健康診断で腫瘍マーカーは受けるべき?

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2026年10月21日

健康診断や人間ドックのオプションで「腫瘍マーカーを追加しますか?」とすすめられ、受けるべきか迷った経験はありませんか。がんが心配だからこそ、少しでも早く見つけたいと考える方は多いかもしれません。
ただし、健康診断や人間ドックで腫瘍マーカーを追加しても、がんの有無を採血だけで判断することはできません。また、腫瘍マーカーが高かったからといって、すぐにがんと決まるわけでもありません。
この記事では、腫瘍マーカーを受けるべきか考えるために、検査の意味、主な項目、女性や男性の注意点、費用を整理します。これから検査を選ぶ方にも、結果を見て不安になった方にも、次に何を確認すればよいかをお伝えします。

健康診断で腫瘍マーカーは受けるべき?

健康診断で腫瘍マーカーは受けるべき?

症状のない方が、がんの早期発見だけを目的に腫瘍マーカーを一律に追加する必要があるとはいえません。
まずは、年齢に合った国が推奨するがん検診を優先しましょう。

  • 腫瘍マーカーだけで、がんの有無は判断できません。

  • 主な役割は、診断の補助や、がん治療中・治療後の経過確認です。

ただし、前立腺がんの「PSA検査」のように、例外的に有効性が認められているものもあります。

大切なのは、腫瘍マーカーに頼りすぎないことです。まずは科学的根拠のあるがん検診をきちんと受け、腫瘍マーカーはあくまで補助的な検査として考えていただくとよいでしょう。

腫瘍マーカーとは?血液などで調べる「病気の手がかり」

腫瘍マーカーとは、がん細胞や、がんなどの影響を受けた体の細胞が作る物質のことです。主に血液検査で測定しますが、種類によっては尿などで調べます。

例えば、治療前に高かった数値が治療後に下がれば、治療の効果を考える手がかりになります。ただし、数値だけで効果や再発を判断するのではなく、画像検査や診察の結果も合わせて確認します。採血で調べられる手軽さと、診断の確かさは別に考えることが大切です。

「意味ない」と言われるのは、早期発見の検査として限界があるため

腫瘍マーカーは、がんがあっても高くならないことがあります。反対に、がん以外の病気などでも高くなることがあります。そのため、症状のない人から病気の疑いを見つける「スクリーニング」に、十分な精度を持つとは言えません。

この限界を知らずに受けると、正常な結果で受診を遅らせたり、異常値のために追加検査や不安が生じたりする可能性があります。「検査として意味がない」のではなく、「目的によって役立ち方が違う」と理解するとよいでしょう。

腫瘍マーカーの種類と数値の見方

腫瘍マーカーには多くの種類がありますが、「この項目が高い=この臓器のがん」という対応表ではありません。

主な検査項目と、診療で関連するがんを紹介します。

腫瘍マーカー主に関連するがん
CEA(癌胎児性抗原)大腸がん、胃がん、肺がんなど
CA19-9膵臓がん、胆道がん、胃がん、大腸がんなど
AFP肝臓がんのうち、主に肝細胞がん
PIVKA-Ⅱ肝細胞がん
PSA前立腺がん
CA125卵巣がんなど
CA15-3乳がん
SCC食道がん、子宮頸がんなど
CYFRA(シフラ)肺がんなど

※国立がん研究センターの情報を基に整理しています。表は検査の追加をおすすめするものではなく、診断の補助や経過観察で使われる項目の紹介です。

ここで知っていただきたい特徴が一つあります。

それは1つのマーカーが、複数のがんに反応することがあるという点です。たとえばCEAは、大腸・胃・肺など幅広いがんで値が上がることがあります。そのため「どのマーカーが高いか」だけでは、がんのある場所を特定できないことも少なくありません。

「意味ない」「あてにならない」と言われる3つの理由

腫瘍マーカーが健診において「意味ない」「あてにならない」と言われてしまう理由は、主に「偽陽性」「偽陰性」「過剰な検査による不利益」の3点にあります。

理由状態発生しうる問題
①偽陽性がんがないのに数値が高くなる不安の増大、不要な精密検査による体への負担
②偽陰性がんがあるのに数値が上がらない「異常なし」と誤認し、本当のがんを見逃す
③過剰検査診断がつかないまま検査が続く時間的・経済的な不利益が生じる

女性におすすめの腫瘍マーカーはある?CA125と生理・妊娠の注意点

一般的に女性用の腫瘍マーカーとしてオプションとして提示されることが多いものとして、CA125が挙げられます。CA125は主に卵巣がんの診療補助に使われますが、一般女性を対象とした検診で、CA125などを用いることによる卵巣がんの死亡率減少は示されていません。

また、CA125という卵巣がんのマーカーは、生理(月経)中や妊娠中、あるいは子宮内膜症などの良性疾患でも数値が高くなる性質(偽陽性)があります。検査を受ける際は、生理の時期や妊娠の可能性、婦人科の持病の有無も加味した上で、追加の検査の要否や再検査の時期などを医師に確認しましょう。

女性のがんが心配なときは、まず年齢に合った乳がん・子宮頸がん検診を確認することが大切です。ご家族に乳がんや卵巣がんの方がいる場合は、マーカーの項目を増やす前に、婦人科などで相談しましょう。遺伝的なリスクを含めた個別の検討が必要になることがあります。

例外的に受ける効果が高いおすすめの腫瘍マーカー(男性の場合)

多くが早期発見に向かないとされる中、例外的にスクリーニング検査として有効性が認められている代表的な項目が、前立腺がんを調べる「PSA検査」です。

PSA検査がおすすめされる理由

  • 特異性が高い
    前立腺という特定の臓器に強く反応する。

  • 早期発見に寄与
    ごく初期の前立腺がんでも数値が上昇しやすい。

  • 科学的根拠
    PSA検査の普及により、前立腺がんによる死亡率を下げる効果が国内外のガイドライン(日本泌尿器科学会など)で示されている。

一方、生涯にわたり症状を起こさないようながんまで見つける「過剰診断」や、それに伴う検査・治療の負担も問題になります。検査を受ける前に、こうした不利益も知っておくことが大切です。

相談を始める年齢は、50歳前後が一つの目安です。家族歴や特定の遺伝的リスクがある方は、より早い40歳代からの検査追加も選択肢となります。年齢だけでなく、健康状態や本人の希望も含めて泌尿器科で相談しましょう。

「高い」「陽性」と言われたら、自己判断せず結果を確認する

例えば、CEAは喫煙などの影響で高くなることがあります。CA19-9も、胆石による胆管の詰まりや胆管炎、膵炎など、がん以外の病気で上昇する場合があります。

一方で、「少し高いだけだから大丈夫」と決めつけることもできません。健診で再検査や精密検査をすすめられた場合は、結果票を持って医療機関を受診しましょう。医師が症状、過去の数値、持病、服用薬などを確認し、必要に応じて再採血や画像検査などを検討します。

PSAの異常は泌尿器科、CA125の異常は婦人科など、項目によって相談先が異なります。受診先がわからない場合は、まず検査を受けた施設に確認してください。

AFPなどが役立つのは、肝臓の病気に合わせて検査する場面

B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変、ウイルス感染を伴わない肝硬変がある方には、定期的な腹部超音波検査や腫瘍マーカー検査がすすめられています。AFPやPIVKA-Ⅱなどを組み合わせ、肝細胞がんの発生を確認するためです。

これは、健康な方が人間ドックでAFPだけを追加する場合とは異なります。肝臓の病気がある方は、健診のオプションで代用せず、主治医が決めた検査内容と間隔に沿って受診してください。

がんの早期発見には、何の検査を優先する?

腫瘍マーカーの追加を考える前に、年齢に合ったがん検診を受けているか確認しましょう。

厚生労働省の指針に基づく主な検査は、次のとおりです。

がんの種類主な検査方法対象・間隔の基本
胃がん胃内視鏡検査、または胃部エックス線検査(バリウム)50歳以上・2年に1回
大腸がん便潜血検査40歳以上・年1回
肺がん胸部エックス線検査40歳以上・年1回
乳がんマンモグラフィ40歳以上の女性・2年に1回
子宮頸がん細胞診20歳以上の女性・2年に1回
子宮頸がんHPV検査単独法導入自治体で30歳以上の女性が対象。陰性の場合は原則5年に1回

※胃部エックス線検査には、当分の間、40歳以上・年1回でも実施できる扱いがあります。HPV検査単独法では、特に30〜60歳が推奨対象で、陽性時には結果に応じた追加検査や追跡検査が必要です。実施方法は自治体の案内をご確認ください。

健康診断の採血と、がん検診は同じではない

血液検査を受けたことだけで、必要ながん検診まで済んでいるとは限りません。国が推奨する検診は、対象となるがんごとに、検査方法や受ける年齢、間隔が定められています。

人間ドックを選ぶときも、腫瘍マーカーの数だけで比較するのではなく、自分に必要な検査が含まれているかを確認しましょう。検診の有効性は、単にがんが見つかることだけでなく、死亡を減らす利益と、見逃しや過剰診断などの不利益を含めて評価されます。

便潜血が陽性なら、腫瘍マーカーが正常でも精密検査を

大腸がん検診の便潜血検査で陽性になった場合、基本的には大腸カメラによる精密検査が必要です。CEAなどが正常でも、その代わりにはなりません。また、便潜血検査をやり直して陰性になっても、精密検査を受けなくてよいとは判断できません。大腸カメラでは粘膜を直接観察し、必要に応じて組織を採取して詳しく調べます。

血便、腹痛、便通の変化などの症状がある方は、健診の時期や腫瘍マーカーの結果にかかわらず、医療機関に相談してください。

医師監修コメント:数値よりも、次に必要な行動を確認しましょう

「腫瘍マーカーが正常なら、便潜血が陽性でも大腸カメラは不要ですか」という相談を例に考えてみましょう。答えは、腫瘍マーカーの結果だけでは精密検査を省略できない、ということです。

数値を見たときには、「高いか低いか」だけでなく、「何のために調べた検査なのか」「この結果を受けて、次に何を確認するのか」を整理することが大切です。不安な結果が届いたときも、一つの数値だけで結論を出さず、結果票全体を医師と確認しましょう。

人間ドックの費用・追加前によくある質問

健康診断や人間ドックのオプションとして受ける検査は原則として自費です。費用だけでなく、検査の目的や結果が出た後の対応も確認して選びましょう。

  • 料金
    査項目やセット内容、医療機関によって異なります。

  • 頻度
    健康な方に、すべての項目を毎年測る必要があるとはいえません。

  • 準備
    同時に受ける検査を含め、施設の案内を確認してください。

費用はいくらですか?保険は使えますか?

自費検査の料金は医療機関ごとに異なります。CEA、CA19-9、CA125、PSAなどの単項目は1項目あたり各2,000円前後が平均的な相場です。

一方、病気の診断や治療、経過観察のために医師が必要と判断し、保険診療の条件に当てはまる場合には、保険が適用されることがあります。「心配だから調べたい」という希望だけでは、保険は適用されません。

当院にも、腫瘍マーカーを含む人間ドックのコースがあります。含まれる項目と費用はコースによって異なるため、予約前に最新の案内をご確認ください。

毎年受ければ、数値の変化で早期発見できますか?

毎年測定していても、それだけで早期発見できるとは限りません。がん治療中や治療後に数値を追うことと、健康な方が毎年測ってがんを探すことは、目的が異なります。

すでに継続して検査を受けている方は、過去の結果を診察時に持参すると判断材料になります。ただし、数値の変化を見ることを理由に、必要ながん検診や精密検査を先延ばしにしないでください。

採血の痛みや、食事制限などの準備はありますか?

血液で調べる腫瘍マーカーでは、通常の採血と同様に針を刺す痛みがあり、内出血や気分不良が起こる場合もあります。体への負担は比較的小さい検査ですが、負担がまったくないわけではありません。

腫瘍マーカー単独では特別な準備を必要としませんが、同時に受ける検査(胃カメラ・大腸カメラなど)によっては食事制限が必要です。

健康診断の結果や検査選びは当院へご相談ください

日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックでは、消化器の症状や健診で指摘された異常について診療し、胃カメラ・大腸カメラなどの必要性をご相談いただけます。

  • 健診結果の意味や、次に受ける検査がわからない。

  • 便潜血が陽性だった、血便や腹痛などの症状がある。

  • 人間ドックでどの検査を選ぶべきか迷っている。

受診時には、今回と過去の検査結果をご持参ください

結果票があれば、どの項目がどの程度高いのか、過去から変化しているのかを確認できます。腫瘍マーカーだけでなく、ほかの血液検査や画像検査の結果も一緒にお持ちください。数値とほかの検査所見を合わせて評価することが重要です。

当院では、胃カメラ・大腸カメラや人間ドックに対応しています。土曜日にも検査を行い、日曜日は月1回、予約検査のみ実施しています。実施日や予約方法は、公式サイトをご覧ください。

「腫瘍マーカーを増やすこと」よりも、「自分に必要な検査を選び、必要な精密検査まで受けること」を大切にしましょう。

【参考・出典元(一次資料・公式情報)】

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「腫瘍マーカー検査とは」。検査の目的、主な項目、結果の解釈について参照。国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト

  2. 米国国立がん研究所(NCI)“Tumor Markers”。診療での用途とスクリーニングの限界について参照。アメリカ国立がん研究所

  3. 国立がん研究センター中央病院「臨床検査基準値一覧」2025年8月26日改訂版。基準値の例について参照。国立がん研究センター

  4. 米国国立医学図書館 MedlinePlus「CEA blood test」「CA 19-9 Blood Test」「CA-125 Blood Test」。良性疾患、生理、妊娠などの影響について参照。メドラインプラス

  5. 米国国立がん研究所(NCI)“Ovarian, Fallopian Tube, & Primary Peritoneal Cancers Screening(PDQ)”。卵巣がん検診の有効性について参照。アメリカ国立がん研究所

  6. Roobol MJ, et al. “European Study of Prostate Cancer Screening — 23-Year Follow-up.” N Engl J Med. 2025;393:1669–1680. DOI: 10.1056/NEJMoa2503223.New England Journal of Medicine

  7. 欧州泌尿器科学会(EAU)“Guidelines on Prostate Cancer: Diagnostic Evaluation”、米国国立がん研究所「PSA Test」。PSAの対象と利益・不利益について参照。Uroweb

  8. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)検査」。日本肝臓学会「肝癌診療ガイドライン2025年版」等に基づく2026年8月21日更新情報。国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト

  9. 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」2026年10月7日一部改正。検診の対象・方法・間隔について参照。厚生労働省

  10. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」「子宮頸がん検診について」。精密検査とHPV検査単独法について参照。国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト

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記事監修

院長 石岡 充彬

院長 石岡 充彬

日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。都内最大手内視鏡クリニックの院長職を経て、2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

 

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