胃痛を和らげる姿勢|今すぐできる楽な体勢と原因別の対処法を医師が解説!

胃痛を和らげる姿勢

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2025年6月25日

突然襲ってくる胃の痛み。「少しでも楽になる姿勢が知りたい」と思ったことはありませんか?胃痛の原因によっては姿勢を変えるだけでも痛みが和らぐことがあります。
本記事では、今すぐできる楽な体勢から、姿勢以外の応急処置、原因別に考えられる病気や受診の目安、そして再発予防につながる生活習慣まで、詳しく解説します。

胃痛を和らげる姿勢|今すぐできる楽な体勢と原因別の対処法を医師が解説!

胃痛を和らげるために姿勢が重要な理由

胃痛を感じたとき、無意識に体を丸めたり横になったりするのは、体が自然と痛みを和らげようとしている反応です。姿勢は胃への圧力や胃酸の逆流、神経への刺激の加わり方に大きく関係しています。

例えば、前かがみになると腹部が圧迫され、胃酸の逆流が起こりやすくなります。逆に上体をやや起こした姿勢をとることで、胃の内容物が食道へ逆流しにくくなり、痛みが軽減することがあります。

また、ストレス性胃炎など自律神経が関与する胃痛では、リラックスした姿勢をとることで交感神経の過活動が抑えられ、症状が緩和されることもあります。

胃痛を和らげるおすすめの姿勢

胃痛を感じたときは、原因に応じて適した姿勢をとることで、痛みの軽減が期待できます。

胃酸の逆流が疑われるとき(胃食道逆流症など)

  • 上半身を30度ほど起こして横になる

    左側を下にして寝ると胃の内容物が、胃の「穹窿部」と呼ばれる部分に貯留し、食道側までの距離が出るため、胃酸の逆流を防ぎやすくなります。

  • 前かがみの姿勢を避ける

    腹部圧迫を避け、胃酸が上がってこないようにします。

ストレスや緊張による胃痛(神経性胃炎など)

  • 背筋を伸ばして深呼吸

    交感神経の緊張を和らげ、副交感神経を優位にします。

  • 膝を抱えて横になる

    リラックスしやすく、腹部を温める効果もあります。

一時的な胃のけいれんや違和感

  • 横向きで丸くなる姿勢(胎児のような姿勢)

    腹部の緊張がほぐれ、痛みが和らぐことがあります。

膵臓が原因の痛み

膵臓はお腹の奥、胃のさらに背中側にある臓器です。膵炎など膵臓に関係する病気では、みぞおちから左上腹部にかけての痛みが背中に抜けるように感じることがあります。胃痛だと思ったら実は膵臓が原因だった、という方も少なくありません。特に食後や横になったときに痛みが増すのが特徴です。

  • クッションを抱えてうずくまるようにして座る

  • ベッドやソファで膝を胸に抱えるように横になる

膵臓への血流や神経の刺激がやわらぐ姿勢と考えられています。
痛みが強いときは無理をせず、「自分が一番楽だと感じる姿勢」をとることが最も大切です。

姿勢以外にできる胃痛対策(応急処置)

胃痛が起きたとき、姿勢の調整に加えて以下のような応急処置を行うことで、症状の緩和が期待できます。

  • お腹を温める

    カイロや湯たんぽなどで腹部を温めることで、血流が良くなり胃のけいれんや緊張が和らぐことがあります。

  • 深呼吸やリラックス

    胃痛の原因がストレスによる場合は、ゆっくりと深呼吸をするだけでも神経の興奮を抑え、症状の軽減につながります。

  • 水や白湯を少しずつ飲む

    少量の水分を摂取することで胃酸の濃度を下げ、刺激を和らげる効果が期待できます。ただし、冷たい水は避けましょう。

  • 安静にする

    無理に動いたり食事を摂ったりせず、まずは安静にして様子を見ることが大切です。

注意点

市販薬を使用する際は、症状に合った薬を選ぶ必要があります。
誤った薬の使用は症状を悪化させる可能性もあるため注意が必要です。

注意すべき危険な胃痛とは?早めに受診すべきサイン

一時的な胃痛であれば自然に回復することもありますが、以下のような症状を伴う場合は、早めの受診が必要です。

  • 突然の激しい痛み

    胃潰瘍や胃穿孔など、緊急性の高い病気の可能性があります。

  • 血を吐いた、黒い便が出た

    消化管出血の可能性があり、早急な医療介入が必要です。

  • 痛みが徐々に強くなる・長時間続く

    炎症や腫瘍など、慢性的な疾患が疑われます。

  • 発熱や吐き気を伴う

    感染性胃腸炎や胃の炎症が進行している可能性があります。

  • 食事ができないほどの痛み

    日常生活に支障をきたす胃痛は放置せず、内科受診を推奨します。

「いつもと違う」「我慢できない」「数日続いている」と感じた場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。

胃痛が続くときに考えられる病気

胃痛が何日も続く、あるいは繰り返し起こる場合、以下のような病気が関係している可能性があります。慢性的な胃痛がある場合は、早めに内視鏡検査など専門的な診察を受けることが大切です。

病名主な症状特徴
慢性胃炎鈍い痛み、胃もたれピロリ菌感染やストレスが原因で、長期的に胃に炎症が起こる
胃潰瘍・十二指腸潰瘍空腹時に痛む、吐き気、黒色便胃酸によって粘膜が傷つき、出血を伴うことも
胃食道逆流症(GERD)胸やけ、胃の痛み、喉の違和感胃酸が食道に逆流し、食後に悪化しやすい
機能性ディスペプシア明確な異常がないのに胃痛や不快感ストレスや自律神経の乱れが関与
胃がん初期は無症状のことも、食欲不振や体重減少を伴うことあり長期間持続する痛みや違和感が特徴
慢性膵炎みぞおちの鈍い痛み、食後の不快感、体重減少アルコールや脂質の多い食事が原因。進行すると糖尿病や膵機能不全を伴う
急性膵炎突然の激しいみぞおちの痛み、背中への放散痛、嘔吐、発熱多量飲酒や胆石が原因。重症化すると命にかかわる

胃痛を予防するための日常習慣

胃痛を繰り返さないためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。

以下のポイントを意識して、胃に優しい生活を心がけましょう。

胃に優しい食生活

  • 暴飲暴食を避ける

  • 刺激物(辛い物、アルコール、カフェインなど)を控える

  • 規則正しく食事を摂る(朝食を抜かない)

  • よく噛んでゆっくり食べる

ストレス管理

  • 十分な睡眠をとる

  • 適度な運動でリフレッシュする

  • 趣味やリラックスできる時間を持つ

生活リズムの安定

  • 夜遅くの食事を避ける

  • 寝る前2時間は飲食を控える

  • 過労や睡眠不足を避ける

これらの習慣を積み重ねることで、胃への負担が軽減され、再発の予防にもつながります。胃痛が気になる方は、まずは日常の小さな改善から始めてみましょう。

まとめ

胃痛は、日常的によく見られる症状のひとつですが、その原因や程度によって対処法は異なります。まずは「楽な姿勢をとる」ことが痛みを和らげる第一歩となります。特に胃酸の逆流が関係する場合や、ストレス性の胃痛では、姿勢の工夫が効果的です。

また、姿勢の調整だけでなく、お腹を温めたり、水分をとるといった応急処置もあわせて行うことで、より早く症状の緩和が期待できます。ただし、痛みが長引く・強まる・出血を伴うといった場合には、危険な病気のサインかもしれません。

慢性的な胃痛に悩む方は、食事や生活習慣の見直しを行い、再発防止に努めましょう。少しでも不安を感じたときは、消化器内科を受診することをおすすめします。

よくある質問

胃痛を緩和するための市販薬はありますか?

市販薬でも胃痛を和らげるものがあります。症状が長引く場合は自己判断せず、医師に相談しましょう。

  • 制酸薬(胃酸を中和して胃を守る)

  • H2ブロッカー・PPI(胃酸の分泌を抑える)

  • 消化薬(消化を助ける)

  • 胃粘膜保護薬(胃の表面を保護する)

食後に胃痛が起きる原因は何ですか?

主に以下のような原因が考えられます。頻繁に起こる場合は医療機関での検査をおすすめします。

  • 食べすぎや早食い、脂っこい食事

  • 胃炎や胃潰瘍などの消化器疾患

  • 消化不良や胃酸の過剰分泌

胃もたれと胃痛の違いは何ですか?

胃もたれは胃が重く感じたり、食べた物が残っている感じが続く不快感で、胃痛はズキズキ・キリキリとした明確な「痛み」を感じる状態です。

胃痛と下痢は関係がありますか?

はい。腸と胃は密接に関係しているため、胃痛に伴って下痢が起こることがあります。ウイルス性胃腸炎や過敏性腸症候群(IBS)、食あたりなどが主な原因です。

女性の胃痛はどんな原因がありますか?

女性はホルモンの影響やストレスの感受性が高く、以下のような原因が考えられます。

  • 月経周期に伴う胃腸症状

  • ストレスや不安による胃の不調

  • 機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群

  • 妊娠初期のつわりや胃酸逆流

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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