右下腹部の痛み、張りの原因を解説!

右下腹部の痛み、張りの原因を解説!

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2025年6月27日

右下腹部の痛みや張りを感じたとき、多くの方が「虫垂炎(盲腸)かもしれない」と不安になります。しかし、消化器の病気だけでなく、婦人科や泌尿器科の疾患が隠れていることもあるため、正確な判断が必要です。痛みの性質や併発する症状によって、受診すべき診療科も異なります。
この記事では、右下腹部の痛みや張りが現れる代表的な原因や、セルフチェックのポイント、病院に行くべきタイミングなどを医師がわかりやすく解説します。

右下腹部の痛み、張りの原因を解説!

右下腹部の痛み・張り

右下腹部の痛みや張りは、よく見られる症状のひとつです。原因は多岐にわたり、消化器のトラブルに加えて、婦人科系や泌尿器系の病気が隠れていることもあります。

痛みの感じ方には個人差がありますが、次のような表現で訴える患者さんが多く見られます。

  • チクチクと針で刺すような痛み

  • ズキズキと波のように繰り返す痛み

  • じんわりと続く鈍い痛み

  • 押すと痛みが強くなる圧痛

  • ガスがたまったような張り感

「張るだけ」であれば一時的な便秘や腸内ガスによるものも多く、必ずしも深刻とは限りません。しかし、「痛みを伴う張り」や「発熱・吐き気」などの症状をを伴う場合は、急性虫垂炎(いわゆる盲腸)や婦人科系の急性疾患など、早急な診断・治療が必要なケースもあります。

症状の程度や経過をよく観察し、異常を感じた場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

右下腹部の痛みで考えられる主な原因

消化器の病気

右下腹部には、盲腸や回腸・上行結腸といった消化管が位置しており、さまざまな消化器疾患によって痛みや張りが出現します。

  • 虫垂炎(盲腸)

    チクチク、ズキズキとした右下腹部の痛みが次第に悪化し、発熱や吐き気を伴うことが多い病気です。初期にはみぞおちの痛みなどから始まる場合もあり、注意が必要です。抗生剤の内服・点滴などで治療可能な場合もありますが、程度によっては緊急手術が必要となります。

  • 便秘

    便やガスが腸内にたまり、張り感や鈍い痛みを感じます。慢性化すると生活の質も低下します。

  • 大腸憩室炎

    腸の壁にできた小さな袋(憩室)が炎症を起こし、右下腹部に痛みが出ることがあります。発熱を伴う場合もあります。炎症がこじれると穿孔(腸に穴が開く)などの重篤な合併症が現れる場合もあります。

  • 過敏性腸症候群(IBS)

    ストレスや自律神経の乱れにより、腹痛とともに下痢や便秘を繰り返す疾患です。右下腹部の違和感を訴える疾患として頻度の高いものです。

  • ベーチェット病(Behçet病)

    ベーチェット病は、免疫異常により全身に炎症が起こる難病です。消化器型ベーチェット病では、小腸の末端や盲腸付近(回盲部)に潰瘍ができ、右下腹部の持続的な痛みや下痢、血便、微熱などを引き起こします。潰瘍性大腸炎やクローン病と似た症状を示すため、正確な診断には専門的な検査が必要です。

  • 盲腸がん(右側結腸がん)

    「盲腸がん(右側結腸がん)」は、進行しても自覚症状が乏しいことが多く、発見が遅れやすいのが特徴です。初期症状としては、右下腹部の鈍い痛みや張り感、慢性的な下痢・便秘、貧血(顔色が悪い、動悸・息切れ)などが挙げられます。進行すると血便や体重減少がみられることもあります。

婦人科の病気

女性の右下腹部の痛みや張りは、婦人科系の疾患によるものも少なくありません。生理周期やホルモン変動と関係して症状が出ることもあり、以下のような病気が考えられます。

  • 排卵痛

    排卵時に片側の下腹部がチクチクと痛むことがあります。数時間〜1日程度で自然におさまる軽度の症状です。

  • 子宮外妊娠

    受精卵が卵管など子宮外に着床し、ズキズキするような強い痛みや出血を起こします。破裂すると生命にかかわるため、早期診断が重要です。

  • 卵巣出血(黄体出血)

    黄体が破れ、右下腹部に鋭い痛みを引き起こすことがあります。軽度なら自然に治まりますが、出血が多い場合は治療が必要です。

  • 子宮内膜症

    子宮内膜に似た組織が子宮外に発生し、月経周期に合わせて痛みが出ます。慢性的な右下腹部痛の原因となることがあります。

  • 卵巣嚢腫・卵巣茎捻転

    卵巣にできた嚢腫がねじれて(捻転)、突然の激しい痛みを伴います。緊急手術が必要になるケースもあります。

  • 子宮筋腫

    筋腫の位置や大きさによっては、右下腹部の重苦しい張りや痛みを感じることがあります。

泌尿器の病気

右下腹部の痛みや張りは、腎臓や尿管、膀胱といった泌尿器系の異常が原因となる場合もあります。

  • 尿路結石

    腎臓から尿管にかけて結石が移動することで、ズキズキ・キリキリとした激しい痛みが右下腹部に放散します。血尿や吐き気を伴うこともあり、突然発症するのが特徴です。

  • 膀胱炎

    膀胱に細菌が感染し、下腹部に鈍い痛みや不快な張り感が出ます。頻尿・排尿時痛・残尿感などの症状が特徴で、女性に多く見られます。

  • 腎盂腎炎

    腎臓にまで炎症が広がることで、右側の背部や下腹部に痛みが及ぶことがあります。発熱や寒気、全身のだるさを伴うため、早期治療が必要です。

症状別のチェックポイント

右下腹部の痛みは、その“痛み方”によって原因疾患の見当をつける手がかりになります。

鋭い痛み/鈍い痛み/圧痛/繰り返す痛み

鋭い痛み(キリキリ・ズキズキ)

「キリキリ」「ズキズキ」といった急な痛みが現れた場合は、虫垂炎(盲腸)や尿路結石、卵巣茎捻転などの緊急疾患が疑われます。痛みが突然始まり、短時間で強まる場合には、速やかに医療機関を受診してください。

考えられる主な疾患
  • 虫垂炎(盲腸)

  • 大腸憩室炎

  • 卵巣茎捻転

  • 卵巣出血

  • 子宮外妊娠

  • 尿路結石

鈍い痛み(ジンジン・重い)

「じんわり」「なんとなく違和感がある」など、はっきりしない鈍痛が続く場合は、便秘や過敏性腸症候群(IBS)、子宮内膜症、あるいは盲腸がんの初期症状であることもあります。慢性的な症状は軽視せず、経過をみながら専門医に相談しましょう。

考えられる主な疾患
  • 便秘

  • 子宮筋腫

  • 過敏性腸症候群

圧痛(押すと痛い)

腹部を軽く押すと痛みが強くなる「圧痛」がある場合、虫垂炎や大腸憩室炎などの炎症性疾患の可能性があります。特に、「押したときよりも手を離したときに強く痛む」反跳痛(はんちょうつう)がある場合は、腹膜刺激症状が出ていると考えられ、緊急性が高くなります。

考えられる主な疾患
  • 虫垂炎

  • 大腸憩室炎

繰り返す痛み

「痛みが強くなったりおさまったりを繰り返す」という場合は、腸の動き(蠕動運動)に関連した疾患が疑われます。腸閉塞の初期症状や、IBS(過敏性腸症候群)、尿管結石の移動時などでこうした痛みが起こります。

考えられる主な疾患
  • 排卵痛

  • 尿管結石

  • 過敏性腸症候群

張り感だけの場合/痛みと張りが同時にある場合

右下腹部に「張り感」がある場合、痛みの有無によって考えられる病気が異なります。

張り感だけがある場合

 主にガスの溜まり(鼓腸)や便秘によるものが多く見られます。食生活や排便習慣が関係するため、生活改善で軽快することもあります。ただし、慢性的な張りが続く場合は、大腸の疾患や過敏性腸症候群の可能性もあるため注意が必要です。

張りと痛みが同時にある場合

 虫垂炎、大腸憩室炎、子宮内膜症、卵巣嚢腫、腸閉塞など、病的な原因が疑われます。とくに痛みがチクチク・ズキズキと強くなる、あるいは繰り返すような場合は医療機関での診察が必要です。

医療機関を受診する目安

右下腹部の痛みや張りは、一時的な生理的反応で自然に治まることもありますが、病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

以下のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

  • チクチク・ズキズキとした強い痛みがある

  • 痛みが時間とともに悪化している

  • 圧痛(押すと痛い)がある

  • 発熱・吐き気・下痢・血便など他の症状を伴う

  • 排尿時の痛みや違和感がある

  • 月経以外の出血や妊娠の可能性がある

  • 持続的または繰り返す腹痛・張りがある

「市販薬を飲んでも改善しない」「症状がいつもと違う」と感じた場合も受診のタイミングです。
特に妊娠中や基礎疾患がある方、高齢者は重症化しやすいため、自己判断せず早めの受診が重要です。

まとめ

右下腹部の痛みや張りは、消化器・婦人科・泌尿器など、さまざまな臓器から生じる症状です。チクチク・ズキズキといった痛みの種類や、張り感だけか痛みも伴うかによって、考えられる原因は異なります。

一時的な不調で治まる場合もありますが、強い痛み、発熱、吐き気、出血などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。特に虫垂炎や卵巣茎捻転、子宮外妊娠などは緊急対応が必要になるケースもあります。

「たかが腹痛」と軽視せず、自分の体の変化に注意を払い、早めの受診を心がけましょう。適切なタイミングで医師の診察を受けることで、重症化を防ぐことができます。

よくある質問

右下腹部のチクチクした痛みの原因は何ですか?

チクチクする痛みは、腸のガスや便の停滞、軽度の炎症によることが多いですが、虫垂炎(盲腸)や大腸憩室炎、過敏性腸症候群などの可能性もあります。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。

右下腹部が痛むとき、運動は避けた方がいいですか?

急性の痛みや原因が不明な場合は、運動は控えるのが安全です。虫垂炎や女性の場合、婦人科系の疾患の可能性もあるため、無理をせず、安静にして経過を見てください。

右下腹部の痛みがときどき起こる理由は何ですか?

間欠的な痛みは、腸の動き(蠕動運動)による刺激やガスのたまり、便秘、過敏性腸症候群などが原因となることがあります。

右下腹部の痛みがあるとき、温めることは効果的ですか?

腸のけいれんや一時的な血流不良が原因の場合、温めることで症状が緩和することがあります。ただし、炎症性の病気(虫垂炎など)の場合は逆効果になることがあるため、症状が強い場合や悪化傾向がある場合は医療機関を受診してください。

右下腹部の痛みの原因として、女性特有の疾患もありますか?

はい、あります。女性の場合、以下のような婦人科系疾患が原因のことがあります。症状が強い、周期的に起こる、急激に悪化する場合は婦人科への相談をおすすめします。

  • 排卵痛・月経痛

  • 子宮内膜症

  • 卵巣嚢腫・卵巣茎捻転

  • 子宮外妊娠(緊急性あり)

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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