やピロリ菌、薬剤、ストレスなどによって胃の粘膜が傷つくことで起こります。
特に胃潰瘍では、空腹時や夜間に強い痛みを感じることが多く、痛みが慢性的に続く傾向があります。また、逆流性食道炎では、胃酸が食道へ逆流し、胸焼けや喉の違和感を伴うこともあります。
こうした消化器疾患は、放置すると出血や穿孔といった重大な合併症を引き起こすリスクがあるため、早めの内視鏡検査と適切な治療が重要です。当院では、苦痛の少ない内視鏡検査を行っておりますので、不安な症状があればご相談ください。
心筋梗塞・狭心症など、心臓由来の痛みとの違い
胃の痛みと似た症状を引き起こす病気の中には、心臓に原因があるケースもあります。特に狭心症や心筋梗塞といった心疾患では、みぞおち周辺に圧迫感や締め付けられるような痛みを感じることがあります。一見すると胃の不調に思えますが、実は心臓からの警告である場合もあるため注意が必要です。
その他(薬の副作用、感染症、胃がんなど)
胃が締め付けられるような痛みの背景には、薬の副作用や感染症、さらには胃がんといった重篤な病気が隠れていることもあります。特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や一部の抗生物質などは、胃の粘膜を刺激し、痛みを引き起こすことがあります。
また、ノロウイルスやピロリ菌などの感染による胃腸炎でも、激しい腹痛や胃の圧迫感を伴うことがあります。さらに、胃がんの場合は初期には自覚症状が乏しいことが多く、痛みが出てきた頃には進行しているケースも少なくありません。
セルフチェック!受診が必要なサインとは?
我慢してはいけない危険な症状
胃の締め付けられるような痛みが現れたとき、以下のような症状を伴う場合はすぐに医療機関を受診する必要があります。
- 強い痛みが突然現れた
- 胸の痛みや息苦しさ、冷や汗を伴う
- 吐血や黒色便がある
- 発熱や嘔吐、下痢が続く
- 食事がとれないほどの痛みがある
- 意識がぼんやりする、めまいがある
これらの症状は、消化器系の重篤な疾患や心疾患、感染症の可能性があります。
特に「急に痛くなった」「痛みがどんどん強くなる」などの経過がある場合は、迷わず救急外来や内科を受診してください。早期の対応が命を守る鍵になります。
様子を見てもよいケース
すべての胃の痛みが緊急性を伴うわけではありません。
以下のようなケースでは、まずは様子を見ながら生活を整えることで改善が期待できる場合もあります。
- 軽度の痛みで、時間とともに和らいでいる
- ストレスや疲れがたまったときに限って痛む
- 食べ過ぎや飲み過ぎのあとに痛みが出る
- 痛み以外に目立った症状(発熱・吐き気など)がない
- 一時的なもので、数日以内に自然に治まる傾向がある
症状が繰り返す、徐々に悪化する、痛みの場所が変わるといった変化が見られる場合は、軽視せずに早めに内科や消化器内科を受診しましょう。自己判断せず、気になる症状は相談することが大切です。
対処法(胃の痛みを和らげるためにできること)
自宅でできる応急処置
胃が締め付けられるような痛みがあるときは、まず安静を保ち、胃に負担をかけないことが大切です。以下のような対処法で一時的な症状の緩和が期待できます。
- 横にならず、上半身を少し起こした姿勢で休む
- 白湯など刺激の少ない温かい飲み物を少量ずつ摂る
- 胃のあたりを温めて血流を良くする(カイロなど)
- 緊張をほぐすために、ゆっくりと深呼吸を行う
強い痛みが続く、他の症状(発熱・嘔吐・下痢など)を伴う場合は、応急処置では不十分な可能性があります。無理に我慢せず、早めに医療機関で診察を受けるようにしましょう。
食事や生活習慣の見直し
胃の痛みを繰り返さないためには、日々の食事や生活習慣の見直しが重要です。以下のポイントを意識することで、胃の負担を軽減し、症状の予防につながります。
- 規則正しい食事時間を守る
- 食べすぎ・飲みすぎを控える
- 脂っこい物や刺激物(辛い物・アルコール・カフェイン)を控える
- よく噛んでゆっくり食べる
- 就寝前の食事は避ける(就寝2〜3時間前までに済ませる)
- 十分な睡眠とストレスケアを心がける
胃はストレスにも敏感な臓器です。過労や精神的な負担が続くと、痛みを引き起こすリスクが高まります。生活全体を見直すことで、自然と症状の改善が期待できるでしょう。
何科を受診すべき?病院に行くタイミングの目安
胃の締め付けられるような痛みが続く場合、まず受診すべきは「内科」または「消化器内科」です。特に胃の不調や消化器症状に詳しい「消化器内科」では、内視鏡検査などによる正確な診断と専門的な治療が受けられます。
また、痛みが胸や左肩、腕に放散する場合は「循環器内科」も選択肢に入ります。心筋梗塞や狭心症の可能性があるためです。
以下のようなタイミングは受診の目安になります。
- 痛みが3日以上続く
- 繰り返し痛みが起こる
- 食欲不振や体重減少がある
- 吐血や黒色便が見られる
少しでも「おかしいな」と感じたら、早めに専門医へ相談しましょう。
よくある質問
Q. 胃の締め付け感が続くのは危険ですか?
A.はい、胃の締め付け感が数日以上続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。特に、胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎のほか、心臓や膵臓の病気でも同様の痛みを感じることがあります。痛みが慢性的であったり、体重減少、黒色便、吐き気などの症状を伴う場合は、早急に医療機関を受診してください。症状が軽くても、繰り返し起こるようであれば精密検査が必要です。放置せず、早期に原因を明らかにすることが大切です。
Q. ストレスが原因の痛みは治りますか?
A.ストレスが原因で起こる胃の痛みは、「機能性ディスペプシア」と呼ばれることがあります。
この場合、胃そのものに異常がなくても、自律神経の乱れによって胃の働きが不安定になり、痛みや不快感を感じます。治療には、ストレスの軽減や生活習慣の改善、胃薬の使用などが有効です。症状が強い場合には、漢方薬や自律神経を整える薬を使うこともあります。根本原因であるストレスを取り除くことが、改善への第一歩となります。
Q. 胃が痛いけど吐き気や発熱はない。大丈夫ですか?
A.吐き気や発熱がないからといって安心とは限りません。胃の締め付け感が続いている場合は、胃炎や胃潰瘍、機能性ディスペプシアなどが隠れていることがあります。これらは初期段階では目立った症状が出にくいため、痛みだけで判断するのは難しいです。特に、同じような痛みを何度も繰り返している場合や、生活に支障をきたすような場合は、消化器内科での診察をおすすめします。軽いうちに受診することで、重症化を防ぐことができます。
まとめ
胃が締め付けられるような痛みは、日常的なストレスや生活習慣の乱れから重篤な病気まで、幅広い原因で起こります。軽い痛みだからといって放置してしまうと、病気が進行し、治療が長引く可能性もあります。
痛みが繰り返す、強くなる、他の症状を伴うといった場合には、早めに医療機関を受診し、原因をしっかりと突き止めることが重要です。
当院では、消化器の専門的な診療と内視鏡検査を通じて、適切な診断と治療を行っています。
「いつもと違う」と感じたその直感を大切に、早めの行動を心がけましょう。健康な胃を守るためにも、小さな不調を見逃さないことが大切です。