便潜血陽性を放置するとどうなる?

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2026年5月10日

健康診断で「便潜血陽性」の判定だったけれど、特に症状がないからと、そのままにしていませんか?便潜血陽性をきっかけに、後から大腸がんや大腸ポリープが見つかることがあります。大腸がんは早期には自覚症状が乏しいことも多く、症状がないことは安心材料になりません。便潜血陽性と判定されたら、自己判断せず精密検査を受けることが大切です。
この記事では、便潜血陽性の原因・大腸がんが見つかる確率・放置のリスクまで、消化器専門医がわかりやすく解説します。「要精密検査」の通知を受け取った方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

便潜血陽性を放置するとどうなる?

便潜血検査とは?何を調べているのか

便潜血検査は、便の中に肉眼では見えない微量の血液(潜血)が混じっていないかを調べる検査です。
日本の大腸がん検診では、40歳以上を対象に、免疫便潜血検査2日法を年1回行うことが基本とされています。

自宅で便を採って提出でき、体への負担が少ないため、対策型検診(自治体の健康診断)や人間ドックの一部として広く実施されています。
検査の方法はシンプルで、2日分の便を少量採取し、専用の容器に入れて提出するだけです。痛みはなく、自宅で完結できるため、受診のハードルが低い検査といえます。

「陽性」が意味すること

陽性とは、便の中に血液成分(ヒトヘモグロビン)が検出されたということです。
ただし、陽性=大腸がん、ではありません。

出血の原因には、次のようなものが考えられます。

  • 大腸がん・大腸ポリープ(前がん病変)

  • 痔(いぼ痔・切れ痔)

  • 大腸炎・潰瘍性大腸炎などの炎症

良性の疾患で陽性となる場合もありますが、「どこかが出血している」というサインであることは確かです。
1日分だけ陽性でも大腸カメラによる精密検査が必要で、便潜血検査のやり直しは精密検査の代わりになりません。

なお、日本で検診に使われている便潜血検査は免疫法が基本で、主に下部消化管からの出血を捉える検査です。
そのため、胃・十二指腸潰瘍などの上部消化管出血は検出されにくく、便潜血陽性ではまず大腸・肛門側の原因を考えるのが基本です。

便潜血陽性の原因|大腸がん以外にも可能性がある

日本消化器内視鏡学会の啓発資料では、便潜血陽性の方が精密検査として大腸カメラを受けた場合、約4%強で大腸がん、約50%で大腸ポリープが見つかるリスクがあるとされています。

もちろん、実際の頻度は年齢や性別、陽性の出方、受診集団によって多少異なりますが、「症状がないから様子見でよい」とは言えない数字です。
すべての方ががんというわけではありませんが、前がん病変を含めて見逃してはいけない異常が一定の頻度で見つかるため、陽性を放置しないことが大切です。

陽性になる主な原因

以下のような疾患が、便潜血陽性の原因として考えられます。

  • 大腸ポリープ:約50%。良性でも、一部はがん化する可能性がある

  • 大腸がん:約3〜4%。自覚症状がないまま進行することが多い

  • 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎・クローン病などによる出血

  • 痔(いぼ痔・切れ痔)

便潜血陽性を放置するとどうなるか

「今は症状がないから、もう少し様子を見よう」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、大腸がんは早期には自覚症状がほとんどありません。症状がないまま進行し、血便、便通異常、腹痛、貧血、体重減少などが出た時点で進行していることもあります。便潜血陽性は、その前段階で見つけるための重要なサインです。

便潜血陽性後に精密検査を受けないと、大腸がんによる死亡リスクが高くなることが報告されています。症状が出るまで精密検査としての大腸内視鏡を受けなかった群は、無症状のうちに精密検査を受けた群より大腸がん死亡リスクが約2〜4倍とする研究結果もあります。

ステージ別に見る大腸がんの治療成績

大腸がんは、早い段階で見つかるほど治療成績が良いことが知られています。国立がん研究センターの大腸がんファクトシートでは、早期発見例(StageI)の5年生存率は93%とされています。
早期のうちに見つかれば、内視鏡治療や手術で根治が期待できる場合も少なくありません。

一方で、がんが進行してリンパ節転移や遠隔転移を伴うようになると、治療はより複雑になります
手術だけでなく、抗がん剤治療や場合によっては複数の治療を組み合わせる必要があり、身体への負担も大きくなります。便潜血陽性をきっかけに、症状がない早い段階で見つけることが重要なのはこのためです。

便潜血陽性は、まだ症状がはっきり出ていない段階の大腸がんや前がん病変を見つけるための大切なサインです。「痛くない」「血便がない」「元気だから大丈夫」ではなく、陽性が出た時点で大腸カメラを受けることが、治療の選択肢と将来の見通しを大きく左右します。

放置することで起きること

便潜血陽性を放置し、症状が出てから受診した方は、無症状の段階で精密検査を受けた方と比べて、大腸がんによる死亡リスクが約5倍高いというデータがあります。

また大腸ポリープも、放置するとがん化する可能性があります。ポリープのがん化率は大きさによって大きく異なります。

  • 5mm以下:約1.8%

  • 5〜10mm:約9.1%

  • 10〜20mm:約32.9%

  • 20mm以上:約67.8%

大腸ポリープは大きくなるほど、また形や組織型によって、がんを含む可能性や将来のがん化リスクが高くなることが知られています。そのため、見つかったポリープは内視鏡で切除することで、大腸がんの予防につながります。

「痔があるから大丈夫」は危険な思い込み

「昔から痔があるから、便潜血陽性もきっとそのせいだろう」と思って、精密検査を受けずにいる方は少なくありません。
しかし、痔があることと大腸がんがないことは、まったく別問題です。痔と大腸がんが同時に存在するケースもあり、自己判断で精密検査を先送りにすることは大変危険です。

  • 出血の原因は、見た目では判断できない
    「鮮血が出ているから痔のせい」と思いがちですが、実際にはそう言い切れません。直腸がんやS状結腸の病変でも鮮血様に見えることがありますし、逆に大腸のより奥からの出血でも便の状態だけで部位を正確に判断することは困難です。出血の色や出方だけで原因を決めつけないことが大切です。

  • 「痔があるから検査しなくていい」は誤り

    便潜血が陽性になった場合は、痔の有無にかかわらず大腸カメラが必要です。「痔だから大丈夫」という思い込みが、早期発見のチャンスを奪うことになりかねません。便潜血陽性の通知を受けたら、まず消化器科を受診することをお勧めします。

日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックについて

当クリニックは、消化器疾患の診断と治療を専門としています。便潜血陽性をはじめとする消化器のトラブルに対応しています。

当クリニックの特徴

  • 消化器専門医による診療

    日本消化器病学会専門医が、丁寧に診察いたします

  • 内視鏡検査が可能

    胃カメラや大腸カメラなど、精密な検査を行うことができます

  • 土曜日・日曜日も診療

    平日お忙しい方も受診しやすい体制を整えています

こんな症状があればご相談ください

  • 健康診断で便潜血陽性と指摘された

  • 血便・血が便についていた

  • 便秘や下痢が続いている

  • お腹の張りや腹痛が気になる

  • 体重減少・食欲低下がある

お腹の症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

詳しくは公式サイトをご覧ください。

よくある質問

便潜血検査は何歳から受けるべきですか?

大腸がんのリスクは40歳代から増加し始め、50歳以降に急増します。国のガイドラインでは、40歳以上を対象に年1回の便潜血検査が推奨されています。ただし、 症状がある方は年齢に関わらず医療機関で診察を受けてください。

生理中に採便しても大丈夫ですか?

生理中の採便はお勧めできません。経血が便に混じることで、便潜血検査が陽性と判定される可能性があります。生理が終わってから採便するようにしてください。やむを得ず生理中に採便した場合は、検査機関や医療機関にその旨をお伝えください。

採便のタイミングや注意点はありますか?

採便は、便の表面をまんべんなくこすって採取することが大切です。便の一部分だけから採取すると、血液成分が検出されにくくなることがあります。採取後は偽陰性を避けるため、速やかに検体を提出し、指定された期限内に医療機関へ届けてください。

便潜血が1回だけ陽性でも、大腸カメラは必要ですか?

はい。1日分だけ陽性でも精密検査が必要です。大腸がんは毎日出血するわけではないため、1回だけの陽性でも見逃してはいけません。

便潜血陽性のあと、もう一度便潜血検査を受ければよいですか?

いいえ。再検は精密検査の代わりになりません。陽性が出たら、原則として大腸内視鏡検査を受けてください。

便潜血陽性のときは何科を受診すればよいですか?

まずは消化器内科の受診がおすすめです。精密検査としては全大腸内視鏡検査が第一選択です。血便、腹痛、便秘や下痢の持続、体重減少などがある場合も、早めに消化器内科へ相談してください。

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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