2026年4月03日
「ピロリ菌がいると胃がんになりやすい」と聞いたことがある方は多いかもしれません。実際に、日本人の胃がんの約98〜99%にピロリ菌が関係しているとされています。ただし、感染しているすべての方が胃がんになるわけではありません。大切なのは、正しいリスクを理解したうえで、適切な検査と治療を受けることです。このコラムでは、ピロリ菌と胃がんの関係・発症リスク・除菌後の注意点まで、専門医がわかりやすく解説します。

ピロリ菌とは?感染するとどうなるか
ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に住みつく細菌です。
胃の中は強い酸性のため、通常の細菌は生きられません。しかしピロリ菌は、ウレアーゼという酵素で胃酸を中和し、胃粘膜に定着することができます。
日本では中高年ほど感染率が高く、若い世代では低下傾向にあります。
学会の一般向け資料では、現在も少なくとも3,000万人以上が感染しているとされています。多くの方は自覚症状がないまま過ごしています。
感染は主に小児期、とくに乳幼児期に成立すると考えられており、大人になってからの新規持続感染は一般的ではありません。家族内感染が背景にあることもあります。
ピロリ菌と胃がんの関係|なぜ胃がんを引き起こすのか
ピロリ菌は1994年にIARCからヒトに対する発がん因子(Group1)と評価されています。
感染が長年続くと、胃粘膜の細胞がくり返しダメージを受け、がん化しやすい状態へと変わっていきます。日本ヘリコバクター学会の2024年版ガイドラインでも、ピロリ菌感染が胃がん予防の中心的標的であることが示されています。
炎症から胃がんへの流れ
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慢性的な炎症が胃粘膜を傷つけ続ける
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萎縮性胃炎へと進行する
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腸上皮化生(胃の粘膜が腸の粘膜に似た状態に変化すること)が起きる
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がん化するリスクが高まる
この変化は自覚症状がないまま進行します。気づかないうちにリスクが蓄積されているケースも少なくありません。
ピロリ菌感染者の胃がん発症リスク・確率はどのくらい?
ピロリ菌に感染しているすべての方が胃がんになるわけではありません。しかし、感染していない方と比べると、発症リスクが明らかに高くなることがわかっています。
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ピロリ菌に感染していない→リスクは低い(基準)
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ピロリ菌に感染している→非感染者よりリスク上昇
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萎縮性胃炎や腸上皮化生がある→さらにリスク上昇
国内の前向き研究では、平均約8年の経過観察で、ピロリ菌感染者1,246人中36人(約2.9%)に胃がんが発症し、非感染者280人では胃がん発症を認めませんでした。ただし、この数字は研究条件に基づくものであり、個人の将来リスクをそのまま示すものではありません。萎縮の程度、年齢、家族歴、喫煙、塩分摂取などでリスクは変わります。
感染イコール胃がんではありませんが、感染がわかった時点で除菌治療を検討し、定期的な胃カメラで経過を確認することが大切です。
胃がんになりやすい人の特徴
胃がんのリスクはピロリ菌だけではありません。生活習慣や遺伝的な要因が重なることで、リスクがさらに高まることがあります。
胃がんリスクが高まる主な要因
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ピロリ菌への感染(最大の要因)
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萎縮性胃炎・腸上皮化生がすでにある
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胃がんの家族歴
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塩分の多い食事(塩辛・漬物などの過剰摂取)
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喫煙
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過度な飲酒
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野菜・果物の摂取不足
これらの要因が重なるほど、胃がん発症リスクは高くなります。ピロリ菌の除菌後も、塩分を控えた食事や禁煙など、生活習慣の改善を続けることが大切です。「除菌したから安心」とならないよう、日頃からの意識が重要です。
除菌後に定期的な胃カメラが必要な理由
除菌が成功すると、胃がんリスクを除菌前の状態の約3分の1程度に抑えることが期待できます。
ただし、「除菌=胃がんのリスクがゼロ」ではありません。

なぜ除菌後もリスクが残るのか
除菌前に進んでいた粘膜の変化は、除菌後も完全には元に戻らないことがあります。
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萎縮性胃炎→除菌後も残る
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腸上皮化生→除菌後も残る
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慢性的な炎症→改善が期待できる
日本ヘリコバクター学会ガイドラインでは、除菌後も胃がんリスクは長期に持続し、内視鏡を中心とした定期的なフォローが重要とされています。除菌後10年以上たってから胃がんが見つかることもあります。そのため、症状がなくても、背景胃粘膜の萎縮や腸上皮化生、家族歴などのリスクに応じて、定期的な胃カメラを継続することが大切です。
日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックについて

当クリニックは、消化器疾患の診断と治療を専門としています。ピロリ菌感染症をはじめとする消化器のトラブルに対応しています。
当クリニックの特徴
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消化器専門医による診療
日本消化器病学会専門医が、丁寧に診察いたします。 -
内視鏡検査が可能
胃カメラや大腸カメラなど、精密な検査を行うことができます。 -
土曜日・日曜日も診療
平日お忙しい方も受診しやすい体制を整えています。
こんな症状があればご相談ください
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胃のもたれ・不快感が続いている
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健診でピロリ菌陽性と指摘された
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胃がんの家族歴がある
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食欲がない、体重が減ってきた
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黒い便や血の混じった便が出た
お腹の症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
詳しくは公式サイトをご覧ください。よくある質問
検査方法はいくつかあります。血液・尿・便による検査、尿素呼気試験、胃カメラで粘膜を採取して行う迅速ウレアーゼ試験、鏡検法などがあります。
保険診療で除菌治療につなげる場合は、原則として内視鏡で胃炎などの所見を確認したうえで感染診断を行う流れが基本です。
一般的には、胃酸を抑える薬1種類と抗菌薬2種類を組み合わせた三剤併用療法を7日間行います。 一次除菌が不成功だった場合は、二次除菌を検討します。
いいえ。除菌によって胃がんリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。除菌後も背景粘膜の萎縮や腸上皮化生が残る場合があり、長期にわたって胃がんが発見されうるため、定期的な胃カメラが重要です。
「全員に必須」とは言い切れませんが、家族に胃がんの方がいる、健診で異常を指摘された、過去に胃炎・胃潰瘍があるなど、リスクがある方は一度相談をおすすめします。
ピロリ菌感染は自覚症状がないまま続くことが多く、検査で初めて見つかることも少なくありません。