2026年7月15日
「水分をしっかり補給してください」とよく耳にしますが、実際にどんな飲み物を、どのように飲めばよいか、迷われている方も多いのではないでしょうか。夏場は熱中症対策として水分補給が欠かせません。厚生労働省も、室内でも屋外でも、のどの渇きを感じなくてもこまめに水分を補給することを呼びかけています。汗を多くかく場面では、水分だけでなく塩分の補給も重要です。一方で、冷たい飲み物や糖分の多い飲み物を一度に大量に飲むと、胃もたれ、腹痛、下痢などにつながる方もいます。今回は消化器専門医の立場から、熱中症対策に適した飲み物、胃腸に負担をかけにくい飲み方、受診が必要なサインについてわかりやすくお伝えします。

熱中症対策におすすめの飲み物・飲み方
熱中症対策では、「日常の水分補給」と「大量に汗をかいた時・脱水が疑われる時」で、適した飲み物が異なります。

日常の水分補給に向いている飲み物
| 飲み物 | 特徴 |
| 水 | 糖分やカフェインがなく、日常の水分補給に使いやすい |
| 麦茶 | カフェインを含まず、夏場の日常的な水分補給に使いやすい |
| ほうじ茶・薄いお茶 | カフェイン量に注意しながら、日常的に取り入れやすい |
| スープ・味噌汁 | 水分と塩分を一緒に摂れる。食事の一部として有用 |
日常的な水分補給では、水や麦茶などが使いやすい選択肢です。汗を多くかいていない日常生活で、経口補水液やスポーツドリンクを常に飲み続ける必要はありません。
大量に汗をかいた時・熱中症が疑われる時
大量に汗をかいた時、屋外作業、運動、発熱、下痢・嘔吐などがある時は、水分だけでなく塩分も失われます。
このような場合は、経口補水液やスポーツドリンクを状況に応じて使います。
| 状況 | 選び方 |
| 大量に汗をかいた | 水分に加えて塩分も補います |
| 軽い運動やスポーツ後 | スポーツドリンクを適量使うことがあります |
| 脱水が疑われる、熱中症が疑われる | 経口補水液などを検討します |
| 下痢・嘔吐がある | 経口補水液が役立つ場合があります |
経口補水液は、脱水時に水分と電解質を補うための飲料です。熱中症が疑われる場合の応急処置として、厚生労働省も経口補水液などの補給を示しています。一方で、経口補水液を一度に大量に飲むとナトリウムの過剰摂取につながる可能性があります。腎臓病、心臓病、高血圧などで塩分や水分制限がある方は、医師の指示に従ってください。
経口補水液とスポーツドリンクの違い|ポイントは「塩分・糖分・浸透圧」
熱中症対策の飲み物を選ぶときに、よく迷うのが「経口補水液」と「スポーツドリンク」の違いです。
どちらも水分補給に使われますが、目的が少し異なります。
経口補水液は、脱水時に失われた水分と電解質を補うための飲み物です。一般的なスポーツドリンクよりもナトリウムやカリウムなどの電解質が多く、脱水時に水分と電解質を吸収しやすいように調整されています。
一方、スポーツドリンクは運動時や発汗時の水分補給に使いやすい飲み物ですが、糖分が多い製品もあります。日常的に水代わりにたくさん飲むと、糖分の摂りすぎにつながることがあります。
ここで関係するのが「浸透圧」です。浸透圧とは、簡単にいうと、飲み物に含まれる糖分や塩分などの濃さのことです。糖分が多く濃い飲み物を一度にたくさん飲むと、人によっては胃もたれや下痢につながることがあります。
日常の水分補給は、水や麦茶で十分なことが多く、大量に汗をかいたときはスポーツドリンク、脱水が疑われるときや下痢・嘔吐があるときは経口補水液を検討します。ただし、経口補水液は日常的に水代わりに飲むものではありません。高血圧、腎臓病、心臓病などで塩分・水分制限がある方は、医師に相談して使用しましょう。
| 飲み物 | 向いている場面 | 注意点 |
| 水 | 日常の水分補給 | 大量に汗をかいた時は塩分も補う |
| 麦茶 | 麦茶 夏場の日常的な水分補給 | カフェインがなく飲みやすい |
| スポーツドリンク | 運動時・発汗時 | 糖分が多い製品もあるため、日常的な多飲は注意 |
| 経口補水液 | 脱水が疑われる時、下痢・嘔吐がある時、大量発汗時 | 日常的に水代わりに飲まない。持病がある方は医師に相談 |
| コーヒー・緑茶 | 嗜好品として適量 | カフェインにより胃の不快感や眠りにくさが出ることがある |
| アルコール | 水分補給には不向き | 利尿作用があり、脱水を悪化させることがある |
胃腸に優しい飲み物・飲み方
水分補給で大切なのは、「飲む量」だけではありません。糖分、カフェイン、アルコール、温度、飲むスピードも胃腸への負担に関係します。
糖分の多い飲み物に注意
市販のジュースや甘いスポーツドリンクを大量に飲むと、糖分の摂りすぎにつながります。また、糖分の濃い飲み物は、人によっては胃もたれや下痢の原因になることがあります。
スポーツドリンクは、大量に汗をかいた時や運動時には役立つことがありますが、日常的に水代わりに多量に飲むことはおすすめできません。糖尿病や血糖値が高い方は特に注意が必要です。
カフェインと胃腸の関係
コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは、胃腸の動きや尿量に影響することがあります。飲み慣れている方が適量飲む分には問題ないことも多いですが、空腹時に濃いコーヒーを飲む、冷たいコーヒーを一気に飲む、カフェイン飲料を大量に飲むと、胃の不快感、動悸、眠りにくさ、腹痛、下痢につながることがあります。
胃腸が敏感な方は、空腹時を避ける、量を控える、カフェインレスを選ぶ、冷たすぎる飲み方を避けるなどの工夫をしましょう。
アルコールは水分補給には向きません
ビールやチューハイなどのアルコール飲料は、水分補給の代わりにはなりません。アルコールには利尿作用があり、脱水を悪化させることがあります。暑い日の飲酒や、入浴後・運動後の飲酒では、脱水や熱中症に注意が必要です。
水の温度・飲み方が胃腸に与える影響
「何を飲むか」と同様に、「どのくらいの温度で、どのように飲むか」も胃腸症状に関係します。
温度別・胃腸への影響
| 温度 | 胃腸への影響 |
| 冷たい飲み物 | 一度に大量に飲むと、胃もたれ、腹痛、下痢につながる方がいます |
| 常温・ぬるめ | 胃腸が敏感な方でも比較的取り入れやすい飲み方です |
| 熱すぎる飲み物 | 口・のど・食道の粘膜を傷つける可能性があります |
また、国際がん研究機関(IARC)は、65℃を超える非常に熱い飲み物を、食道がんリスクに関連する可能性があるものとして分類しています。熱い飲み物は少し冷ましてから飲むことをおすすめします。
特に胃腸が敏感な方、過敏性腸症候群の方、胃もたれや下痢を起こしやすい方は、冷たい飲み物を一気に飲まず、常温〜やや冷たい程度の飲み物を少量ずつ摂るとよいでしょう。
食事中・食後の水分補給について
食事中に水分を摂ること自体は問題ありません。ただし、食事中に大量の水分を一気に飲むと、胃が張ったり、胃もたれを感じたりする方がいます。
飲むタイミングは、以下を参考にしてください。
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食事中
のどを潤す程度に少量ずつ -
食後
胃もたれしやすい方は、一気飲みを避ける -
食前
少量であれば問題ありませんが、胃もたれしやすい方は量を調整する
水分は胃腸にとってなぜ重要なのか
私たちの体の約60%は水分でできています。胃腸も例外ではなく、消化・吸収・排泄のすべてにおいて水分は欠かせない役割を担っています。
口から取り込んだ水分は、主に小腸や大腸で吸収され、血液などを通じて全身を循環します。胃腸における水分の主な働きは、以下のとおりです。
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消化液の材料になる
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食べ物の消化・吸収を助ける
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便に水分を含ませ、排便をしやすくする
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脱水による便秘や体調不良を防ぐ
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体温調節を助ける
水分が不足すると、便が硬くなり便秘が悪化したり、脱水によってだるさ、吐き気、食欲低下、頭痛などが出たりすることがあります。日頃からこまめに水分を補給することは、胃腸の健康と熱中症予防の両方に大切です。
1日に必要な水分量の目安
「水は1日2リットル飲むべき」と聞いたことがあるかもしれませんが、必要な水分量は、体重、年齢、活動量、汗の量、食事量、持病、内服薬によって異なります。
一般的な目安として、成人では以下のような水分量の目安となる計算式があります。
体重(kg)×30〜35ml=1日に必要な水分量
| 体重 | 1日の目安量 |
| 50kg | 1,500〜1,750ml |
| 60kg | 1,800〜2,100ml |
| 70kg | 2,100〜2,450ml |
※この量には、飲み物だけでなく、食事に含まれる水分も含まれます。味噌汁、スープ、野菜、果物、ご飯などからも水分は摂取されています。食事をきちんと摂れている方では、飲み物からの補給は1日1,000〜1,500ml程度がひとつの目安になります。
ただし、暑い日、運動時、発熱時、下痢・嘔吐がある時、屋外作業をする時は、通常より多くの水分と塩分が必要になることがあります。一方で、心不全、腎臓病、肝硬変などで水分制限を受けている方は、医師の指示に従ってください。
飲み方のポイント
体が一度に吸収できる水分は、コップ1杯(200〜250ml)程度です。一気に飲んでも余分な分は排出されるため、一度に大量に飲むより、少量ずつこまめに飲むことが大切です。のどが渇いてからまとめて飲むのではなく、生活の中で飲むタイミングを決めておくと続けやすくなります。
おすすめのタイミング
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朝起きた直後
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食事の前後
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外出前・帰宅後
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運動や入浴の前後
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就寝前
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屋外作業中や運動中は定期的に
のどが渇いたと感じたときは、すでに脱水が始まっているサインです。厚生労働省は、室内でも屋外でも、のどの渇きを感じなくてもこまめな水分補給を勧めています。特に高齢者は、暑さや水分不足に対する感覚が低下しやすいため、意識的な補給が重要です。
日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックについて
当クリニックは、消化器疾患の診断と治療を専門としています。水分不足・脱水・熱中症による胃腸のトラブルをはじめ、さまざまな消化器の症状に対応しています。

当クリニックの特徴
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消化器専門医による診療
日本消化器病学会専門医が、丁寧に診察いたします
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内視鏡検査が可能
胃カメラや大腸カメラなど、精密な検査を行うことができます
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土曜日・日曜日も診療
平日お忙しい方も受診しやすい体制を整えています
こんな症状があればご相談ください
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便秘が続く、または便秘と下痢を繰り返す
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食後に胃がもたれる・重たい感じがする
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夏場に吐き気・食欲不振が続く
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腹痛・下痢が2週間以上続く
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便に血が混じる
お腹の症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
よくある質問
はい。睡眠中も、呼吸や皮膚から自然に水分が失われています。これを「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」と呼び、目安として、一晩で約300〜500mlの水分が失われます。汗をかいた自覚がなくても、室温や湿度、寝具、体調によって水分は失われます。朝に口の中が乾いている、尿の色が濃い、体がだるいと感じる方は、日中から水分が不足している可能性もあります。
子どもは体温調節機能が十分に発達していないため、熱中症に注意が必要です。遊びに夢中になると、のどの渇きや体調不良をうまく伝えられないこともあります。
以下のようなサインがある場合は、熱中症を疑ってください
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顔が赤い、ぐったりしている
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「気持ち悪い」「頭が痛い」と訴える
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普段より元気がない
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食欲がない
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尿が少ない
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いつもと様子が違う
涼しい場所で休ませ、少量ずつ水分・塩分を補給してください。症状が続く場合、水分が取れない場合、意識がぼんやりしている場合は、早めに医療機関を受診してください。
高齢者は、暑さやのどの渇き、水分不足に気づきにくくなることがあります。また、体内の水分量が若い頃より少なくなりやすく、持病や薬の影響で脱水が進みやすい場合もあります。「のどが渇いたら飲む」だけでは不足することがあるため、起床時、食事の前後、入浴前後、就寝前など、時間を決めて少量ずつ飲む習慣が大切です。
経口補水液は、脱水時や大量に汗をかいた時、下痢・嘔吐がある時などに、水分と電解質を補うための飲料です。日常的に水代わりに飲むものではありません。
腎臓病、心臓病、高血圧などで水分・塩分制限がある方は、自己判断で飲み続けず、医師に相談してください。
日常生活で汗が少ない場合は、水や麦茶で十分なことも多いです。一方、汗を大量にかいた時は、水分だけでなく塩分も失われます。水だけを大量に飲むと、体内の塩分バランスが崩れることがあります。屋外作業、運動、発熱、下痢・嘔吐がある時は、水分と塩分を一緒に補うことを意識しましょう。



