2025年6月04日
排便時の強い痛みや出血に悩んでいませんか?軽い症状だからと放置していると、悪化や再発を繰り返すこともあります。また、検便や便潜血検査にも影響を及ぼすケースも。
この記事では、切れ痔の基本から自宅でのセルフケア、病院での治療法、再発予防まで、医師がわかりやすく解説します。

切れ痔とは?
切れ痔(裂肛)とは、肛門の出口付近の皮膚や粘膜が排便時に裂けることで、強い痛みや出血を伴う痔の一種です。便が硬かったり、排便時に強くいきんだりすることで、肛門の出口が傷ついて発症します。裂けた部分は排便のたびに刺激を受けやすいため、繰り返しの症状が起きやすく、慢性化することもあります。
切れ痔の主な症状
- 排便時の鋭い痛み(数時間続くことも)
- 血便やトイレットペーパーに血がつく
- 排便のたびに痛みがあるため排便を我慢して便秘になることも
- 肛門の出口が狭くなり、便が細くなる
- 傷の外側が盛り上がり、「見張りイボ」と呼ばれる出っ張りができる
女性や便秘がちな人に多く見られ、ストレスや冷え、出産後などがきっかけで悪化することもあります。
初期の段階で適切な対応をとることが重要です。
切れ痔は自然に治る?放置しても大丈夫?
切れ痔は軽度であれば自然に治ることもありますが、放置するのはおすすめできません。
特に排便のたびに同じ場所が繰り返し裂けてしまう場合、傷が深くなり、肛門潰瘍ができ、治癒しにくくなることがあります。
また、慢性化した場合には傷痕が瘢痕化し、肛門狭窄を起こしてしまう場合もあります。
切れ痔を放置した場合のリスク
- 慢性的な裂傷によって痛みが長引く
- 肛門の出口部分が硬くなり、便が出にくくなる(肛門狭窄)
- 排便時の痛みによって排便を我慢し、さらに便秘が悪化
- 慢性化すると手術が必要になるケースも
初期段階での対処としては、排便習慣の改善や軟便化、肛門を清潔に保つことが有効です。
しかし、症状が1週間以上続く場合や、出血が繰り返される場合には医療機関の受診をおすすめします。
自然治癒に頼らず、早めのケアが大切です。
自宅でできる切れ痔のセルフケア
軽度の切れ痔であれば、自宅でのセルフケアによって改善が期待できます。
日常生活の中で意識することで、症状の悪化や再発も防げます。
- 便通のコントロール
水分をしっかり取り、食物繊維を意識的に摂取して、便を柔らかく保ちます。場合によっては、便を軟らかくするタイプの下剤の使用も有効です。 - 肛門の清潔保持
排便後はウォシュレットやぬるま湯でやさしく洗い、清潔を保ちましょう。ただし強い水圧で傷を刺激する事は逆効果となるため注意が必要です。 - 坐薬や軟膏の使用
切れ痔用の坐薬や軟膏も、痛みや出血の軽減に役立ちます。 - 排便時の姿勢や習慣の見直し
長時間いきまず、トイレ時間を短くするよう心がけましょう。
症状が軽いうちに生活習慣を整えることで、治癒を早めるとともに、悪化を防ぐことが可能です。
食事・生活習慣で改善する方法
切れ痔の改善には、日々の食事と生活習慣の見直しが不可欠です。
便を硬くしない工夫や、肛門への負担を減らす生活を心がけましょう。
食事のポイント
- 水分をしっかり摂取
1日1.5〜2リットルの水を目安にこまめに飲み、便秘しないよう心がける。 - 食物繊維をバランスよく
野菜、果物、海藻、豆類などを積極的に摂取し、便秘の予防を心がけましょう。 - 刺激物やアルコールを控える
香辛料やお酒は肛門に刺激を与え、痛みや出血などの症状が強くなる可能性があるため注意が必要です。
生活習慣の改善
- 適度な運動
ウォーキングなどの軽い運動で腸の動きを促進しましょう。 - 規則的な排便習慣
毎日同じ時間にトイレに行く習慣をつけましょう。 - 長時間の座位を避ける
デスクワーク中心の方は1時間に1回は立ち上がるようにし、肛門の鬱血を避けるようにしましょう。
これらを日常的に取り入れることで、便秘を防ぎ、肛門への負担を減らすことができ、切れ痔の予防・改善につながります。
どんなときに病院を受診すべき?
切れ痔は初期であれば自宅ケアで改善することもありますが、以下のような症状がある場合は病院を受診することをおすすめします。
- 1週間以上、症状が続いている
- 排便のたびに強い痛みがあり、日常生活に支障が出ている
- 出血の量が多い、または頻繁に出血する
- 市販薬を使っても改善しない
- 肛門にしこりや違和感がある
また、切れ痔と似た症状を示す病気には、内痔核や直腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎などもあります。
正確な診断と適切な治療を受けるためにも、症状が気になる場合は消化器内科や肛門科を早めに受診しましょう。
安心して治療を受けるためにも、「恥ずかしいから」と我慢せず、早期の相談が大切です。
病院での治療方法|薬・処置・手術の選択肢
切れ痔の治療は、症状の程度に応じて段階的に行われます。軽症であれば薬物療法での改善が期待できますが、慢性化している場合や合併症がある場合には、処置や手術が検討されることもあります。
- 軟膏・坐薬治療
炎症を抑えるステロイド剤や痛みを和らげる鎮痛薬を使用。傷の治癒を促進します。 - 便通改善の内服薬
下剤や整腸剤を処方し、便を柔らかく保って排便時の負担を軽減します。 - 手術
慢性化して肛門の狭窄を引き起こした場合や、裂け目の周囲にしこり(見張りいぼ)ができている場合は、外科的な処置が必要になることもあります。
治療は負担の少ない方法から始めるのが一般的で、痛みの軽減と再発予防を目的に継続的なケアが大切です。
切れ痔は再発しやすい?再発防止のポイント
切れ痔は非常に再発しやすい疾患です。特に便秘がちな方や、排便習慣が乱れている方は何度も繰り返す傾向にあります。再発を防ぐには、日々の予防対策が何より重要です。
- 便を硬くしない
水分摂取と食物繊維のバランスを保ち、便秘を防ぐことが基本です。 - トイレ時間は短く、力まない
排便時の強いいきみは肛門を傷つける原因になるため、無理のない排便習慣を心がけましょう。 - 肛門周囲の清潔を保つ
洗いすぎは避けつつ、刺激の少ない方法で清潔を保つことが大切です。 - 冷えやストレスの予防
体の冷えやストレスも便通や肛門の血流に影響を与えるため、意識してリラックスする習慣を持ちましょう。 - 定期的な生活リズムの維持
排便のリズムが崩れると再発しやすいため、食事や睡眠を含めた規則正しい生活が重要です。
一度治っても、同じ生活習慣を繰り返せば再発は避けられません。「予防」を意識した生活を続けることが、再発防止の鍵です。
まとめ
切れ痔は多くの人が経験する肛門のトラブルですが、軽視すると再発や慢性化を招くことがあります。自宅でのケアや生活習慣の見直しで改善が見込めるケースもありますが、症状が長引いたり強い痛み・出血を伴う場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
特に、便潜血検査を控えている方にとっては、痔による出血が検査結果に影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。普段から便通のコントロールや肛門周囲のケアを心がけ、再発予防にも努めましょう。 切れ痔は、正しい知識と早めの対処で十分にコントロール可能な疾患です。少しでも不安があれば、恥ずかしがらずに医師に相談してください。