2026年10月13日
「お尻から出血したけれど、いぼ痔が自然に治るだろう」と様子を見ていませんか?
日常診療において、患者さんから「いぼ痔は自然に治るにはどうすればいいか」というご相談をよく受けます。
結論から申し上げますと、いったん大きく膨らんでしまったいぼ痔が自然に治ることは、基本的には期待できません。インターネット上には「いぼ痔を自然に治す」といった情報も散見されますが、専門的な見地からは注意が必要です。
この記事では、いぼ痔が自然に治るのかどうか気になっている方に向けて、原因や進行の仕組み、放置のリスク、受診の目安まで、消化器専門医が詳しく解説します。

いぼ痔は自然に治るのか?
軽い初期の段階であれば、生活習慣を整えることで症状が和らぐことはあります。
しかし、すでに形成された痔核(いぼ痔)そのものが、完全に自然消滅して元どおりになることは基本的にはありません。
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症状が落ち着きやすいケース
・出血や痛みが現れたばかりの初期段階・排便時のいきみや便秘がすぐに解消された場合
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自然な回復が難しいケース
・すでに大きく腫れ上がり、肛門の外に飛び出している場合
・出血や痛みが慢性的に長期間続いている場合
いぼ痔が自然治癒するケースと完治が難しいケースの違い
いぼ痔は、肛門周辺の静脈がうっ血(血液がたまって流れが悪くなること)してコブのようになったものです。初期の段階であれば、血流を改善することで腫れが小さくなり、見かけ上は自然治癒したように感じることがあります
しかし、伸びてしまった血管や組織は、どれくらいの期間で元の状態に戻るかについては個人差が大きく、基本的には完全に消滅してで治るわけではありません。一時的に治癒したように見えても再発しやすいため、根本的な生活環境の見直しが不可欠になると言えます。
いぼ痔(痔核)の種類:内痔核と外痔核の特徴
いぼ痔は、発生する場所によって「内痔核(ないじかく)」と「外痔核(がいじかく)」の2種類に分けられます。
肛門の少し奥にある歯状線を境に、どちら側にできるかで痛みの感じやすさが大きく異なります。
| 項目 | 内痔核(ないじかく) | 外痔核(がいじかく) |
| できる場所 | 歯状線より内側(直腸側) | 歯状線より外側(皮膚側) |
| 知覚神経 | ない(痛みを感じにくい) | ある(痛みを感じやすい) |
| 主なサイン | 排便時の出血、進行すると脱出 | 急激な腫れ、激しい痛み、しこり |
種類別の主な症状と正しい対処法
内側にできる内痔核は痛みを感じにくいため、出血して初めて気づくことが多くあります。一方、外痔核は皮膚に近く神経が豊富な場所にできるため、突然の強い痛みや腫れを伴うのが大きな特徴です。
また、これらが混在する内外痔核という状態になることもあります。状態を自分で見極めるのは難しいため、誤った自己対処で悪化させないよう、正しい知識を持ち、適切な肛門のケアを行うことが求められます。
いぼ痔ができる主な原因と悪化のメカニズム
いぼ痔の最大の引き金は、肛門への過度な負担です。強いいきみや長時間の同じ姿勢が続くことで、肛門周辺の血管に高い圧力がかかり、うっ血を引き起こします。
肛門に負担をかけやすい生活習慣
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便秘や下痢を繰り返している
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トイレでスマートフォンを見ながら長時間いきむ
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長時間のデスクワークや立ち仕事
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重いものを持ち上げる作業が多い
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アルコールや香辛料の過剰摂取
排便習慣の乱れが及ぼす影響と初期の改善方法
最も身近な原因は、排便時の強いいきみです。硬い便を無理に出そうとする習慣が続くと、血管に過剰な圧力がかかります。
また、下痢も肛門を刺激するため良くありません。初期の段階であれば、水分や食物繊維を多めに取り、排便の性状をコントロールすることで改善する可能性があります。おしりを清潔に保つ予防策とともに、ライフスタイル全体を見直す方法が非常に効果的です。
症状の進行度と必要な治療・手術の可能性
内痔核は、日本大腸肛門病学会などのガイドラインにおいても「ゴリガー分類」という4つの段階で評価されます。進行度によって、薬で様子を見るか、手術が必要になるかが変わります。

| 進行度(ゴリガー分類) | 飛び出し(脱出)の状態 | 主な治療方針 |
| Ⅰ度 | 飛び出しはないが出血がある | 生活指導、薬物療法 |
| Ⅱ度 | 排便時に飛び出すが、自然に戻る | 生活指導、薬物療法、(一部手術) |
| Ⅲ度 | 飛び出し、指で押し込まないと戻らない | 手術療法などの外科的処置 |
| Ⅳ度 | 常に飛び出しており、押しても戻らない | 手術療法などの外科的処置 |
外用薬などの保存的療法から手術療法までの選択肢
Ⅰ度やⅡ度の比較的軽い段階であれば、外用の軟膏や坐剤、内服薬を使用する保存的療法によって症状を抑えることが可能です。しかし、Ⅲ度以上になり日常生活に支障をきたす場合は、専門的な治療や手術が検討されます。
なお、当院の肛門内科では、的確な診断のもと、症状に合わせた軟膏の処方など「保存的治療」を中心に行っております。注射療法や日帰り手術などの外科的処置(法)は実施しておりませんが、手術が必要と判断した場合は、連携する適切な専門医療機関をスムーズにご紹介いたします。
いぼ痔を放置するリスクと他の病気が隠れている可能性
いぼ痔そのものは良性の疾患ですが、放置すると「嵌頓(かんとん)痔核」という激しい痛みを伴う救急状態になることがあります。また、出血を「ただの痔だ」と思い込むことで、重大な大腸疾患を見逃すリスクがあります。
放置によって起こりやすいトラブル
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慢性的な出血による貧血(立ちくらみ、息切れ)
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痔核が戻らなくなり急激に腫れ上がる「嵌頓(かんとん)」
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大腸ポリープや大腸がんなど、他の疾患による出血の看過
切れ痔や大腸疾患との鑑別と内視鏡検査の重要性
おしりからの出血は、いぼ痔だけでなく、硬い便で出口が切れる「切れ痔(裂肛)」のケースもあります。さらに警戒すべきは、出血の奥に大腸がんや炎症性腸疾患が隠れているケースです。
「いつも通りだから」と決めつけず、消化器科や胃腸科のクリニックで専門の医師による診察を受けることが推奨されます。必要に応じて大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を行い、腸の内腔を直接鏡で観察することで、病気の有無を正確に鑑別できます。
受診の目安とクリニックでの予防指導
「恥ずかしい」「痛そう」という理由で受診をためらう方は多いですが、おしりのトラブルは早期に専門家に診てもらうことで、体への負担が少ない治療で済む可能性が高まります。
早めの受診をおすすめするサイン
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排便のたびに出血する、または便器が赤く染まるほどの量がある
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痛みが強く、座ったり歩いたりするのもつらい
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飛び出したしこりが、指で押し込んでも戻らない
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市販薬を1〜2週間使っても症状が変わらない、または悪化している
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便が細い、色が黒っぽいなどの変化がある
専門の医師に教える(相談する)ことで得られる安心
自己流のケアで限界を感じたら、ためらわずに消化器や肛門内科を標榜する専門院へ現在の症状を教える(相談する)ことが大切です。当院では、プライバシーに配慮した環境で、診察や軟膏処方などの保存的治療を丁寧に行っています。外科的処置は行っていませんが、手術が必要なケースを見極め、適切なタイミングで高次医療機関へつなぐ「ゲートキーパー」としての役割も担っています。早期に的確な診断を受けることが、不安の解消と最短での回復につながります。
よくある質問
うつりません。いぼ痔は、肛門の血管がうっ血してできるもので、細菌やウイルスによる感染症ではありません。ご家族と入浴やトイレを共有しても、うつる心配はありません。
外側にできる外痔核は、鏡を使えば腫れやふくらみを確認できることがあります。一方、内側にできる内痔核は、肛門の奥にあるため自分では見えません。見た目だけでは種類や進行度まで判断できないため、気になるときは診察を受けると確実です。
使っていただいて問題ありません。排便後に肛門を清潔に保つことは、お尻の健康にも役立ちます。ただし、強い水圧で長く洗いすぎると、かえって刺激になることがあります。やさしく、短めに使うのがおすすめです。
肛門まわりを温めて血行をよくすると、うっ血がやわらいで楽に感じることがあります。湯船につかるのもよい方法です。ただし、急に強く腫れて痛むときは温めが合わないこともあるため、無理はしないでください。
受けられます。いぼ痔があること自体が、検査の妨げになることはほとんどありません。出血の原因を詳しく調べたいときにも役立ちます。気になる点があれば、検査前にお伝えください。
基本的に保険診療で受けられます。診察やお薬、検査も保険の対象です。費用が気になる場合は、受診時にお尋ねいただければご案内します。
【参考・出典元】
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日本大腸肛門病学会『肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン』
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日本消化器病学会 関連疾患向け一般啓発資料
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厚生労働省 e-ヘルスネット「便秘と食習慣」
【免責事項】
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください



