2025年6月17日
「食中毒かもしれない…でも何科に行けばいいの?」と迷った経験はありませんか?
食中毒は突然の嘔吐や下痢、発熱など、つらい症状を引き起こします。間違った対応をしてしまうと、症状が悪化する恐れもあります。
この記事では、食中毒の症状や原因から、受診すべき診療科、自宅での初期対応、受診の目安まで詳しく解説します。正しい知識を身につけ、いざという時に冷静に対応できるようにしましょう。

食中毒とは?代表的な症状と原因
食中毒とは、細菌・ウイルス・寄生虫・化学物質などの原因により、食べ物や飲み物を介して体内に異物が入り、消化器症状を引き起こす疾患の総称です。食中毒は広義の「感染性胃腸炎」の一種とされ、急性胃腸炎と診断される場合もあります。「感染性胃腸炎」は、病原体が腸管に感染して炎症を引き起こす疾患群の総称ですが、この中でも感染ルートが「食べ物経由」だった場合が、食中毒に該当します。
食中毒を含めた感染性胃腸炎の代表的な症状には、嘔吐・下痢・腹痛・発熱・脱水などがあり、原因や体質によって症状の出方や重症度が異なります。
主な原因としては、カンピロバクターやサルモネラ菌などの細菌、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスが挙げられます。特に、夏場や梅雨時は細菌性、冬場はウイルス性の食中毒が多くみられます。
食材の取り扱いや保存方法が不適切な場合に発生しやすく、日常の衛生管理が予防の鍵になります。
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食中毒は消化器内科へ
何科に行けばいいか迷った場合は、まず「消化器内科」を受診しましょう。
食中毒は、原因や症状によって適切な対応が異なります。軽度であれば自宅での安静と水分補給で回復する場合もありますが、発熱や血便、強い腹痛がある場合は、重症化のリスクがあるため注意が必要です。
食中毒の症状が出たらどうする?自宅での初期対応
食中毒の症状が現れたとき、まず大切なのは「無理をせず安静にすること」と「脱水を防ぐこと」です。
嘔吐や下痢で体内の水分と電解質が失われやすいため、少量ずつこまめに水分補給を行いましょう。スポーツドリンクや経口補水液(OS-1など)を活用すると効果的です。
また、自己判断で市販薬を使うのは避けた方が無難です。特に下痢止めは、体内に毒素をとどめてしまい、症状を長引かせる可能性があります。
吐いたものや便の状態を写真に残す、もしくはメモを取っておくと、診察時の参考になります。発熱や激しい腹痛、血便がある場合は、重症の場合があることはもちろん、他の疾患の可能性もありますから、速やかに医療機関を受診しましょう。特に高齢者や小さなお子さんは、重症化しやすいため、早めの対応が求められます。

【症状別】考えられる原因
嘔吐・下痢・腹痛の場合
これらは食中毒で最も一般的な症状です。食中毒による下痢は大きく分けると、病原体が大腸で炎症を起こすことによって起こる炎症性下痢と、ウィルスなどが産生する毒素(エンテロトキシン)が原因の非炎症性下痢があります。特にこのエンテロトキシンは激しい嘔吐や、さし込むような腹痛など急激な胃腸炎症状を呈する場合が多いです。食中毒には特効薬があるわけではないので、症状が軽度であれば自宅での安静と水分補給を中心に様子をみてもよいですが、嘔吐や下痢が長引いたり、水分が取れない場合は医療機関を受診しましょう。
発熱がある場合
発熱を伴う食中毒は、組織侵入性のある細菌感染による可能性が高くなります。例えば、カンピロバクター腸炎やサルモネラ腸炎、エルシニア腸炎などが代表的です。一方で、腸管出血性大腸菌などが原因の場合、発熱が見られても軽度のことが多いです。ただし、発熱の有無と重症化のリスクは必ずしも相関しない場合もあるため、自己判断せずに早めに医療機関の受診を検討しましょう。
血便・激しい腹痛がある場合
血便が見られる場合や、我慢できないほどの腹痛がある場合は、ただちに医療機関を受診してください。腸に深刻な炎症や出血が起きている可能性があります。例えば、カンピロバクター腸炎は水溶性下痢が主体のことが多いですが、高い確率で回盲部潰瘍(Bauhin弁潰瘍)を合併し、1ヶ月以上も持続する腹痛を合併したり、血便や粘液便が見られる場合もあります。また、腸管出血性大腸菌(O157など)が原因のケースでは、6〜7%程度の確率で溶血性尿毒症症候群 (HUS) や脳症などの致死的な重症合併症のリスクもあります。
子どもや高齢者が食中毒になった場合
小児や高齢者は体力が少なく、脱水や重症化のリスクが高いため、症状が軽くても注意が必要です。水分が摂れない、ぐったりしている、意識がぼんやりしているといった様子があれば、すぐに受診しましょう。
受診のタイミングと目安
食中毒は軽症で済むこともありますが、以下のような症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
- 高熱(38.5℃以上)が続く
- 血便や黒色便が出る
- 嘔吐や下痢が止まらず水分が取れない
- 強い腹痛がある
- 意識がもうろうとする、ぐったりしている
- 尿が出ない、口の中が乾いている(脱水のサイン)
- 下痢症状が1週間以上続く場合
これらの症状は、腸や全身に深刻な異常が起きている可能性や、食中毒以外の他の病気が隠れている可能性があるサインです。また、小さなお子さんや高齢者、基礎疾患のある方は重症化しやすいため、症状が軽くても早めの受診が望まれます。
受診時の注意点|持参すべき情報と服薬の確認
食中毒の疑いで医療機関を受診する際は、正確な情報を伝えることが大切です。
以下の点を整理しておきましょう。
- いつ、どんな食事をとったか
- 複数人で同じものを食べたか(周囲に同様の症状があるか)
- 症状の経過(発症時期、回数、症状の変化)
- 吐いた物や便の状態(写真があればベスト。感染性の恐れがあるため、現物は持ち込まない)
- 現在服用している薬や持病の有無
また、他院からの処方薬を服用している場合や、下痢止め・解熱剤などをすでに使用した場合は、医師に必ず伝えてください。誤った薬の使用が、診断や治療を難しくすることもあります。
食中毒の予防法
食中毒は適切な予防を心がけることで、多くが防げます。特に家庭内での食事管理が重要です。
- 調理前・食事前の手洗いを徹底する
- 肉や魚は中心までしっかり加熱する
- 調理器具(包丁・まな板など)は用途別に使い分ける
- 調理後はすぐに食べ、常温放置は避ける
- 冷蔵・冷凍保存は温度管理を徹底する
まとめ
食中毒は誰にでも起こり得る身近な健康トラブルですが、症状や重症度には個人差があります。嘔吐や下痢などの消化器症状が中心でも、自己判断で放置すると重症化することもあるため注意が必要です。
受診の目安を知り、適切なタイミングで医療機関にかかることが大切です。特に、消化器内科は食中毒の診断と治療に適した専門科ですので、迷った場合はまず相談しましょう。
また、日頃の予防も忘れずに。衛生管理と食材の取り扱いに注意することで、食中毒のリスクは大きく減らせます。
正しい知識を持ち、いざというときに慌てず対応できるようにしておきましょう。
食中毒についてよくある質問
Q. 食中毒ってどんな病気ですか?
A. 食べ物や飲み物に混入した細菌・ウイルス・毒素などが原因で、腹痛・下痢・吐き気・発熱などの症状が起こる病気です。発症までの時間は数時間〜数日と幅があり、原因によって症状の出方も異なります。
Q. どんな食べ物で食中毒になりますか?
A. 生もの(刺身・生卵・加熱不足の肉など)、お弁当や作り置き料理などが原因になることがあります。特に高温多湿な季節は菌が増えやすく、細菌性の食中毒のリスクが高まります。ノロウイルスやロタウイルスは、寒くて乾燥した環境に強く、冬場に流行します。
Q. 食中毒の症状が出たらどうすればいいですか?
A. まずは水分をしっかりとり、脱水に注意しましょう。下痢や嘔吐があっても、自己判断で安易に下痢止めを使うのは避けてください。体内の毒素を排出する妨げにな理、症状が遷延することがあります。
Q. 食中毒は他の人にうつりますか?
A. 吐物や排泄物を介した接触感染や飛沫感染により人にうつる可能性があります。症状がある場合はこまめな手洗い・消毒を心がけましょう。
Q. 病院で「急性胃腸炎」「感染性胃腸炎」と言われたけど、食中毒とは違うの?
A. 食中毒も急性胃腸炎や感染性胃腸炎の一部です。明らかに食品が原因であると特定できない場合も多く、推定の域を出ない段階では「急性胃腸炎」や「感染性胃腸炎」と診断される場合があります。実際には経過や症状から総合的に判断されます。
Q. 食中毒で血便が出ることもありますか?
A. はい、食中毒の一部では、血便が出ることがあります。また、脱水などで腸の血流が悪くなり「虚血性腸炎」を合併する場合にも血便が見られます。また感染性腸炎が引き金(トリガー)となり、潰瘍性大腸炎を発症するケースもあると報告されており、症状が持続する場合は必ず医療機関を受診してください。
Q. 食中毒がきっかけで別の病気になることはありますか?
A. 感染がきっかけとなり、虚血性腸炎などの2次性の腸炎を引き起こしたり、潰瘍性大腸炎などの慢性腸疾患が発症するケースも報告されています。症状が長引く場合は、専門的な検査が必要です。後からこれらの病気が診断され、「前にかかった病院の診断が誤診ではないか?」と疑われる患者様がいらっしゃいますが、前医を受診したときには実際に感染性胃腸炎の状態であっても、後から遅れてこれらの病気が出てくる場合もある事は知っておいた方が良いでしょう。
Q. 食中毒の治療にはどれくらいの時間がかかりますか?
A. 一般的には2〜3日ほどで症状が軽くなることが多いですが、重い場合は1週間以上かかることもあります。特にカンピロバクター腸炎などで回盲部潰瘍などを形成した場合は治癒までに1ヵ月程度かかることもあります。ただし1週間以上の症状が持続する場合は、単なる食中毒としては、非典型的な症状といえますので、自己判断せず必ず医療機関を受診するようにしてください。
Q. 食中毒の症状が出たら、まず何をすればいいですか?
A. 一番大切なのは水分補給です。嘔吐や下痢で水分が失われやすいため、スポーツドリンクや経口補水液などでこまめに水分をとりましょう。飲んでも、どうせ下痢になってしまうからと水分を飲み控える方がいらっしゃいますが、失われた水分をしっかり補給しないと脱水となってしまいます。吐き気や腹痛が強い場合には無理に食事はせず、安静にして様子を見てください。下痢止めは使わず、早めに医療機関を受診しましょう。
Q. 食中毒の潜伏期間は通常どのくらいですか?
A. 食中毒の潜伏期間は原因によってさまざまですが、数時間〜数日(1〜3日)以内に症状が出ることが多いす。たとえば、黄色ブドウ球菌は数時間以内、カンピロバクターは2〜5日後に症状が出ることがあります。必ず直前に食べたものが原因とは限りませんので、医療機関を受診した際には数日間さかのぼって食べたものを教えていただけると診断の助けとなります。
Q. 食中毒の原因を調べる方法はありますか?
A. 便の検査(培養検査やPCR検査など)を行って原因となる細菌やウイルスを調べることがあります。ただし、症状が軽い場合や検査結果が出るまでに時間がかかることもあり、すべてのケースで原因が特定できるわけではありません。また、ノロウィルスの検査などは一定の条件を満たさないと保険適用外(自費診療)となる場合があります。